生成AIを仕事に活用するかどうかの判断
生成AIツールを仕事で活用するかどうかは、慎重に検討する必要があります。以下の3つの質問に「はい」と答えられる場合、生成AIの導入を検討しても良いでしょう。
生成AIが得意とするタスクか?
生成AIは、文章作成や画像生成、パターン認識といったタスクを得意としています。例えばインサイドセールスであれば下記2点がパターン化できます。
1.リードナーチャリング、(意向の醸成や関係性の強化、タイミングキャッチ)
継続的な接点創出、コンテンツやイベントを介してのナーチャリングに最適なメールですが、多忙なインサイドセールスにおいて日々メールを作成し続けるには多くの時間が必要です。しかし、どうしても単調なものになりがちですが、生成AIを活用することで、以下のようなメールを自動生成することが可能です。
例)
・顧客の反応やイベントトリガーに基づいた、最適なフォローアップメールを自動生成する
・顧客の質問にAIが自動で回答し、スムーズなコミュニケーションを促進する
2. リードジェネレーション(見込み客発掘)
パーソナライズされたアウトリーチメールの作成
・顧客の属性や興味関心に基づいた、パーソナライズされたメールを作成可能
・テンプレートを複数用意し、AIが自動的に最適なものを選択し、文言を生成
ターゲットリストの作成:
・既存顧客データや市場トレンドを分析し、新たなターゲットリストを作成
・AIが潜在顧客の属性や行動パターンを予測し、リストアップ
タスクは、最良の結果を得るために反復できるか?
生成AIの出力は、プロンプト(指示文)によって大きく変わります。さまざまなプロンプトを試し、最適な結果を得るための時間とリソースを確保することに役立ちます。
インサイドセールスの業務は多岐にわたり、担当者は日々多くのタスクを抱えているかと思いますが、業務の特性上、”一定の法則性をもって反復すること”が可能です。ですから、AIを活用することで、これらの業務を最適化≒効率化することが可能です。
具体的には、インサイドセールスの業務で発生する様々なパターンをAIに学習させ、最適な回答や行動を自動化することで、担当者の負担を軽減し、行動の効果を最大化することができます。
適切な管理体制を構築できるか?
生成AIが出力した内容をそのまま使うのではなく、適切に管理し、責任を持つことができる体制が整っているかが大事です。例えば、CxOレターの運用開始時は、複数人で内容を確認し、品質を高めることをお勧めします。特に、社内の専門家やマネジメント層によるレビューは、より客観的な視点から改善点を見つける上で有効です。ご自身の経験とスキルが蓄積されるにつれて、最終的にはご自身で内容を精査し、将来的にはセルフチェックにより運用可能になります。
Geminiを活用し商談獲得事例
ここまでご紹介した内容を元に、実際に営業現場でどのように生成AIを活用し商談を獲得したのか、そのエピソードをご紹介します。
1. 前提
企業:大手酒造メーカー
経緯:まったくの白地。リードもなく完全なアウトバウンド
手法:アウトバウンドコール
結果:本部事業部長との商談獲得
2.こんな時におすすめ
・業界知識がない
・架電先企業の扱っている商品分からない
・規模が大きな企業でアプローチに専門的な知識が必要
3.実施するうえで生じる可能性がある課題
人間の関与と信頼に関する課題
- 人間の検証: Geminiが生成した情報を鵜呑みにせず、必ず人間が検証する必要があります。不安があれば、必ずマネージャーなどにも確認やエスカレーションをしましょう。
- 倫理的な問題: AIによる差別や偏見といった倫理的な問題も考慮する必要があります。
4.結果
この企業を担当することになりましたが、私自身は下戸でお酒がまったく飲めません。ですから、ビールでいえばプレミアムモルツくらいしか知らない、という状況でした。しかし、AIを活用したアプローチで、日本で3本の指に入る酒造会社様と商談を獲得することができました。
5.具体的な内容
事前にGeminiに下記の質問をし、知識を入れたうえでアプローチを開始しました。
プロンプト例:〇〇株式会社はどんな会社で何を扱っているの?
架電時の具体的なトーク:
・貴社は多種多様で高品質な酒類を提供しながらも、とくに地域連携において風土を生かした酒造りなど、地域社会との連携を重視されている点がとくに印象的で、私自身はお酒に強くないのですが、企業としてとても尊敬しております。
・とくに〇〇(生成AIで出力された)という商品は、貴社の主力製品だと思いますが、他社との差別化においてどのような点を重要視されているのでしょうか?
・〇〇(生成AIで出力された)という商品を作成する際、社内でも検討会や試飲会を開かれることがあると思うのですが、パートや派遣さんを呼んだことはありますでしょうか?
この質問が効果的な理由は、以下の点です。
- 具体的な商品名
- 生成AIが提案した具体的な商品名を出すことで、事前に情報収集をしているという印象を与えます。
- 顧客の状況への関心
- 顧客の具体的な商品名に関心を示しており、単なる営業トークではなく、真摯に顧客の課題解決を考えようとしている姿勢が伝わります。
- 具体的なビジネスにつながる質問
- 顧客への興味関心を示しながらも、ビジネスにつながる質問を織り交ぜることで、お客様の状況を確認していきます。
競合分析を加速させる、効果的なプロンプト集
a. Few-shot プロンプティング
Few-shotプロンプティングとは、人工知能モデルに与える指示文(プロンプト)の中に、複数の例を提示することで、より的確な回答を引き出すためのテクニックです。
例を提示することで、AIモデルは、どのような種類の回答が期待されているのかをより深く理解し、与えられたタスクに適した出力を生成できるようになります。この「例」を、AIの学習においては「Shot」と呼ぶことがあります。
具体的に言うと、例えば、「優位性を説明する文章」というタスクをAIに与える場合、
- 従来の方法: 「弊社の優位性を説明する文章を教えてください」
- Few-shotプロンプティング: 「弊社の製品と競合製品[競合製品名]を比較し、弊社の優位性を説明する文章を作成してください。
- 例:弊社の製品は、[競合製品名]と比較して、[機能]が優れており、[顧客メリット]を提供できます。
このように、弊社の製品と競合製品の例を複数示すことで、AIはより正確な翻訳を行うことができるようになります。
Few-shotプロンプティングのメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 少ないデータで高性能なモデルを構築できる
- モデルの汎化能力を高める
- 新しいタスクへの適応性を向上させる
このように、Few-shotプロンプティングは、AIモデルのパフォーマンスを向上させる上で非常に有効な手法です。
b. Chain-of-Thought (CoT) プロンプティング
Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングとは、人工知能モデルに与える指示文(プロンプト)の中に、問題を段階的に解決する過程を示すよう求めることで、より深層的で論理的な回答を引き出すテクニックです。
CoTプロンプティングの目的
従来、AIモデルは与えられた質問に対して直接的な答えを生成することが多く、その思考過程はブラックボックスとなっていました。CoTプロンプティングは、このブラックボックスを解き明かし、AIがどのようにして答えにたどり着いたのかを可視化することを目指します。
CoTプロンプティングの具体的な例
- 複雑な質問内容:
- 従来: 「顧客から「[複雑な質問内容]」という質問が来ました、解決策を教えて?」
- CoTプロンプティング: 顧客から「[複雑な質問内容]」という質問が来ました。この質問に対して、以下のステップで回答を作成してください。
- 顧客の質問を正確に理解する。
- 質問の意図を特定する。
- 関連する製品情報や知識を整理する。
- 顧客が理解しやすい言葉で、簡潔かつ丁寧に回答を作成する。
- 競合分析:
- 従来: 「弊社の競合である[競合会社名]の強みと弱みを教えて?」
- CoTプロンプティング: 弊社の競合である[競合会社名]の強みと弱みを分析し、以下の点について考察してください。
- 競合製品の特徴とターゲット顧客
- 競合のマーケティング戦略
- 弊社の製品との比較
- 競合との差別化戦略
CoTプロンプティングのメリット
- 説明可能なAI: AIの判断根拠を理解できるため、信頼性向上に繋がる。
- 複雑な問題解決: 多段階の思考プロセスが必要な複雑な問題にも対応できる。
- 学習効率の向上: 思考過程を可視化することで、モデルの学習効率が向上する。
c. AIに、AIが出した出力に対して判断をさせる
目的
AIモデルは、与えられたプロンプトに対して、可能な限り正確な回答を生成するように設計されています。しかし、複雑な質問や、まだ十分に学習されていない分野については、曖昧な回答や不正確な情報が含まれる可能性があります。
この問題に対処するために、「追加質問」というテクニックが有効です。AIが出力した回答に対して、「この回答は曖昧ですか?」「もう少し詳しく説明できますか?」といった質問を投げかけることで、AIにより深く思考させ、より正確な回答を引き出すことができます。
メカニズム
- 初期的な質問: AIに質問を投げかけ、回答を得ます。
- 回答の評価: AIの回答が、質問の意図に対して十分に正確かつ詳細であるか評価します。
- 追加質問: 回答が曖昧であったり、不十分な場合は、より具体的な質問を投げかけます。
- 再回答: AIは、追加の質問に基づいて、回答を修正または再生成します。
- フィードバック: 人間の評価者が、AIの回答が改善されたかどうかを評価します。
AIモデルへの影響
このプロセスを繰り返すことで、AIモデルは以下のような効果を得られます。
- 学習の促進: 人間のフィードバックを通じて、AIは自分の回答がどこで間違っていたのか、どのように改善すれば良いのかを学習します。
- 精度向上: 曖昧な回答を減らし、より正確な回答を生成できるようになります。
- 汎化能力の向上: 様々な質問パターンに対応できるようになり、より汎用的なモデルへと成長します。
インサイドセールスにおける活用例
- 顧客からの問い合わせ: 顧客からの複雑な質問に対して、AIが初めに回答を生成し、その後、営業担当が追加質問を行うことで、より的確な回答を顧客に提供できます。
- 提案書作成: AIが生成した提案書に対して、「この提案は競合との差別化が十分に行われているか?」「顧客のニーズに合致しているか?」といった質問を行い、提案書をより洗練させることができます。
- 市場分析: AIが生成した市場分析レポートに対して、「このデータの信頼性は高いのか?」「競合の動向について、もう少し深く分析できるか?」といった質問を行い、分析の精度を高めることができます。
このテクニックのポイントは、AIの回答に対して常に疑問を持ち、より深い理解を求めることです。
まとめ
今回、注目を集めている生成AIについて、BDRでの活用事例をはじめとして活用にあたっての実際の生成AIの活用方法をご紹介しました。たしかに生成AIには誤ったプロンプトを出力し情報漏洩などのセキュリティ上でのリスクやレピュテーションリスクがあり、完全なものであるとは言い切れません。
しかし、活用しないことのリスクはそれ以上かもしれません。時流に乗り遅れ、競合他社に差をつけられる前に、リスクヘッジの観点を忘れずに活用に向けた準備を始めるべきタイミングが来ていると感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。