はじめに
BtoBセールスに関わる方々の中では、エンタープライズ開拓施策としてレター(CxOレター)を活用することは一般的だと思います。私自身も、これまでエンタープライズ開拓の際にはレター施策を積極的に取り入れてきましたし、様々な取り組みを自ら考え、細かく検証してきました。
そのために外部の記事などを見て勉強することもありましたが、ほとんどの記事は基礎編のようなTipsしかのっておらず、なかなか参考になりませんでした。今回は、レター活用中級編として、「圧倒的に成果を出すために」という視点で、私が行なってきたことを紹介できればと考えています。
※上級編は別途また公開しますので、ぜひIS+に会員登録をしてお待ち下さい。
何故レターは成果に繋がらないか?
本題に入る前に、「なぜレター施策が成果につながらないのか」を考えていきます。上記で紹介した通り、レターを実施したことがあるという方は多くいらっしゃいます。この記事を読んでいる皆様も「うちでもやったことある」と思う方も多いと思います。
しかし、成果が出なかったという声が多いのは一体何故でしょうか?まずは、考えられる要因を整理します。
要因①レターの鮮度を意識していない
レターは鮮度が重要です。例えば、展示会に出展をしたとして、獲得したリード(名刺)に対して、2〜3週間放置してアプローチをする、という企業はほぼないと思います。レターもそれと全く同じです。
私の感覚ですと、レターの鮮度は到達日から、もっても5営業日です。レターを受け取っても、5営業日ほど経てば、記憶に残らないどころか、レターそのものが破棄されてしまいます。
よく失敗しているなと思うケースは、レターを1000通ほど一括で大量送付しているパターンです。送付数が多いため、全ての企業へ後追いするには一定の期間を要してしまいます。追客期間が長期化することで、レター送付の効果を薄めてしまっています。
要因②対象の特定(キーパーソンリサーチ)が不十分
レターを送る際は、まず対象人物のリサーチからスタートします。これは、手紙を送付するうえで宛名が必要ということもありますが、「Why you」というCxOレターに必須の要素を盛り込むためにも必要なものです。
そのため、他社から情報を購入したり、専門的なサービスを利用する、もしくはWeb検索などをして調べることで対象を特定していきますが、ここが不十分であるケースが散見されます。2つの要素にわけてご説明しますので、自社で実施している内容を思い浮かべながら読んでみてください。
1.正しい人物にアプローチしていない
例えば、販売する製品がセキュリティ関連のサービスの場合、基本的にはCIOや、情報システム・セキュリティ部門などが対象になります。しかし、キーパーソンをリサーチする中で、企業ホームページ、公開記事や日経新聞、Xなどのあらゆる情報を駆使しても、全ての企業でアカウントを見つけることは困難です。それは人事情報を公開していない企業も一定数存在するからです。
そんな中で、よくやってしまいがちなのは「とりあえず代表取締役に送ろう」「とりあえず取締役に送ってみよう」「情報システム部 責任者様へで送ってみよう」という安易なやり方です。これは、アプローチしたい人が曖昧な状態ですし、それでは成果は絶対に出ません。
受け取った方からすると「なんで自分に?」となります。“Why you ”を無視したコミュニケーションですので、高い成果は期待できません。
ひとつ例を挙げますと、以前、DX関連の商材を【DX部門】向けにレターを送る支援をしていました。毎月15件ほど取得できていた商談が、リストを広げていくうちに該当するDX部門が見つかりにくくなったため、クライアントの意向で「代表取締役」、そして「取締役」へと宛先を変更して送付を行なった結果、なんと商談獲得数は月0〜1件まで激減してしまったことがあります。やはり、重要なのは正しい人物にアプローチすることなのです。
2.鮮度が古い情報を活用している
キーパーソン情報を可視化するサービスや自社で過去にアプローチした結果などで対象を具体化しますが、大企業は年に2回(主に4月・10月)は必ず人事異動が発生します。しかし、過去に入手、作成した自社のデータをそのまま活用している方が多くいます。※実際弊社にも、旧社名での手紙、旧役職での手紙がたくさん届きます。
ですから、レターを送付する際は以下の点に注意する必要があります。
①送付する人物情報は最新か?
②リスト作成から手紙を送付する期間に人事異動が発生しないか?
③CRMに記載されている情報や外部データベースをそのまま信用していないか?
要因③一度のアプローチで諦めている
実は、これが最も多い失敗要因で、「レターを活用して成果が出ない」という方の大半は、この状態です。レターを送る中で、「何度も同じキーパーソンに送り続ける」ということにトライしている方はどのくらいいますでしょうか?おそらくほんの一握りだと思います。
この手の失敗は、メールマーケティングの話に置き換えると理解が進みます。メールを一度だけしか送らない、かつ、その一度で「大量の商談獲得ができた」ということはほとんどないと思います。むしろ、定期的にお送りする中で、少しずつセミナー参加や資料ダウンロードなどが積み重なり、そこから商談が生まれていくという方が一般的です。
また、その時々のコンテンツに興味を持つかは受け手次第です。もしすると、同じコンテンツでもタイミングが違うだけで結果が変わることもあります。そのため、仮に1,000社のアカウントにメールでアプローチをするとしても、何度も何度もコンテンツやタイミングを変えてアプローチをして、リスト内での転換率を高める工夫をすると思います。
レターに置き換えても同じなのです。たった一回レターを送って、どの程度の人に見られますでしょうか?手書きにする、資料を同梱するなどの工夫はもちろんすると思いますが、興味関心のタイミングもその時々次第です。
ですので、メールマーケティングと同じく、一回送って成果が出なければ諦める。また気が向いたタイミングで手紙を送るところから始める、という手法そのものが本当に勿体ないのです。繰り返しになりますが、一回送るだけでレターの成果を判断するということには、猛反対です。
しかし、「手紙をわざわざ書く→送る、リストを管理する」というのはとても面倒であり、そのため、なかなか手が付けられないという方が多いと感じています。
成果が出る仕組みとは(中級編)
これまで様々な課題に一部触れてきましたが、ではどのような点を意識すれば成果が出るのか?ポイントを共有していきます。
レターの鮮度を意識した送付
失敗談でも説明しましたが、鮮度は獲得数に大いに影響します。弊社では、鮮度を維持するために送る通数は最小限にし、小刻みで送付するということをとても大切にしています。
例えば、1,000通を1,000人に送りたいと考えていても、面倒ですが約2-3か月かけて以下のように送付します。この頻度と通数ですと、追客期間を考慮してもレターの鮮度を維持することが可能です。※もちろんIS部隊が大量に在籍している場合はこの限りではありません。重要なのは「5営業日以内」に「確実」に追客できる体制である、ということです。
1回目発送(1週目):100通送付
2回目発送(2週目):100通送付
3回目発送(3週目):100通送付
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10回目発送(10週目):100通送付
配送スケジュールの途中でトラブル(マーケリードの大量流入、大手向けのイベント、担当営業チームの事情、など)によって配送頻度や計画を変更することもありますので、対応できる体制を構築しておく必要があります。
キーパーソンが見つからない=送らない
とても当たり前ですが、大事な観点です。例えば、DX部門を管掌するアカウントにアプローチをしたいとします。もちろん、全ての会社でキーマンを見つけることは容易ではありません。
しかし、そんな時でも無理に対象を広げず、勇気をもって、「絞る=リストから外し、いまは送らない」という選択を取ってみてください。失敗談にも書きましたが、管掌範囲が不明な【代表取締役】【取締役】【○○責任者】などには無理して送る必要はありません。送っても効果がありませんし、むしろ逆効果になることさえあります。
ここはぐっとこらえて次のタイミングを待ちましょう。インタビュー記事がでるかもしれませんし、他のアプローチからキーパーソンが発覚することもあります。なにより、大手企業では年に2回の大きな人事異動があります。そこで、担当役員が新たに任命されることもあれば、兼務となることもあります。大手企業は社数が限られていますので、不用意なアプローチで先方の心象を悪くすることは、企業全体にとって大きな損失となります。
同じアカウントに何度もレターを送付する
レターにおいてもメールマーケティングの概念は存在すると先述しました。大事なのは、一度で諦めずに(一度の送付で成果が出ると盲信せずに)、何度も送る事なのです(顧客体験をそぐわない範囲で)。
ご参考までに、私が実践するレターのイメージは以下です。
まず、キーパーソン情報を見つけた後は、そのアカウントの管掌範囲を調べます。その上で、基本的に6-12か月スパンで、ターゲットの興味を引きそうなシナリオ計画を立てます。そして、それらを間をあけて、小刻みに送付をしていきます。もちろん、1回目送付時点で商談化に至ることもありますが、多くはそうではありません。
そのため、じっくりアプローチをしていくイメージです。大事なのは何度も言いますが、「送りっぱなりにしないこと」と「アプローチ計画を立てること」なのです。
これまでご説明してきたポイントを実践した成果を一部ご紹介します。
直近、弊社でセキュリティ系プロダクトの新規開拓支援として、レター運用をさせていただいております。ターゲットは、従業員数2,000名以上の企業。アプローチするのは情報システム管掌役員(CIO)という設定です。細かく人物情報を調べ、不要なアプローチはせず、コンスタントに丁寧なアプローチを実行した結果、以下のような成果に至っています。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。内容についてはいかがでしたでしょうか?CxOレターの基本から、一歩進んだ内容を共有させていただきました。ご覧いただきました通り、成果を出すためにはとても手間がかかります。しかし、CxOレターの対象となるのは、その多くが大手企業であり、決して「効率」を重視すべきアカウントではありませんし、手間暇を惜しんで効率化という名の「数を追ったアプローチ」をしても、商談獲得が進むアカウントでもありません。
一方で「必ず一度のアプローチで商談を獲得しなければいけない」というルールもありませんが、どうしても「一度でだめなら諦める」という考えから抜け出せない方がいらっしゃいます。そんなときはぜひ一度こちらから弊社にご相談ください。まずは皆さんといっしょに最適な方法を考えるところからはじめてみたいと思います。
レター施策は効果がある一方でとても手間がかかります。それは、自社でやる場合でも、我々のようなベンダーに発注いただく場合でも同じです。そして、ABMに代表されるようなBDRの動きは簡単なものではありません。今回のような記事を公開することで、苦戦されている皆さんの一助になれば幸いです。お読みいただきまして、ありがとうございました。今後も皆様のお役に立てる記事を寄稿して行きます。
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