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インサイドセールスの価値を再考してみる。

渡邊 悠介 | Magic Moment 2023/11/17
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本記事は私自身の経験、およびお客様の皆様と議論をしてきた「インサイドセールスが事業作りの梃子(てこ)になる」というお話についてです。インサイドセールスの無限の可能性をヒントに、事業責任者、インサイドセールス責任者だけでなく、起業や事業責任者を目指すインサイドセールスのみなさまにお読みいただけたら幸いです。

渡邊 悠介 Magic Moment。リクルート、コーチング事業のPabloを経て2021年Magic Moment入社。Demand Generation、Enterprise BDR、Account Executiveを経験し、現在はEnterprise事業戦略担当。BtoBセールスプロセス構築(新規事業・Enterprise/SMB)とセールスイネーブルメントが専門領域。

インサイドセールス、辛くないですか?


早速ですが、もしかすると多くの方が思っているであろうこの気持ち。SDRならまだしも、BDRとしてアウトバウンドをするのであれば、相当数の電話がそもそも繋がらない、メールの返信がないという現状。そこに加えてリモートワークでは辛さを分かち合える同僚もすぐそばにいない、そんな状況の中であれば当然芽生えてくる気持ちだと想います。そして、それは私も例外ではありませんでした。

飛び込み営業が苦手で仕方なかったリクルートの新人時代。その後、新規事業のセールスプロセス作りや、1,000名を超える営業・CSがかかわるプロセス作りに携わった経験の後に、改めてインサイドセールスとしてアウトバウンドBDRを経験した私だからお伝えできる、事業の要としてのインサイドセールスの価値についてお話しします。

あなたのベストコール、ベストメールを見返してみよう


まず手始めに、あなたのこれまでの神の一本と呼べるアクティビティをぜひ振り返ってみてください。

・何十万の社員がいる大手企業の役員にリーチできたことで、案件が一気に進んだあのメール。
・受注後に、LTVが数億にもなったあの一本の電話。
・恋焦がれたあのお客様に振り向いてもらえたメッセージ。
・そして何より、お客様に連絡をしたことを感謝されたあの瞬間。

そんな経験ないよ!という方もいるかもしれませんが、真摯にお客様にメッセージを届けることを考え、インサイドセールスプラスの記事や様々な書籍や情報を穴が開くほど読んで、足を止めなければ、きっとその瞬間は訪れます。むしろ気づいていないことがほとんどで、お客様にとってたくさんの価値を提供した幾多のきっかけを、インサイドセールスの皆さんは生み出しているのです。ですからあなたが気がついていないだけで、絶対にあると断言します。

そして、そのコールの録音を聞き直したり、メールを読み返してみると、きっと「Why you, Why Now」の要素がしっかりと揃っていることに気づくはずです。「Why you, Why Now」がしっかりと訴求できているということは、公開情報やこれまでの接点の中での情報を紡ぎ合わせ、お客様の事業成長を願い、ベストタイミングかつ一瞬で伝わるわかりやすいメッセージと共に適切な方にお届けできているということです。加えて、自社の事業の価値に対しても正確な理解と、魅力的に伝わる言葉を持っているということでもあります。

「Why you Why now」。シンプルに言えば、「なぜ今、あなたに連絡をしたのか?」ということになります。相手へのメリットや、こういうことに困っているのではという仮説、またそれらを、中期経営計画や、IR、人事異動を根拠、きっかけに伝えるものになります。

優れたインサイドセールスのメッセージは、フィールドセールスが捻り出す提案骨子そのものであり、役員層や意思決定層が普段接しているコンサルタントが提示するインサイトと同等の価値を持っています。

実際に、とある企業のインサイドセールス責任者の方が、多くのインサイドセールスが「育ったと思ったら高給でコンサルタントに引き抜かれていってしまう」ということ嘆いておられました。この企業はホリゾンタルにさまざまな業界へアプローチしているのですが、複数の業界について相対感を持ちながら、経営者の目線で解像度高く理解している人材がマーケットでは希少で、非常に価値が高いからということでした。

解像度高く事業理解するとはどういうことか


解像度とは、深さ×広さ×構造化×時間軸のことです。詳細までお話しすると長くなりますが、セールスの現場において事業理解をするということは、点ではなく、面と線で捉えていくことが必要だ、というのが我々の手法論になります。

面の要素(抽象度を変えて広さ深さを知り、構造化する)
 →業界、競合、事業、顧客、事業を動かす人(Economic Buyer・Champion・組織)

線の要素(時間軸で構造の変化を捉える)
 →沿革、中期経営計画、直近8四半期分のIR、トレンドや未来予測

これらをさまざまな公開情報(IR、人事情報、記事、webinar、SNS)とアクティビティの中で得た情報や、フィールドセールスからの情報を撚り合わせ、それらが交錯するポイントに「こういう課題があるのではないですか?」という仮説を打ち立て、自社の提供価値に照らして「Why you, Why Now」に沿ったメッセージに変換します。ここまで準備するからこそ、高い商談獲得率や受注に直結する商談を生み出せるのです。

当然これらの事業理解と仮説構築にかかる時間は多大なものです。ゆえに、この3行のメッセージ作成に全てのリソースを注ぎ込めるよう、上記の手法に合わせてその他の活動をできるだけ自動化するというのが、我々Magic Momentのテクノロジー支援のアプローチになります。

ここまで実行できたときに、お客様の、しかも大変忙しい経営者や役員層から感謝のメッセージと共に返信をいただけるという現象が起き始めます。我々のような営業変革をテーマにしている会社では、そのアプローチ自体に関心を持ってくださり、ファンのように惚れ込んでご発注いただけるケースも少なくありません。

新しい顧客基盤をつくれるということの価値


当然、この情報社会の中で埋もれずに上記のようなメッセージをみてもらうためには、何度かアプローチをしていくことも重要になります。コロナ禍でデジタルマーケティングの仕組みを導入する企業が大量に増え、膨大な量のナーチャリングコンテンツが世の中に溢れかえる形となりました。

お客様と営業の情報格差のバランスがかわってきている、と言われて久しいですが、マーケティングオートメーションだけでそれらを完全に補完できている企業は多くないと感じています。お客様にとって有効なタイミングで有効な情報を届けられる、つまり1to1のキュレーション力がインサイドセールスに問われる時代となりました。ゆえに、私の体感では「企業によってはアウトバウンドのROIが悪化している」ということも起き始めています。

インサイドセールスのアクティビティは、届けたいその珠玉のメッセージを認知してもらうことが第一歩になります。リードソースとお客様の業務リズムによりますが、「メール、電話、電話、メール」「メール、メール、電話、電話」などいくつかの順序パターンと感覚を試しながら、ストレスなくリーチできるフローを構築していくことが重要です。我々は自社が提供する機能でこの最適なフローを、インサイドセールス全員に頒布するというアプローチを取っています。

このコミュニケーションが続いていくことで、お客様との関係性を構築していくことこそ、インサイドセールスの価値であり、一気通貫型の営業ではなかなか習得できない、最も大きな価値の一つだと考えています。いつの時代も、新しい顧客の獲得が、ビジネスを前に進める原動力となります。多くの企業が、これまでの顧客基盤に依存し続けそこから脱却できない中、新しい顧客を獲得できるというのは、大きな武器になります。

これまでたくさんの新規事業への支援を行う中で、既存事業との関係性やテリトリー問題、CRMの優先度など、課題を目の当たりにしてきました。そして、既存事業を推進してきた営業部隊からの拒否反応も、事業構造を転換する妨げとなる例を多く見てきました。ですから、インサイドセールスチームが機能し、新規事業の商談を生み出すことは短期的な売上だけではなく、企業の変革と長期的な価値向上に貢献するのです。

事業の価値を言語化すること、アラインすること


インサイドセールスの効率性を高めていく手法の一つに、リストの純度を高めていく作業があります。この作業は、抽象度の高い、事業価値やありたい姿といった概念的な内容と、実際のアクティビティをもとに、データドリブンに判断することを行ったり来たりしながら改善していくプロセスのことを指しています。

事業価値の発露には、プロダクト・サービスそのものが持つ力と、それらが発露するための構造的な条件の両方が揃うということが必要になります。既存事業の変革においても、新規事業においても、このプロセスは非常に重要な意味を持ちます。

新規事業においては、いわゆるプロダクト・マーケット・フィットを目指すためにこれを行うことが有効ですが、大手企業においては、さまざまな歴史の中で、最も提供価値が最大化できる顧客へ、リソースが最適配分されていないということがよく起きており、これを適正にしていくという営業変革の中で、必要な手順になっています。

この意思決定を行う時に、インサイドセールスが顧客接点で得た情報の量と正確性が求められます。全く違う基準でアポイントをとっている2つの組織が存在すれば、当然その精度は下がりますし、まったく違う順番でお客様へのヒアリングをしている場合は、その情報の粒度や正確性にばらつきがでてくる、ということになり、経営にとっては正確な判断ができないということになります。

常に粒度の揃った情報を取得し続けながら、その内容を経営チームにフィードバックすること。経営チームや企画部門はそれらを分析し、下記の言語化をし続けること。このサイクルこそが最も重要になってきます。

●  事業価値はなにか?
●  我々の顧客は誰か?

この2点のシンプルで正確な言語化が、セールスプロセス全体の設計を決めるための肝であり、ここがうまくいくと、劇的に効率が高まる、つまり事業の収益やROIが跳ね上がっていくということになります。

多くの営業現場においては、改革をしなければという危機感が強い一方で、今までのやり方や、(営業個人単位でみると)旨味を得ている既存の顧客基盤を崩したくなく、たくさんの反対勢力が改革を阻止しようとします。

こうした反対勢力をうまく御すために、”商談機会”という最も営業にとって大切な真水のコントロール権をインサイドセールス側が握り、質の高い商談を供給し結果がで始めることで、多くの営業がそのモメンタムに乗っかって改革が推進されていきます。その最初の一歩をリードするという、改革推進の最も重要な役割を、インサイドセールスが担うことができるのです。

事業のPLに大きく貢献できる


上記を実行できたときに、セールスプロセスはどのように効率的になっていくでしょうか。

●  価値創出できる顧客は当然満足度が高く、チャーンせずにLTVが大きく上がります
●  価値創出できる顧客を受注できるので、CSの工数は少なくなります
●  価値創出できる顧客に、適切なタイミングで商談できるので、リードタイムは短くなります。ゆえに、フィールドセールスは多くのpipeline(進行中の商談)を保持でき、受注総額は大きくなります
●  価値創出できる顧客なので価値が伝わりやすく、受注率は高まります
●  価値創出できる顧客との商談のみに集中できるので、提案準備にかけられる時間が増えます
●  価値創出できる顧客との継続的な関係性作りを実行するので、顧客/見込み顧客問わずにファンが増えていきます

しかも、これらが一つではなく、事業価値と言語化によって全て同時に掛け合わされるということを意味しています。
これが、事業にとってどれだけの意味を持つかというのは、もう明白ですね。事業のPLに対して、大きなインパクトを与えることができるのが、インサイドセールスの持つ大きな価値なのです。

インサイドセールスは、移動コストの削減や、分業化による生産性向上といった側面で捉えられがちですが、それだけではありません。インサイドセールスとは事業価値そのものであり、その要(かなめ)となっていることがご理解いただけたのではないでしょうか。

インサイドセールスには、無限の可能性がある


実はとても価値の高い仕事なのに、頑張っている本人が気付きづらい、というのがインサイドセールスのもったいないところだと思っています。いろんなお客様や、自分の事業と向き合う経験をした中で、私の現段階の結論は下記になります。

「インサイドセールスは事業造りそのものであり、無限の可能性がある」

まだまだ需要と供給のバランスが追いついていないインサイドセールス業界ですが、一人でも多くの方に門を叩いていただき、事業作りを一緒に楽しんでいけたらと願っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。上記のような考えをもとに、セールスを基軸にお客様の事業成長にコミットしているのが、弊社Magic Momentです。ご興味を持ってくださいましたら、ぜひこちらよりお問合せをいただけたら幸いです。
 

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