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トーク品質を大きく改善した「RQ」を徹底解説します

JUN/りんご信者のインサイドセールス | Out-Loop2023/11/17
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本記事ではインサイドセールスにおいて重要な「トークの品質」について具体的な事例を用いて解説していきます。インサイドセールス一人ひとりの特徴や長所を活かすことは大切ですが、まずは正しいトークを身につけ、最短で成果を出すという部分に焦点をあてて解説していきます。

HR業界でインサイドセールス立ち上げ(BDR、SDR)支援に従事。2023年からOut-Loop株式会社へ参画し、自身もプレーヤーとして稼働しながらチーム全体を牽引。日々インサイドセールスのノウハウ、イネーブルメント関連情報を発信している。

はじめに

 
インサイドセールスにおいて、重要なスキルのひとつであるトーク力。組織の均一化を図るためにトークスクリプトを作る方も多いのではないでしょうか。しかし「同じスクリプトを使っているはずなのに、トッププレイヤーとそうではない人の成果に差が出てしまう」という事実に直面したことがあるのは私だけではないはずです。
 
では一体なぜそこまでの差が生まれるのでしょうか?会話を紐解いていくといくつかのポイントにおいて、トッププレイヤーの特徴が見えてきました。Out-Loop株式会社では、毎月「30時間 / 200社様」以上のレコーディング分析を行っています。今回の記事ではその豊富な事例を分析することでわかったトークのポイント、そしてそれを体系化してトーク品質を大幅に改善させた「RQ」という考え方についてご説明します。
 

RQとは? 

 
RQとは「Recording qualification(レコーディング・クオリフィケーション)」の略称です。我々はこれをインサイドセールスの品質管理として表現しています。インサイドセールスには架電だけではなく、ターゲティングやメールなど多岐にわたる能力が求められますが、もっとも比重の大きい架電に絞ってRQを実践しています。
 
具体的に何をしているのか、それは架電時にレコーディングした音声データをチェックし、フィードバックによってトーク内容の改善を図っていくのです。ではどのような項目をチェックしているのか、具体的なRQの評価項目について見ていきましょう。
 
評価項目
1.トークの内容
受付突破
会社説明
ヒアリング
日程打診
 
2.トークの雰囲気
テンポ
スピード
抑揚
 
3.コミュニケーション
質問に的確に回答しているか
先方の温度感を下げる言動がないか
 
この項目を、レコーディングごとに「○、△、✖️」の3段階で評価していきます。
 

RQで使用している評価シート


CTIツールの重要性

 
このRQ活動において欠かせないのが「実際のレコーディング」です。架電記録やインシデント対応のためと言うのもありますが、架電内容の正確な振り返りには「実際の音声」が欠かせません。もちろん、実際の架電を隣で聞きながら評価、フィードバックをすることも可能ですが、営業時間中に拘束してしまう、聞き直すことができないといった欠点があります。
 
また、各個人で評価をすることもお勧めしません。個人の振り返りだけだと当たり前ですが主観的になってしまい、客観的なすり合わせができないのです。個人が「これは問題ないだろう」と思っている点が実は大きな問題だった、というのはよくあることです。
 
また、イネーブルメントの観点からも、トップセールスの録音を一言漏れなく共有できる意義は大きいと考えています。
弊社では「Zoom phone」を用いて、全ての架電内容を自動録音しています。
 
CTIツールは国内外含めていくつかありますが、その中でZoom Phoneに決定したポイントは以下の通りです。
 
・価格 大手CTIツールの半額以下で利用できるコストの観点
・音質 大きく乱れることのない安定した品質
・その他 架電ログを確認可能できる機能
 
また、必要な分析機能が揃っている点も大きな魅力です。zoomphoneで分析で確認できる項目は他にもたくさんありますが、弊社は以下の3項目を注視しています。
 
・総通話数
・平均通話時間
・総通話時間
 

Zoom phoneでの分析画面


実際のトーク内容ももちろんですが、適正な通話時間か?という点も同時に振り返ることで、より客観的な改善を促すことができています。例えば平均通話時間が短ければ、お客様と話すところまで行き着いていないのではないか、しっかりとしたヒアリングの準備ができていないのではないか、といった仮説が立ちますのでそこを実際の録音データで確認することが可能です。

スクリプトのポイントは?

 
先ほどトッププレイヤーのレコーディングを共有する意義をお伝えしましたが、トッププレイヤーは具体的にどのようなトークをしているのでしょうか。RQ活動から見えてきた共通点は以下の3つです。それぞれ順を追ってご説明します。
 
①前提のすり合わせ
②現状の称賛→課題示唆
③終話時の握り
 

①前提のすり合わせ


ロープレイヤーのトーク例:
「お世話になります。〇〇株式会社の田中です。以前は弊社セミナーにご参加いただき、ありがとうございました。弊社がxxxと言うサービスを展開していまして、改めてご案内できればと思ってのご連絡です。」
 
トッププレイヤーのトーク例:
「「お世話になります。〇〇株式会社の田中です。実は、以前、弊社のセミナーにご参加いただいていまして、半年ほど前の話になりますので弊社のことは覚えていらっしゃらないですよね?そうですよね!実は弊社が〜と言うサービスを展開していまして、ちょうど貴社業界のお取り組み事例も増えていましたので、改めて情報提供できればと思ってのご連絡です。」
 
あえて具体例から見てもらいましたが、あなたならどちらのトークの方が、その後「こちらの現状も正確に伝えよう」と言う気になるでしょうか。
 
弊社のこれまでの統計では後者の方が、お客様との会話が続く率が高くなっていました。それは「前提のすり合わせ」ができているからです。大前提、お客様は原則、「過去の接点を覚えていない」と言う認識で臨みましょう。
 
個人的には、人の記憶はもって1,2ヶ月かなと思っています。お問合せやセミナー直後の架電ならいいですが、前回のアクションから時間が経過したリードについては「接点自体を忘れている」と考えるのが自然です。
 
そのために「覚えていますか?」→「覚えていない」というトークではなく、「覚えていないですよね?」→「そうですね、ちょっと記憶になくて...すみません」といった流れの方が自然ですし、失礼ではないと考えています。※もし万が一覚えていてくださった場合は、しっかりと感謝を伝え、そのまま会話に入っていきます。
 
その上で、以下のポイントを冒頭でお伝えし認識をあわせていきます。
 
・なぜあなたに電話したか
・なぜ今電話したか
・何の話題で電話したか
 
これはお客様からの信頼を獲得し、警戒心を解いていただくためです。お客様からすれば、突然かかってくる電話ほど、警戒してしまうものはありません。そこでまず、あなたと私は過去に接点があった(初めましての怪しい者ではない)ことを伝えます。
 
さらにお客様が発言することは稀かもしれませんが「接点があったとしてなぜいま電話をしてくるのか?」という問いにも答える必要があります。そのために、なぜいまあなたに電話したか、をしっかり準備しましょう。
 
例)
・過去に参加いただいたセミナーの最新版を実施することになった
・お客様と同業界の事例が発表された
・お客様の業界に大きな変化があった
・お客様自身になにか変化があった

お客様に「自分のためにしっかり準備してくれた」と思っていただくことが重要で、それによって信頼感が高まり、こちらのヒアリングにも答えてもらえるようになります。もしその架電でうまくいかなかったとしても、お客様との間に築いた信頼は積み上がっていきます。
 
また、注意したいポイントとして「先に、シンプルに要件を伝える」があります。ここは説明不要かもしれませんが、何の話かわからず会話が続くことほど不快なことはないので、先に用件をお伝えしましょう。
 
良いパターンとして「過去にお客様から◯月くらいに連絡がほしいと承っていたのでご連絡しました。」というトークがありますが、嘘はいけません。嘘にならないためにはすべての会話の最後に「では次回は◯月ころにご連絡してもよろしいでしょうか?」と言葉をそえて、それをSFAに記載しておくことで、Why you nowを作り出すことができます。

②現状の称賛→課題示唆


ロープレイヤーのトーク例:
「◯◯についてお困りごとはございますか?」
 
トッププレイヤーのトーク例:
「◯◯については順調にいっていらっしゃるということでお変わりなかったでしょうか?」
>順調です
「よかったです。結構、◯◯については苦戦されているというお声を他社さんから伺っていたのですが、貴社(or ◯◯様)はすでにクリアされていたのですね。ちなみに、他社様からは◯◯や◯◯といった課題を聞くことが多いのですがいかがでしょうか?過去も含めてもしそういった事象があれば教えていただけませんでしょうか?」
 
こちらについてはいかがでしょうか?いきなり課題を聞くというミスは誰しもが経験のあることではないでしょうか。お客様が一言で簡単にいえるほど課題というのは簡単ではありませんし、その準備もできていません。なにより抽象的すぎて答えようがありません。これではせっかく積み上げた信頼も無に帰します。
 
基本的には「現状の把握、課題把握、そして提案」という流れが良いアポ、商談を生み出すためには必要だと考えています。それに必要なのが、まずしっかりと現状を称賛することです。お客様もこれまで多くの課題に取り組み、解決されています。まずはその事実を称賛し、絶望的な状況ではなく、改善に向かう中でさらに環境を改善するために必要な建設的な議論である、と認識いただくことが重要だと考えます。
 
安心していただいたところで他社事例のトークを展開することで、たしかにそういった課題(or 不満ではないが不完全な状況)があるかもしれないと自然にヒアリングすることができます。つまり、「課題を話してもいい雰囲気」を作り出すことが肝心なのです。
 
そのうえで、他社が同じような課題を抱えているなら自分も話していい(他社、もしくは業界のリーダー企業が出来ていないなら、自分が出来ていなくても当然かもしれない)と、ある意味での安心感を醸成します。そのために、アプローチしている業界がどういった構造なのか、業界全体の課題感はなにか、関連する事例はないかなどを事前にリサーチし、備えておく必要があります。
 
もしそこまでしてもうまく会話が進まない、商談獲得に至らない場合は「中長期のご参考として〜」というような形で商談を打診してみると良いでしょう。もしNGであればNG理由を聞くことでなにか前進するヒントをいただけるかもしれません。

③終話時の握り


これをしているかしていないかで「商談のキャンセル率」が大きく変わります。せっかくアポを取っても実施されないと意味がありませんので、それを予防するアクションが必要になります。
 
そのアクションとは「当日なにを話すのか」「目の前の方にとってのメリットは何か」を明確にし、それを終話する前に繰り返すことです。こちらは準備して架電していますが、お客様はそうではありません。我々との会話の中で話しながら整理していますので、要点を失念してしまうことも少なくありません。
 
ですから会話の最後にポイントを繰り返すことで、「この商談は必要性の高いものだ」としっかり認識していただく必要があるのです。副次的な効果として「であれば当日は◯◯についても説明してほしい」といった要望をいただけることがあり、これは商談を進める上で重要なヒントになる可能性があります。
 
また、できれば通話しながらカレンダー登録をしていただきましょう。お客様はとても多忙です。すぐにカレンダー登録をしていただくことでキャンセル率を下げることができますし、Googleであれば外部招待を使ってカレンダーを送付することも可能です。
 
ここまでいくつかのポイントをご説明してきましたが、これだけやることが多いとついつい早口で話してしまう、相手の話を遮ってしまうといったことがありますが、絶対にやめてください。スピードは相手に合わせてややゆっくりと、ヒアリングについては、「とにかく相手の話を聞く、遮らない」、これを徹底してください。
 
こういった点も、人によって差が出る要因=同じスクリプトでも人によって成果が変わる要因になります。こういったポイントこそが「録音を聞いて客観的にメンバーにフィードバックする」RQが必要となる部分なのです。

まとめ

 
弊社はRQ活動を通して、以下のような成果が出ています。
 
・商談獲得率の向上(BDR)
2%→4%
 
・キャンセル率の減少
15%→8%
 
もちろんトップパフォーマーがさらに数字を伸ばした、ということもあるのですが、一番影響が大きいのはロープレイヤーが成果を出して全体の数を底上げしたことです。
 
また、影響は数値だけに留まりません。途中でもお伝えをした「これは問題ないだろう」と本人が思っている点が、実は問題だったという点に関しては、時間が経つにつれて小さい問題から大きな問題になりインシデントを引き起こします。
 
しかし、インサイドセールスマネージャーも勤務時間が限られる中で網羅的にレコーディングを確認することは難しく、私も以前はそうでしたが、録音データを活用することで問題を浮き彫りにし、事前に大きな問題の芽を摘むことができるようになりました。
 
2:6:2の法則の中でトッププレーヤーには共通点があります。これは各事業会社によっても色が大きく異なりますが、探せば必ず共通点があります。ぜひ自社でその共通点を見つけ、品質改善を促していってください。
 
もしこの記事を読んで気になるポイントがあれば私のTwitterアカウントにDMをいただければと思います。すべての方に個別にお答えすることはできない可能性もありますが、極力お答えしたいと思います。ぜひお気軽にお問合せください。最後までお読みいただきありがとうございました。

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