はじめに
「どうすればトッププレイヤーを育成することができるのか?」インサイドセールスのマネジメントに関わったことがある方なら、誰でも一度は考えたことがあるはずです。
ひたすらコールをしたり、あるいはロープレを繰り返してもいまいち成果として伸びない。また、どれだけやったら良いのか?というのが不明確なパターンが多いため、メンバーもマネージャーも疲弊してしまうことも多いのではないでしょうか。
また、今回お伝えするのは、主にBDRの事例となりますが、SDRをメインで展開されている企業様にも参考になる部分があると思います。
活躍する人材の特徴とは?
1.RQシート集計から判明した特徴
特徴①:初回架電で「日程打診」ができている
これはイメージが湧く方も多いと思いますが、「必ず日程を打診する」というのは非常に重要です。そもそも日程打診まで行かずに、「時期を改めます」や「資料だけお送りします」となって終話してしまっている録音データが、ロープレイヤーには20〜30%ほどありました。
日程打診ができる・できないの違いとしては、「一度の架電で日程OKもらえないとだめだと思っている」「商談設定を断られるのはわるいことだ」という認識の誤りです。つまり、「これは絶対に(もしくはかなり高い割合で)商談設定ができるという場合にしか日程打診をしない」ということです。
しかし実際のデータを見てみると、2回目の架電での商談獲得率は以下のようになっています。
・初回架電で日程打診ができていない 11%
・初回架電で日程打診ができている 36%
なぜこの違いが生まれるのか、それは2つの理由からだと考えています。1点目は「相手が資料を受け取るときの前提が変わるため」です。初回で日程打診せず「資料だけ」という形だと担当者様の温度感も上がらず、ニーズの顕在化に近づかないためです。一方、日程打診をして断られた上での資料送付であれば、その際に「資料を見た上で興味があればお話しさせてほしい」というこちらの意図を伝えられるので、2回目の架電時にも前提が擦り合い、結果として商談獲得率に差が開くと考えています。
2点目は、「日程打診することで”いまではない理由”が明確になる」ためです。例えば、今月は忙しい、まだ課題が明確になっていない、自分は商談する立場にない、など様々な理由がありますが、こういった事実を確認せずにこちら側でいくら考えても答えにはたどり着きません。日程打診はある意味でのテストクロージングのような効果があり、それによって商談設定への障壁が明確になるので、2回目にそれが改善されれば商談設定が可能になるという構造です。
断られても日程打診することや、資料送付からの再架電などを意味がないと思っているインサイドセールスのメンバーも一定いると感じています。日程打診を行うことの有用性、そしてあくまでもそれはお客様の課題解決や、購買行動の支援につながることだということを改めてお伝えしたいです。
特徴②:通話時間が長い(平均コール時間が2分以上)
特徴の2つ目は通話時間です。下の「メンバーの通話時間とその内訳」をご覧ください。最も成果を出したのは、稼働時間の長い一番上のメンバーでしたが、生産性(時間÷成果)では下から2番目のメンバーが最も高い結果となりました。数字を確認していくと、平均コール時間と通話割合が確かに高いことがわかります。その詳細を分析していきます。
※定義について
平均コール時間:全架電での通話時間平均値(担当接続有無に関わらず)
通話割合:メンバーの稼働時間に対して通話時間が占める割合
参考:メンバーの通話時間とその内訳
さらに弊社の通話データを分析していくと以下のような結果でした。
・通話時間2分以上 アポ率4%
・通話時間1分30秒未満 アポ率1% ※商談が取れていない断りも含みます。
もちろん、商談獲得しやすいお客様(そもそものニーズが強く、会話もはずむ、もしくはヒアリングが進む)場合、結果的に会話が長くなるという部分も当然あると考えておりますが、アウトバウンドの場合そういった案件は割合的に少なく、基本的にはニーズが明確になっていないお客様に架電しているデータですので、通話の長さはアポ率に影響すると考えています。
ではなぜ通話時間に差異がでるのか、それを以下に列挙します。
- 商材知識(機能や事例など)が豊富
- お客様知識(お客様の企業、個人の業務、市場)が豊富
- 不快感を与えないトーク力(ヒアリングの内容やバランス、トークスピードなど)
ここでのポイントは「無理に会話を長くすればアポ率が上がる」ということではなく、適切な知識や能力があることで信頼関係が構築され、結果的に通話時間が長くなっているということです。ですからまずやるべきことは、プレイヤー目線では商材や業界知識を学ぶことですし、マネジメント目線では一回の通話時間をひとつのきっかけとして、サポートが必要なメンバーを発見、育成することです。
また、なんらかのお断りの反応に対してすぐに引いてしまうのではなく、なぜいま必要なのか、なぜこの製品がお客様に価値を提供できるのかをしっかり伝えることで通話時間が長くなる≒商談獲得率も上がるということになります。これも同様に、切り返して説得するという意味ではなく、なぜいまなのか、製品の提供価値などを事前に準備できているのか、自分の中で自信のある答えになっているのかを確認しましょうという意味です。
こういった背景から、通話時間と商談獲得率には相関関係があるのではと仮説を立てて検証していきましたが、弊社ではメンバーの育成をしていくうえで一定の効果を上げています。
特徴③:架電業務の割合が多い(稼働時間に対する純粋な通話時間の割合が25%以上)
この指標は稼働時間に対して、「実際に何分お客様と通話しているか?」の割合です。インサイドセールスは、入力の事務作業や過去履歴の確認もありますので、100%の時間を架電に費やすことはできませんが、その中でも25%以上を安定的に出しているメンバーは結果的にコール数が多く、成果につながっています。
では、架電業務の割合が多いメンバーはどんな工夫をしているのでしょうか?これも特徴を列挙していきますのでぜひ参考にしていただけると幸いです。
- 業界毎に調査し仮説とスクリプトを準備している
- ポジティブなヒアリングから入ることで失敗率を低減
- 2で得た情報を元にスクリプトを再構成
まず1点目ですが、業界や会社規模によって仮説、一定のトークスクリプトを作っていきます。業界の調査などは時間がかかりますので分担した方が効率が良いですし、いまであればChat-GPTに質問を入力し数回質問を繰り返すだけで、仮説構築には十分な情報を入手することができます。それをベースに時事ネタなどを盛り込んでいきます。
例)
運送業界のトーク例:2024年問題に向けてドライバーの母集団確保が急務だと聞きますが、御社ではいかがでしょうか?
補足:2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されており、このことを「物流の2024年問題」と言われています。
2点目はポジティブなヒアリングから入る、ということです。どうしても課題や解決というと多くの方がネガティブな質問をイメージします。例えば「問題がある」「できていない」「不足している」などのワードです。しかし、お客様も日々課題解決に向き合っておられますので、すでに課題が解決している、いまは緊急事態を脱しているということも当然想定されます。
そこで弊社では「事前に可能な限り調査したのですが、現在は順調ですよね?」という肯定的なトークからはじめるようにしています。そこでお客様から「順調です」という回答があれば「やはりそうですよね、御社の◯◯を拝見して、◯◯だと感じたのですがやはり業界のリーディングカンパニーは対応が他社に比べて圧倒的に早いですね」と返答します。そのうえで「ではより強化したいポイントはどちらでしょうか?」とトークを展開していきます。
ここでのポイントは「肯定的なトークから入ることでネガティブな印象やトークの空気感にならない」「回答がどちらであってもお客様に関する情報が増える」「マイナスなGAPがなくても提案が可能」という点です。
最後だけ補足しておくと、課題というのはAsis(現在)とTobe(目指すべき姿)とのGAPだと言われておりますが、ネガティブだけだと成立しない場合があります(前述した「すでに対応済み」という状態)。しかし、Tobeを「さらに強化したいポイントは?」という問いによって現在は課題感を持っていなくても、よりよくするための提案が可能になるのです。
こういった流れでトークを組み立てヒアリングをしていきますが、課題だけではなく目指すべき姿、これから強化したいポイントの収集、そしてポジティブトークを展開することで「いやいや、弊社はそこまでうまくいっていませんよ。なぜなら...」という流れでヒアリングできる情報もあります。こういった情報を再構成して、さらに仮説やスクリプトの精度を上げていくことも可能であり、成果を上げるインサイドセールスが実行しているのです。
2.日報から判明した特徴
これは意外に思われるかもしれませんが、弊社では「日報の長さ」にも着目しています。
弊社の日報は以下のようなフォーマットです。
※参考の日報に興味ある方はこっそりお送りしますのでX(Twitter)にてDMください!
通常の報告のみならず、常に自分の良い点・悪い点を考えてもらい、解決策まで自身で考察することによって飛躍的に成長が促されます。また、惜しかった企業というのは優先的にRQするという意味でも重要な項目です。
今回の着目点はこの良い点と解決策の項目です。ここは言わばフォーマットがない「自由記述欄」なのですが、だからこそ各メンバーの取り組み方や姿勢が如実に現れるのです。
弊社内の実績相関は、以下のようなデータでした。
トッププレイヤー : 450文字以上
ミドルプレイヤー : 200~300文字程度
ロープレイヤー : 150文字以下
ここは端的に「振り返りの質」ということに着地するかと考えています。自分の中でいかに仮説検証、分析を繰り返してそのアウトプットをしていくか。この繰り返しとすり合わせの回数が成果に直結するのです。
また、成果を出し続けるチームは他のメンバーの日報に質問をしたり、時には指摘を入れたりすることもあります。こういったサイクルが自主的に発生しているチームがとても強いですし、育成も進みます。ですからマネジメントに従事されている方は日報の運用を再度見直していただき、うまく活用することを強く推奨します。
貪欲で成果を出し続けるメンバーは、他のベストプラクティスを取り入れて自分のものにするスピードがとても早いですが、これまでは弊社でも属人的な取り組みでした。それを組織的に促すためにも日報を活用しているのですが、これまでは大きな成果につながっていると実感しています。たかが日報、されど日報ですね。
まとめ
さて、これまで数々の切り口から「ISで成果を出す人はどのような人物か?」を見てきました。「トッププレイヤーになるためには、とにかく地道にコール数やロープレをこなしていく」という論理に反対はしません。しかし、個人的にはもっと可能性を上げる方法があると思っていますし、多くの場合指標やゴールが明確ではありません。
CTIツールや正しい要素に沿ったレコーディングのフィードバックを通して、数字や実際の音声からより確実に、より早くトップセールス育成への道は切り開けると考えています。
これは個人の見解になりますが「商談を⚪︎件とる!!」というコミット意識は重要だと思いますが、成果を出し続け、クライアントにも選ばれ続けるインサイドセールスは目的(コト)に必要以上に目を向けます。小手先のノウハウばかりに目が向くことはありません。
具体的には「顧客の悩みを本気で解決してあげたい」「どうやったらFSが商談を進めやすくなるのか」など自分以外への視点を持っているインサイドセールスは魅力的ですし、成果もついてきます。そのためにも育成には再現性が必要であり、時によっては定量的に捉えることも重要になると考えています。
日々壁にぶつかりつつも新しい気づきが成長へつながっていて、高め合える仲間に恵まれて活動できている私は幸せ者なのかもしれません。より細かい確認項目のご質問やIS支援についてのご相談も承りますので、ぜひお気軽にこちらまでお問合せください。