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実施から半年間で成約率を2倍にしたBDRのポイントとは?

篠崎 太祐 | V-cube2023/11/17
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本記事では、きっと多くの皆様が課題として感じる、BDRの壁を超える挑戦の記録をお届けします。解釈は様々ですが、関係性ゼロの状態から商談機会を創るBDRという手法は、インサイドセールス(以下、IS)が周囲から活躍を期待される部分の一つかと思います。既に取り組まれている方は共感していただきながら、これから始められる方は転ばぬ先の杖的にこの記事をご覧いただけると嬉しいです。

篠崎 太祐 株式会社ブイキューブ。株式会社ブイキューブに新卒で入社し、2015年和歌山県白浜町のテライトオフィス立ち上げ責任者として従事。Web会議を使った、訪問をしない「オンライン営業」の仕組みを設計。2016年東京本社にて、自らお客様の対応をしながらインサイドセールスを立ち上げ、メンバー育成、教育、成果管理を行う。

今回のポイントとは?


まず結論を先に述べます。我々が注力し工夫したポイント、それは「ISによる初回商談の実行」です。

「それはもうISではないのでは!?」と思われる方もいるかもしれませんが、この行為が受注見込みの高い商談を生み出し、成約が全く出ない状態から半年間で成約率2倍を実現したのです。

対面する市場、お客様の層、サービスの単価やリードタイム、人数規模など様々な条件下で皆様セールス活動をされているかと思いますが、BDRに取り組まれている方のお役に立てますと幸いです。

なぜ始めたのか?=BDRの壁


弊社のインサイドセールスの歴史は、SDR(反響型のインサイドセールス)から始まりました。お客様からのお問い合わせを全面に受け、最適なフィールドセールスへ見込み商談として供給する。というものです。

その後、BDRチームを立ち上げ、様々な挑戦から見込み商談の数だけは増加していきました。毎月の創出商談数の目標を達成し、インサイドセールスの現場は大盛り上がりでしたが、その熱気はフィールドセールス(以下、FS)へは届きませんでした。

そうです、これが「BDRの壁」です。見込み商談を送ってもFSから喜ばれない、成約する見込みだと思った商談が進展しない気が付いたら失注になっている、そんな日々が続きました。

その壁を超えるための新たな挑戦としてISによる初回商談を開始し、約半年まったく成約が全く出ない状態から成約率2倍を実現できたので、この度記事を寄稿させていただきました。

なぜ、半年間で成約が全く出ない状態から成約率2倍を実現できたのか?


そのポイントは「FS / ISそれぞれが初回商談を担当するお客様を、お客様が想定するリードタイムで決めた」という点です。クライテリア(有効商談と認める条件)を厳しくするといってしまえばシンプルですが、この取り組みを通じてその部分が極めて重要だと感じています。

わかりやすくするため「流れ」を図式化すると、以下のようになります。



このISによる初回商談の流れを組むことで、以下のような効果・効能があることに気付きました。

①ISメンバー自身が「商談がなぜ進まないのか」「長期検討のお客様のリアル」を身をもって体験できた。
②FSは「長期検討のお客様」が減ることで、「短期検討のお客様」への提案準備に時間を割けるようになった。
③ISはお客様をKeep in Touch(継続的なアプローチによる関係構築や検討タイミングを掴むこと)をする文化があったので、「長期検討のお客様」を進展するタイミングでFSへトスアップができるようになった。

特に①については、受け取り手の気持ちをISメンバーが理解してくれるようになり、同じようなことが起きない為の意識改善につながったことは、効果として大きいと感じています。また、お客様がどんな状況で情報を収集し、本格検討になるためには何が必要で、その間に何をすべきか、などお客様に対する解像度が鮮明になったことも非常に大きいと考えています。

また、ISで行う初回商談ではヒアリングを徹底しているのですが、FSから「ISがやっているヒアリングを参考に、FSチームでもヒアリングを意識的にやるメンバーが増えてきた。とくに検討確度の低い商談では、これまでデモを中心に時間を使っていたが、ISと同じようにヒアリングをすることで次のアクションが明確になった。」といったフィードバックを貰いました。この動きがさらに商談を前進させる要因になったと考えてます。

どう始めたのか?


まず取り組んだポイントは「初回商談用の資料」と「ロールプレイ(スタッフをお客様に見立てて疑似商談をすること)の録画配布」です。その後、一定の期間を経て実際の商談となりますが、スタート時は私がメインとなり商談に対応し、メンバーを同席させました。そして徐々にメインをメンバーに交代して貰う形で引き継ぎを行いました。

また、実際の商談の様子はZoomで録画をし、データをクラウドストレージに保存すことで、メンバーはいつでもそれを見て練習できる環境を作りました。これまでも様々な分野でトレーニングを実施してきましたが、最も効果があったのは録画を見せることでした。

人は実際の答え(商談はもちろん毎回答えが変わりますが...)やゴールイメージを想像する、目の当たりにすることができると飛躍的に能力開発が進みます。そのため、資料や研修で教えてことと並行して録画や録音を提供することが効果的なのです。

ヒアリングの内容は極力シンプルにしました。検討の背景、現状の業務フロー、課題に感じていること、このあたりを中心にデモを交えながらヒアリングしていきます。そして最後に「実際にご検討されるのはいつ頃になりますでしょうか?」と、決してクロージングをする目的ではないとお客様に認識していただきます。この問いかけによって、リアルな検討時期を教えていただくことができるのです。

この流れで、営業経験ゼロのメンバーも研修を初めてから2ヶ月以内で、ほぼ独り立ちしてくれたケースもありました。やはり商談の難易度は後半に行くに従って上がってきます。しかし、冒頭部分のデモやヒアリングであれば営業未経験のメンバーでも数ヶ月で確実にオンボーディングが可能です。

やってよかったと思う点


この取り組みをやってよかったと感じる点は、いくつかありますが、「進みにくいお客様を対応したことがある」という共感が、ISとFS間の絆を深めてくれたと思っています。始める前は「一生懸命商談を送っているのに何故すすまないんだろう?」という感情がISにはありました。いや、正直に言うと「なぜ進めてくれないんだろう?」という心の壁があったように思います。

そこから「さすがにこの状態では商談は進まないか...」という体験を通じ、FSと近い視点で商談創出ができるようになっていったのだと思います。

この経験は、今回の取り組みだけではなくマーケティングにも活きてくると考えています。これはまではいかにしてリード(お客様からの問い合わせや個人情報そのもの)を多く収取するか、という点に意識が傾いていました。しかしいまは、もちろんリード数を集めるマーケティングも必要だが、商談を進展させるためのイベントできないか?短期検討のお客様が知りたいことはなんだろうとアイデアの幅も広がっています。

分業制にすることはメリットが大きい一方で、近視眼的になってしまう、お客様の解像度が下がることで短期の目的だけを追ってしまうといったデメリットもあると再認識しました。形にこだわらず、最適に変化していく重要性に気がついた取り組みでもありました。

最後に


ゼロから関係性を作り、売上・利益を作ることができるBDR活動は、上手くやれば投資対効果も高く、インサイドセールスの価値を高めてくれる取り組みだと思っています。

だからこそ挑戦しがいがあり、思い悩むことも多くありますが、ここでご紹介した取り組みもまだまだ過程であり、私達の挑戦は続きます。インサイドセールスにまつわる悩みや気付きを多くの方と語り合いたいと思っています。TwitterのDMを開放しておりますので、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。

この記事がインサイドセールスに取り組まれている方の、少しでもお役に立つことができれば嬉しく思います。

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