声をコントロールする要素
まずはインサイドセールスにとって(もちろんフィールドセールスやCSMにも)重要な声の要素について理解を深めていきましょう。声は主に以下の3点に分解されます。
・トーン(高低/周波数/ボリューム)
・速さ(話速)
・距離感
声のコントロールをすることで、印象をつくることができます。「しっかりしたビジネスパーソンという印象を作り信頼を得る」「親しみやすい印象でお客様の課題を顕在化させる」「同じトーンや速さで違和感を作らない」など、声がお客様に与える影響と、そのメリットはとても大きいものです。
その中でもコールでは『トーンと速さ』。この2つが重要になってきますので、 本日はこのトーン、速さについて、そしてそれぞれにおけるキャラクターについて紹介していきますので、ぜひお読みいただき、実践に使うことで皆さんの業務を円滑に進めていってください。
※距離感は、たとえばオンラインセミナーで 大人数の前で話しているように聞かせるのか、1対1で話しているように聞かせるのかというようなときに利用します。
トーンとは
トーンにはいくつかの種類があり、今回は4つに分類してご紹介します。
①声自体の高低
声が高い ... 聞き取りやすい、元気、明るい
声が低い ... 聞き取りづらい、落ち着き、安心感
②抑揚の高低差
高低差が大きい ... 落ち着きがない、感情豊か
高低差が中程度 ... 落ち着き、淡々としている
高低差が小さい ... 感情が伝わりづらい、トークスクリプトなど読んでるとなりがち
③しゃべり方
口角が上がっている ... 明るく聞こえる
口角が下がっている ... 暗く、固く聞こえる
④音量ボリューム
声が大きい... 聞き取りやすい、自信がある、高圧的
声が小さい... 聞き取りづらい、自信がない、繊細
速度とは
話速とも言います。1秒6文字程度の速度がアナウンサーがニュースを読むときの速度と言われていて、1分間に直すと句読点なども加味して約300文字程度となります。これでは少しゆっくりに感じるかもしれませんが、これ以上詰め込むと早口のような印象になり、とくにインサイドセールス業務においてはお客様が聞き取りずらい速度となってしまいます。最近はCTIツールなどで話速の測定ができるものも増えてきましたので、ぜひ一度、ご自身がどの程度の速度、文字数なのかを計測してみることをおすすめします。
1秒間に7-8文字、1分間に400文字となると早口の部類ですが、 最近はYouTubeの1.25倍速などに慣れている方も増えてきたので7‐8文字程度でちょうどいいと感じる方もいます。お相手の方の年齢やタイプを想像して、最適な速度を意識することが必要です。
そして、もうひとつのポイイントですが、重要な言葉はゆっくりと話すこと。緩急もつけて話すとより効果的ですので、「ここは重要な機能」「この課題が重要」「これをとくに意識してほしい」ということがあれば、緩急を意識し、ゆっくり話してみください。
また、速度からは以下のような印象を与えます。
早い ... 若さ、せわしなさ、テキパキ感
遅い ... 余裕、まどろっこしさ、熱心さ
これらをうまく扱うこと、つまり「トーン × 速度 」で印象を作ることが可能です。
閑話(かんわ)
一日中通話をしていると声がかすれてきたりしますよね。これはインサイドセールスの皆さんなら一度は経験したことがあるのではないでしょうか?声は、喉、つまり声帯から出ています。声帯は粘膜&筋肉なので、朝何も準備せずに話し始めるのはのどを痛める原因になってしまいます。
通話の前に喉を白湯など暖かいもので潤し、小さな声で話して(可能であれば小さな声での発声練習がオススメ)ウォーミングアップをするだけでもずいぶんと楽になります。ちなみにウーロン茶やコーヒーなど油分を流してしまうものは声帯を乾燥させてしまうので、休憩時に接種することは止めませんが、常に飲みながら業務をするのはおすすめしません。
声帯を傷めないようにするためにも、朝は小さな声での発生練習をルーティンに加えてみても良いかもしれません。
まずは現状を知ろう
トーン、速度の理解が進んだら次はトレーニングですが、トレーニングの前に、まずは今どうやって聞こえているのか、録音をして聞いてみましょう。自分の声を聞くというのは慣れないかもしれませんが安心してください。30分も聞いていれば慣れてきます。
つい会話の内容が気になってしまうと思いますが、今回の目的はそこではありません。トーン、速度だけに注目して聞いてみてください。「思ったより早口だな」「何か自信なさそうに聞こえる」そんな気になるポイントが出てきたら、改善のチャンスです。以下のような具体的な改善策を自分なりに考えて実行してみましょう。
「思ったより早口だな」⇒「速度を6秒まで落としてみよう」
「暗く聞こえる気がする」⇒「口角を上げて話してみよう」「声のトーンを上げてみよう」
もし、自分ではわからない、イメージが持てない、という場合は周りのメンバーや上長の方に録音を聞いてもらってフィードバックをもらってみてください。自分では違和感を感じない部分も、他者が聞くと差分がわかりやすいこともあります。
※録音や分析機能のついたCTIなどを利用している場合はぜひ活用してください。例)MiiTelなど
どんな印象を相手に与えたいか
自分の現状がわかったら、次は相手にどのような印象を与えたいか考えてみましょう。そして、ギャップを考えどう改善するかイメージしてみましょう。
信頼感を与えたいとき
声のトーン:低めにする→安心感、落ちつきをいつもよりプラス
抑揚の高低差:中程度→普段高低差が大きいので、いつもより高低差を小さく意識する。
※抑揚が大きいと元気な印象となりますが、若く、幼いイメージにもなってしまいます。
ギャップを埋めよう
自身の話し方と実現したい話し方を認識できたら(=ギャップがわかったら)、ここからはトレーニングです。声は、口や舌の動き、腹筋※、そして声帯で出来ています。そしてそのすべては筋肉で出来ていますので、訓練すれば鍛えることが可能、つまりコントロールすることができるのです。
※話して鍛えられる腹筋は残念ながら一般的な腹筋運動では鍛えられません。
例えば口を「あ・い・う・え・お」と大きく開ける練習をするだけで口角を上げられるようになったり、いつもより高い、低い声で話すようにするだけで、高低差が安定したり、ゆっくりと話すことを行うだけで話速のコントロールが出来たりします。
オススメその1「鏡を見ながら話すトレーニング」
コールセンターなどで昔から使われていた手法です。きっちり口角が上がっているか確認しながら話すことで、口角を上げることを強く意識&改善できます。表情がそのまま言葉になって現れていきますので、知らず知らずのうちに口角を下げたままの話し方がデフォルトになっている場合は要注意です。気持ちでは明るいトーンで話しているつもりでも違う伝わり方をしている可能性があります。
オススメその2「ゆっくり聞き取りやすく話すトレーニング」
ゆっくりと大きく口をあけてトークスクリプトを読み上げるだけ。話速1秒3文字程度の速度で行いましょう。
ゆっくり話すというのは、口や舌、腹筋を使うのでなかなか難しいですが、滑らかにゆっくり話せるようになるまで繰り返し行うと、速度コントロールが容易になります。ゆっくり話すことで自然と滑舌もよくなりますので、お客様に伝わる確率も飛躍的に高まります。
こういったトレーニング方法はYouTubeなどでもたくさん公開されているので、目的に合わせて訓練してみてください。
利用用途・目的と効果
さて、ここからは「インサイドセールス業務でどんな効果があるのか」をご紹介していきます。。実際にチームで行った例や過去の経験からいくつかご紹介いたしますのでぜひ参考にしてみてください。
受付突破
例えば、受付から担当者へつないでほしいときは声のトーン低めで話すことを意識してください。これは声のトーンを落とすことで安心感を出し、信頼感を醸成することででつないでいい人物だと認識してもらう事が目的です。弊社では実践したメンバーの担当者接続率が向上した、という実績があります。
聞き返される回数を減らす
何度も聞き返されてしまう、そういった場合には以下を意識してください。
● ゆっくりとはなす
● 高低差を少なくして話す
● トーンを高めで話す
聞き返される場合、早口すぎて聞き取れない、抑揚がつきすぎて聞き取りづらい、声が低く聞き取りづらいといった理由が考えられます。まずはゆっくり話すことから試してみるのが良いでしょう。普段話速が8〜9文字だったメンバーが話速7文字まで落としたところ、なんと実施日当日から、聞き返される頻度が劇的に改善しました。
明るい印象を与える
なんだか録音を聞くと堅く暗く聞こえる、もっとはきはき明るく話したい。そんなときは以下を実践。
● 笑顔で口角をしっかりと上げる
● 声のトーンを少しだけ上げて話す
笑顔で話しているなと電話でも想像できる時ありますよね。それは、しっかり口角が上がっているからです。
口角を上げて話すと、それだけで明るく話しているように聞こえます。また口角を上げようとすると自然と口を大きく開けて話すようになり、ハキハキと話すようになります。明るくハキハキ話す方が聞き手にとって聞き取りやすく印象もよくなります。
番外編:姿勢を正す
電話中、どのような姿勢で話していますか?背中が丸まって、うつむきがちになったりしていませんか?その姿勢、すべて声に出てきています。通話中、相手が寝転がっていたり、椅子に大きくもたれかかっていたりしていると気が付くと思いますが、姿勢も同様です。体動、と言ったりもしますが、姿勢は声に出てきます。
自信がなさそうな声は背中が丸まった声、だるそうな声は頬杖をついた声、椅子に浅めに腰かけて、姿勢よく目線を下げない。これだけでも、印象はずいぶんと変わります。
まずは何からやればいいの?
効果が感じやすいのは以下の順番です。いきなりすべてを改善することはできませんので、1から順に実践していってください。
- 話速
- しゃべり方
- 抑揚の高低差
1.話速
話速は、6文字と8文字、どちらのペースでもトークスクリプトを読めるようにトレーニングしてみましょう。対話中、緩急をつけて話せることが大切です。重要な箇所は6文字で、簡単、定型的な言葉は8文字で相手の話速と合わせながらもコントロールできるように試してみましょう。チームで「トークスクリプト話速6秒選手権(トークスクリプトを6秒ペース近いスピードで読めた人が優勝)」という企画で楽しみながら実践することもおすすめです。
2.しゃべり方
口角を上げて、一日中笑顔で話す、それだけで声のトーンは上がります。やってみると、最初は頬が筋肉痛になると思います。それほど無意識に口角を下げて”楽な話し方”をしてしまっているのです。ですが、続けていけば1週間もすると慣れてきます。声の印象が大きく変わるので、是非今日から鏡をデスクにおいてチェックしてみてください。
3.抑揚の高低差
抑揚をつけるのは、歌でいうところのサビのイメージです。一番盛り上げたい(聞いてほしい箇所、強調したいセールスポイントなど)が抑揚を使って大きく出来ているか、淡々と冷静に説明をするところは抑揚も抑えられているかを確認してください。
抑揚は自分ではなかなかわかりづらいもの。まずは周りのメンバーに「こういう感じでやってみたんだけど、出来てるかな?伝わってるかな?」と相談してみましょう。抑揚がコントロールできるようになると最後まで飽きずに聞いてもらえるようになるので、セミナーなどでも転用可能なテクニックです。
最後に
声は、ひとりひとり違った楽器です。特に音域は簡単には拡張しません。人と比べず、自分の範囲内で少しずつ伸ばし、コントロールしていきましょう。インサイドセールスは声が武器にもなれば欠点にもなります。データベースやリスト、履歴やキープインタッチのような施策も重要ですが、意外と注力されていない話し方を工夫するだけで、飛躍的に数字が向上するかもしれません。
個人はもちろんですが、ぜひチーム全体で取り組んでください。効率が圧倒的に違います。SPACEやポストでも情報発信していますので、フォローしてくださると嬉しいです。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。