はじめに
本ウェビナーは株式会社immedio浜田様、株式会社Smapo様蔭山様より日本国内のみならず、米国の市場についても言及がされており、これからBDRに取り組む方、そしてすでにBDRに取り組まれている方向けの内容でした。
印象的だったのは「BDRの施策の豊富さ」です。CxOレターはかなり認知されてきましたが、それ以外にも多くの施策が存在し、特にエンタープライズ領域の開拓に成功している企業の実例からは多くの学びがありました。それでは早速ウェビナーの内容紹介に移っていきます。
BDRとは?そしてなぜいまBDRなのか。
ウェビナーはまず浜田さんのセッションからスタート。BDRの説明、そしてなぜいまBDRなのかについてのご説明がありました。BDRについての解説はこちらをご覧ください。
そしてなぜいまBDRのニーズが高まっているか、という部分については「SaaSの領域特化(例えば営業の商談特化のようなプロダクト)」や「Vertical SaaS」が台頭してきたことにより、小規模な顧客を多く獲得することでARRを担保することが難しく、より大きな企業郡、そしてエンタープライズ企業の開拓が必要になったため、とのことでした。
BDRの課題
前述の内容からBDRには大きな期待が寄せられています。先行している米国市場では、ターゲットとなる企業の担当者情報(メールアドレスや電話番号)を購買可能であるため、以下の図でもEmailでのアプローチが圧倒的となっています。
一方で日本では個人情報保護の観点から、対象者の情報を手に入れる方法が少なく、CxOレターを使ってアプローチすることが一般的になっています。そういった状況もあり、BDR課題のひとつとして「武器が少ない」と紹介されていました。
そして米国で2位にランクインしている手法が「イベント」です。これは浜田さん曰く「日本でも有効活用できる」とのことで、後述しますがSansan社でも活用されていました。そのためにもリードベースからアカウントベース、つまりABMの実践が必要になってくるため、続いてABMのご説明がありました。
Sansan社の事例
Sansan社ではSMB(小規模企業)からビジネス展開を開始し、現在では売上構成比の45%が1000名以上の企業からということで、ビジネスの転換に成功した企業として実例が紹介されていました。また、近年はエンタープライズ領域の成長性が高く、成長のエンジンとなっていることが伺えます。
また、浜田さんはエンタープライズ企業への導入ポイントとして以下をあげていました。
・部分導入、部門導入など小さく入れて大きく育てる(Land & Expand)
・導入後の成果、そこで得た人脈を活用して拡大する
・企業規模によってはグループ会社の担当を分ける
戦略的取り組みの第一歩はアカウントマップ
ではどのようにABMを始めていけば良いのか、という内容に移っていきます。ターゲット企業を選定し、実際のアプローチを始める際に必要になるのが、アカウントマップと言われる資料です。これは、組織図をベースに意思決定者、各部門の責任者、担当者の情報などを記載していきながら、誰が協力者なのか、反対意見をお持ちの方は誰なのかなどを整理していきます。
その中で特に重要なのがチャンピオン(定義は各社によって異なりますが、意思決定に関与できる、もしくは意思決定者に働き書けられる協力者)やコーチ(意思決定には関与できないが協力的な方)を見つけることが重要であるとおっしゃっていました。
また、重要人物の発見や十分な情報を得るには、最大手のエンタープライズ企業では50名程度の人物に接触しなければならないこともあるとのことで、ABMにおける重要なポイントに「接点数」があり、それはABMチームの評価指標にもなるという次の内容に進んでいきます。
米国のABMチームは「接点数」で評価される
ABMという取り組みの課題に「どうその成果を評価するのか」というものがあり、ここでも米国の事例を元にご紹介がありました。前述の通り、エンタープライズ企業の開拓には接点数が重要であり、それをKPIにするため、ABMチームの評価はMQL(マーケティング活動で獲得したリード)で評価することが多く、次いで実際の開拓企業数で評価すべきとのことでした。
そしてここからは、その接点を獲得するためのBDR施策の実例に入っていきます。
接点獲得① クローズドセミナー
まずは著名な人物(経営者、研究者、政治家など)を招き、エンタープライズ企業の役職者(主に部長職以上)を対象とした勉強会を実施するVIP限定セミナーです。役職者の方々は情報収集への欲求が強く、また実務課題に近いテーマ設定も検討するメリットがありそうです。
ご招待の仕方ですが、メールをお送りするよりも高級感のある招待状を実際の紙で用紙し、招待時点からセミナー、勉強会の高級感、上質なイメージを醸成することも重要です。
また、メリットは新規接点の獲得はもちろん、既存接点の強化にもつながるとのことで、まさにLand & Expandを実現できる施策だと感じました。
接点獲得② 交流イベント
自社主催のイベント、大型のカンファレンス自体がエンタープライズ企業の役員と接点を作る場として効果的ですが、さらにその効果を高めるポイントとして「キーノートセッションの最前列を予約席として設定、ご招待席とする」や「近隣のランチ会場を貸し切り交流の場として活用する」といった実例でした。
①でご紹介いただいたように役職者の方々は、新しい情報やトレンドに敏感であることに加えて、交流の場にも強い関心があると浜田さん。そのコミュニケーションのハブとしてランチ会場を活用することは、イベント参加自体を促す効果もあるとのことでした。
また、副次的な効果として、スポンサーを募ることも可能とのこと。大型のイベント、素晴らしい登壇者に役職者の集まる場所となれば確かにスポンサーの広告効果も高そうです。
ABMでのターゲット企業の範囲
米国の調査ではABMでのターゲット企業数は101-500社が多く、営業1名あたりに担当できる企業数は多くて数十社とのことでした。
また、ABMの運用に必要なツールについてのアンケート結果から、主にSFA/CRMとMAの活用で十分であり、追加のツールはその後の拡張性という判断で良いと浜田さんがおっしゃっていました。まずはSFA/CRMからはじめ、しっかりとした情報管理が徹底されてから次のツールを検討するのが良さそうです。
現実的な課題
SDRは無作為にリードを割り当てても問題ないため、複雑な割り当てルールを構築する必要はありませんが、BDRは「案件化の見込みが低くフォロー不要なもの」や「そもそも対応していけないリード」などが存在しているため自動化するにはかなり複雑なロジックを構築する必要があります。
その影響でリードの割り当てが遅れることや、そもそも対応できるインサイドセールスのリソース不足など、本来であれば見込みのある商談として設定できたものが失われてしまうリスクがあるとのことです。
加えて、浜田さんからは「米国のZoominfoではすべてのリードを90秒以内にフォローを徹底することで商談獲得率が大幅に向上した」という情報も共有されました。
そういった課題を解決するツールとして浜田さんは「immedio」を展開されています。もしリソース不足やリードの対応遅れなどの課題をお持ちの方はお問い合わせいただくと良いかもしれません。
ここまでは浜田さんからBDRの基本や、米国市場からみた課題などについてのご紹介でした。そしてここからはSampo蔭山さんのパートに移ります。
ABMの獲得接点はマルチチャンネル化している
ABMの施策は、ここまで浜田さんからご説明があったように多様化しています。それはお客様の状況によって必要な支援、欲しい情報や最適な手法が異なるためで、ハイタッチ(少人数での勉強会やゴルフイベントなど)とテックタッチ(お客様が自身で取得、活用できる情報やコンテンツ)などを組み合わせることが重要と蔭山さんは仰っていました。
ABMからABXへの変化
手法が複雑化したことで一貫した顧客体験を提供することが重要になったことで、売り手目線でのABMから、買い手に最適な体験を提供するABX(アカウントベースドエクスペリエンス)へ変化していく必要があるとのこと。
それが必要な理由のひとつに「購買の意思決定には感情的な要素」があり、そこに訴えかける、それを加味した設計が必要になっている。以下の図の通り、価格や機能はベースとして存在しているものの、担当との関係性やコミットメント、ツールやサービス導入によるネットワーキングや将来性も意思決定の重要な要素になっている点にも目を向けるべきだと仰っていました。
感情に配慮したABMでの接点作り①
海外では一般的になっている贈り物とアプローチを組み合わせた方法が紹介されていました。まずは以下のようにTier付け(期待収益などで対応優先度や投資コストを設定する方法)を行い、それぞれに対応する手法を設定する。
・T1向け:手書きメッセージや特別なギフトを送付→メール→架電
・T2向け:簡単なノベルティを送付→架電
・T3向け:コーヒー券を送付→LinkedInで連絡
※米国はLinkedInやZoominfoで個人情報がわかるのでパーソナライズ(個人に最適な体験を提供)する
感情に配慮したABMでの接点作り②
イベントやウェビナーでのフォローにも贈り物が有効であるとのことでした。イベント参加者に御礼メールをただお送りするのではなく、ギフト付きメールを送付し、それに合わせてフォローコールを行うことで、ギフトの受理率が63%、商談機会創出は18%と一般的なイベントリードに比べて圧倒的に高い成果につながる事例でした。
顧客の感情に配慮する、体験を大切にすることで成果につながっていることもあり、コーポレートギフト市場は2025年には42兆円に達し、これまで調査対象の企業の50%が継続利用、利用頻度を増やすと回答したとのことです。もしまだこういった施策を実行したことのない企業は、一度試してみても良いのかもしれません。
ご参考までに、Smapo社が提供しているお手紙・メッセージカードや贈り物が簡単に送付できるサービスである SendWOW をご紹介させていただきますので、気になる方はぜひお問い合わせしてみてください。
Q&A
・取得できる接点情報が限られる中、米国での新規開拓事例は?
ー米国ではLinkedIn Sales Navigatorを使っていることが多い印象。日本だとFacebookになると思う。
ーINITIALを使うとを利用することで経営者のFaceBookアカウントを知ることができる。
ーただし、体験は重要なので無作為なアプローチには注意してほしい。
・クローズドイベントやゴルフコンペの評価はどのように測っていますか?
ー単体での計算は難しい。ただリード単価を考えるとかなり割安だと思う。エンプラ役職者のリード獲得単価は高額。
ー協賛でも一部コスト回収ができるので、まずはそういったイベントからはじめて、ゴルフなどに展開していくのが良いのでは。
・SansanのBDRのKPIは?
ー(私がいた頃は)商談数、有効商談、創出した金額、見込み期待売上などの要素があり、どれが評価に入るかや比率は時期によって変わっていた
ー四半期から半期くらいのスパンで評価していく。
ーただ当時の話なので現在は不明。そういった前提として聞いてほしい。
まとめ
今回のウェビナーで感じたことは「手段の多様化するのはそれぞれのお客様に最適化する必要があるから」ということです。蔭山さんからご紹介のチャートにもありましたが、意思決定にはその過程での体験が重要であり、そこがうまく設計できれば自然に成果につなげることができるというのは、言われてみれば当たり前ですが実現できている企業は多くはないのでないでしょうか。
また、蔭山さん、浜田さんは普段からTwitterで情報発信をされているので、ぜひフォローしてみてください。