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インサイドセールスへの期待、ストレートにお伝えします。

桐原 理有 | ナレッジワーク2024/6/23
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本記事では、20年強、前線で大手法人営業をやってきた私の経験を通じて、現在のインサイドセールスへ従事する方へ思うことを、できるだけストレートに書いてみました。中には気分を害する部分もあるかもしれませんが、我々が存在するのは「お客様の課題を解決すること」に尽きると思っています。その一点において、日々インサイドセールスの皆さんと、フィールドセールスの皆さんがコミュニケーションする中での、課題解決の一助になれば幸いです。

桐原 理有 株式会社ナレッジワーク。ワークスアプリケーションズにて、大手法人営業に14年間従事。その後、スタートアップ2社にて執行役員を務めた後、株式会社ナレッジワークに入社。フィールドセールス職に従事しながら、セールス・エンタープライズセールス勉強会を開催。企業からの依頼も多数あり、2022年は20社に実施。

前提


私の中で、インサイドセールスを認知したのは、スタートアップに転職してからですので、時間にすれば5年ほど前になります。それまでは自身でアポイントを取り、自身で商談して開拓し、クローズすると言う一気通貫のプロセスを長く続けていました。当然、アポイントを取るということや、その難しさを身を持って経験しています。また、この5年インサイドセールスを職務とする方から、商談を供給してもらう経験を重ね、その中で受注する機会も増えています。加えて、マネジメントとしてインサイドセールスの立ち上げ等も経験していますので、一通りの課題や苦難、またその素晴らしさも理解しているつもりです。

インサイドセールスの価値


インサイドセールスの価値は、セールスオペレーションの生産性の向上がまず挙げられると思います。さらには、見込み顧客とのリアルな1to1の初期接点としての価値があり、労働人口の減少に加えて、デジタルマーケティングの水準が上がっているからこそ、インサイドセールスの責任は重くなっているように感じています。

そのような中で、インサイドセールスの価値はアポイントにあるのではなく、顧客が抱える問題を表出させること(そのきっかけを作ること)に価値があると思っています。
また、デジタルマーケティングにより様々な情報が跋扈しており、情報が氾濫しているからこそ、買い手側はそのすべてを捉え、咀嚼して自社に合わせて理解しきれていません。だからこそ、1to1の情報提供、対話には強烈な価値があると思っています。

インサイドセールスへの期待


現在、大手企業向けに営業をしているものとして、インサイドセールスに期待することを書いてみたいと思います。※大手企業を意識して書いている部分がありますので、読む際はご注意ください。

1.アポイントの質にこだわり過ぎないで欲しい


各企業ごとに、インサイドセールスの役割は千差万別なので、一意には言えないと思いますが、特に大手企業を相手にする場合は、アポイントの質にこだわり過ぎてしまうことはリスクだと思っています。長年営業をしている中で、何年も対話して初めて相手の重い腰が動いて、検討を開始することもありました。

電話、メールだけのやりとりで、相手が全ての問題を伝えてくることは稀です。そしてそれは、見込み顧客の組織特性、カウンタパートの性格や役割、企業全体や市場の状況次第でも大きく変わってきます。ですので、相手によっては対話機会を作ることをゴールにして、次のフェーズを担う人に託すと言うパターンがあっても良いと思いますし、実際そのきっかけによって見込み顧客のニーズの顕在化に成功することもあります。

また、もしその顕在化したニーズが自社で解決できないのであれば、他社をご紹介することもありますし、その顕在化自体を喜んでいただけることもあります。その時、大事なのは、「ニーズの把握はできていませんが、ディスカッションする機会はいただけました!」の一言。これで十分です。そこで「見込みが弱い案件だと思われると困る」という気持ちで、商談を大きくみせたりする必要はまったくありません。

2.細かいニュアンスが欲しい


「ニーズの把握はできていません」の一言にも繋がりますが、トスアップをする際に重要なのは、ニュアンスです。電話、メールの中での対話内容が事実と異なるケースは意外と多いです。見込み顧客はメールや電話がきた際、回答を準備していることはほぼありません。つまり、「その場で考えながら回答している」ということも多いのです。

ですから、大事なのはそのニュアンスを伝えることなのです。「こちらからかなり質問をしてやっと答えていただけた」「最初の質問をした以降はずっと先方が話していた」「はい、という回答はもらえたが具体的な回答はもらえなかった」など、相手の反応を精緻に伝えることはとても価値があります。そこが見えていると、フィールドセールスとしては商談の「最初の1分」を変えることが可能になり、これが商談の効果を大きく変えるのです。

※録音できるツールを入れていたとしても、それを聞いておいてくれという業務フローは浸透するまでにかなり時間がかかります。スタート直後はほぼ聞いていない、くらいの認識で商談を引き継ぐことをおすすめします。

3.組織構造を意識して積極的に動かして欲しい


私が勤める環境で、こんなことがありました。
「キリさんが以前訪問した企業の部門長が異動されたので、次の方をご紹介いただきご挨拶の機会をいただきました!」
「利用ユーザーの隣の事業部ですが、詳細が把握できておらずまずは取り組みのご説明ということで商談を設定しました!」

こういった動きは、本当に助かります。優秀なフィールドセールスは、できることなら組織を幅広く抑えて攻略していきたいと考えます。ただ、どうしても時間がかかるため、幅を広げることにためらいがちなのも事実です。そこで、インサイドセールスの皆さんが顧客の組織構造を捉え、むしろ戦略本部の立場でフィールドセールスをコントロールするくらいの意欲で、動かしてもらいたいと思っています。

4.商談を学習して欲しい


フィールドセールス自身もそうですが、商談自体が一番の学びの場です。インサイドセールスの対話とはまた違った情報も多く、買い手の反応をよく見知ることができます。また、営業の振る舞いも把握でき、得意不得意も見えることで最適な商談のトスアップの仕方がわかると思います。事実、「課題の有無より経営層に」「まずは現場の方としっかり課題を合意してから進めたい」など、フィールドセールスにも得意な商談の型があります。

数値だけでは見えないものも多く、現地現物を学んでいく姿勢を持つことが重要で、とくに現代は恐ろしい速度で変化しています。いまの成果、情報、能力に満足せず、定期的に把握しにいく。この姿勢が成果を大きく変え、継続的に成果を出すことに繋がると思います。

5.フィールドセールスにもアポを取らせる設計にして欲しい


いつまでも口をあけて待っている小鳥のようにフィールドセールスを扱うとろくなことがありません。与えられることに慣れてしまうと、どうしても要望ばかりを言う人材に育ってしまいます。そして、フィールドセールスだからこそ取れるアポイントもあり、フィールドセールス自身がアポイントを取ることで、そこから見えてくるオペレーション上の改善点などを発見できることもあります。ですから、完全な分業体制にするのではなく、一時的に、もしくは特定領域の開拓を任せるなどして、定期的にインサイドセールスの業務を体感できる設計にすることをお勧めします。

6.新しいものを生み出して欲しい


当たり前だと言われてしまうかもしれませんが、インサイドセールスも、マーケ、フィールド、カスタマーサクセスと同様、プロフェッショナルの仕事です。どの仕事の登竜門でもなく、それぞれが違うケイパビリティが必要だと考えています。そこで重要なのは、自分で考え、行動し、新しいことを生み出すこと。様々な情報が溢れる中で、本に学び、人に学ぶことは大事ですが、歴史上、物事を進化させてきたのは、一種の飛び道具的なアプローチであったり、誰も考えもしなかったような行為です。これまでの固定概念に囚われず、常に常識を疑いながらこれまでになかった手法を考えて実践する。

例えば初回商談をインサイドセールスで実施する、マーケティングのイベントをインサイドセールス単独で実施するなどの代替や、インサイドセールスが介在しなくても済むようなプロセスの発明といったディスラプション的な発想です。自身の業務範囲に線を引くことなく、新しいものを生み出すことも仕事のひとつくらいに思っていてほしいです。そういった方が増えていくことで、フィールドセールスも進化していくと考えていますし、その起点になれる仕事だと心から思っています。

最後に


ここまで記載した内容は私の一例にしか過ぎず、きっかけです。例えばこの記事を営業部門長に共有し「自社でももっと深く議論したい」「普段は要望として出てこないものがもっとあるはずだ」など、皆さんの組織にあったものを見つけてほしいと思います。途中にも記載しましたが、読んで終わりでは大きく成果につなげることはできませんし、そういった組織内の改革の役割もインサイドセールスにはあると思っています。

私はずっとこの仕事をしているので、最初の機会を作ることの尊さを知っています。アポイントと言う壁の高さは、本当にそびえ立つほどのものです。それを日々形にしている役割は、ビジネスの根幹を支えていると思っています。これからも、切磋琢磨して、良いビジネスを生み出していきたいと思っています。最後までお読みいただきありがとうございました。そして日々の皆さんの勇気ある行動に心から御礼を申し上げます。

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