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Why you nowでは足りない。「Why you now. Why me」

大野裕太郎 | _KNOWLEDGE WORK2024/4/9
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本記事ではインサイドセールス従事者であれば聞いたことがあるであろう「Why you now」をエンタープライズBDRによりフィットする形で再定義したものを説明します。手紙やアウトバウンドコールなど「頑張っているけど上手くいかず、何をしたらよいかわからない」。そんな課題をお持ちの方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

大野裕太郎 株式会社ナレッジワーク所属。立命館大学卒業後、2019年に新卒で人材派遣会社に入社するも4ヵ月で転職を決意し、2019年12月TOKIUMに入社。インサイドセールスチーム配属後、イベントマーケティングやフィールドセールスの兼任を経てマーケティング部副部長として活動。2022年9月より新設されたインサイドセールス部部長に就任。2023年12月より現職。

本来の「Why you now」


本題に入る前に本来使われている「Why you now」について少し説明をします。シンプルに言うと「なぜ今、あなたに連絡をしたのか」です。先方の会社の状況や役回りをリサーチし、提案を聞くメリットや仮説をもとに内容を伝えるものです。

実際はメリットの具体として、仮説として出した課題に対する解決策を自身の会社のサービスでどのように解決するか、どのような会社で利用されているのかなどを伝えていきます。

「貴社には以前より強く関心を持っており、今回は貴社にとって有益な情報をお届け出来ると思い、ご連絡いたしました。」といった連絡は一見「Why you now」のように見えますが、企業の具体的な状況を理解しなくても送れるような内容なので、「Why you now」には該当しません。こういったマス向けのアプローチは効果が低い上に、誰彼構わずに連絡をするイメージを持たれ、信頼を毀損する可能性もあります。

本来の「Why you now」は、先方の会社の状況にあわせて困りごとの仮説を持ち、自分であればどのように解決できるかの根拠を持って伝えるものです。

例)
・貴社のIRにて〇〇事業に過去最高額の投資をされると拝見し、代理店営業経験者の採用が必要になると考えご連絡いたしました。弊社は営業経験者とのコネクションが多いエージェントのため、即戦力となりうる方をお繋ぎ出来ます。

・貴社のWebサイトを解析した結果、競合サイトよりキーワード順位が下がっており、改善をご検討されているのではと拝察しております。弊社はSEO対策に多くの実績があり、貴社と同業界の〇〇社、〇〇社ともお取引がございます。

上記のように、マス向けではなく、個別に連絡をしていることが伝わるような内容で伝えることがポイントです。

なぜ「why you now」が必要なのか


SNS、メディア、広告など、これだけ情報が溢れている現代において、人々は「今の自分にとって必要な情報か」を瞬時に判断しています。多くの情報の中から自分にとって必要な情報だけを選ぶため、大勢に当てはまるような汎用的な内容だと他の情報の中に埋もれてしまい、見向きもされません。

特にエンタープライズ企業のご担当者は、日々多くの情報を受け取っています。それは期待収益が大きいエンタープライズ企業と取引したいと考える企業は多数いるからです。エンタープライズBDRは、ご担当者がメール、電話、手紙、訪問などありとあらゆるアプローチを受けている中で、「今の自分にとって必要な情報」であると判断してもらえるような提案、アプローチを行う必要があります。

そしてエンタープライズ企業向けの施策は成果が出るまで時間がかかるため、有益な情報を提供し続けることも重要です。一度のアプローチで商談に繋がることはなかなかないため、企業のニーズをしっかりと捉えて情報提供を続けることで自社の名前やサービスを覚えてもらい、必要なタイミングで商談機会に繋がるということも珍しくありません。

本当に「Why you now」だけでいいのか


私はこれまで特に疑問を持たずに取り組んできましたし、それで正しいと思っていました。
ですがナレッジワークに転職し、本格的にエンタープライズ企業のBDRを行っていく中で「これ本当に意味があるのか?」と疑問を感じました。
前職の200人弱の会社で部長をしていた頃、何回か自分宛てに手紙が来た事もあるのですが、「良いタイミング」で「丁度考えていた課題に対する提案」でない限り正直返信などはしませんでした。むしろアウトバウンドコールや飛び込み営業で「この営業の人と話したいな」と感じた営業の方が「とりあえず時間を割こうかな」と感じていました。

こういった経験から「もしかすると自分と時間を割く理由を語る方が良いのでは?」と考えてたどり着いたのが「Why me」の要素です。

「Why me」の説明と実際の効果


言葉の通りに直訳すると「なぜ私が連絡をしたのか」ですが、ここでお伝えしたい意味としては「なぜ私(会社単位ではなく私個人)の話を聞いた方がいいのか」です。BtoBでは、マーケティングもインサイドセールスもお客様個人に興味を持つ、個人のKPIや課題を知ることが重要と言われていますが、私達個人のことを知っていただくことも同じくらい重要なのです。

ポイントの1つに「全て正直に書かなければいけない」があります。もちろん嘘はいけないのですが、そこに興味を持っていただけたとしても、その後の会話で嘘はすぐに伝わってしまうので逆に信頼を毀損することになるからです。

つまり、「自分を信頼していただく=語れるような知識や実績が必要」ということです。お客様に「この人の話を聞いてみたい」と思っていただけるような知識や経験はすぐに身につくものではありません。しかし、皆さんはこれまでに素晴らしい業界や、事業の中での経験があるはずです。そこに一度目を向けて考えていただきたいです。

とはいうものの、すぐには思いつかないという方もいらっしゃると思いますので、(まだ試行回数は少ないですが)私が実際に使ったWhy meを簡易的にいくつか記載します。効果としては下記全てで返信がもらえ、アポイントに繋げることが出来ています。

・私は前職でイベントマーケティングの責任者として活動しており、貴社事業紹介動画でのイベントマーケティング領域への取り組みについて非常に興味を持ちました。当該事業で発生しがちな課題についても理解しているつもりだからディスカッションしたい。

・前職でインサイドセールス部長をしており、マーケティングやフィールドセールスの経験もあるので規模感は違うかもしれませんが、今お困りであろうISの立ち上げについてはアドバイスできることがあると思います。

・貴社の扱っている領域については〇〇の背景から私自身にも知見があり、自分は△△な経験をもっていて、その立場で考える貴社中期経営課題へのアプローチを聞いてほしい。

・貴社の経営課題としてあげられている〇〇と同様の課題をもっていた△△という会社の事例について、自社の中で自分が一番詳しいので、解像度高くお話しすることができます。

このように、自身のこれまでの経験や知見を盛り込むことで「あなた自身」にお客様が興味を持ってくださる可能性があります。前述した通り、私はこの方法で何件もの返信、そして商談機会を獲得しています。

「Why me」を実現するために


Why meは「営業は顧客に伴走するパートナーである」という想いで、徹底した顧客視点で行うことが重要です。「自社サービスや事例について会社の誰よりも詳しくなる」や「お客様の業界の解像度をあげるために現場の方にヒアリングする」など、できることは山ほどあります。

経験や実績はすぐには身につかないかもしれませんが、自社や業界、お客様の業務、そして商材や事例については、努力さえすれば知識を習得することが可能です。

また、自分が連絡した理由を伝えるということは、初回のお打ち合わせは自分が対応する必要があります(もちろんフィールドセールス側と連携して同席で対応するということも可能です)。つまり、ここで得た機会を会社にとっての有効商談に繋げるためには、当然フィールドセールス以上に知識をキャッチアップする必要がありますし、フィールドセールスとしてのスキルも身に着ける必要があります。

正直、ここまでしなければ実現できないかもしれないWhy meをやる必要ある?と思うかもしれませんが、私の考えを最後に記載します。

さいごに


営業としてうれしい瞬間は人それぞれあると思いますが、その中にお客様から「あなただから話をきいた」と言われることは含まれているのではないでしょうか。

Why me自体は1つのテクニックですが、自分自身を武器にできるという意味ではとても効果的です。しかし、他のテクニックと比べて土台作りに時間がかかります。しかしながらその土台は誰にも真似できない、自分らしく誇らしいものになっていくと感じています。

特にインサイドセールスは、一定のスキルアップを終えると後は量の世界になりがちですが、Why meを駆使できるインサイドセールスはどこまでも質を高めることができます。そしてその土台は別の職種や役割にも繋げることができる土台です。

エンタープライズBDRの効果も上げ、自身のビジネスの土台も大きくすることができる「Why me」に是非取り組んでみてください。

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