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目標達成への苦難の道のり、改革の裏側を大公開

冨田 貴徳 | SALES ROBOTICS2024/1/10
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本記事は、インサイドセールスが本当の意味でその価値を発揮し、営業組織全体の目標達成に貢献するまでの苦難と道のりを語ったものです。インサイドセールスに従事しているが自身の活動に満足していない方、組織に課題をお持ちの方に是非ご覧いただきたいと思います。

冨田 貴徳 SALES ROBOTICS株式会社 執行役員COO。2021年にSALES ROBOTICS株式会社入社、執行役員CMO/CSOに就任。 現在は、COOとしてインサイドセールス事業と新規事業を管掌。BtoB SaaSキャリア12年、専門は事業開発マーケター。Inside Sales Hubコミュニティオーナー、2023年Salesforceインサイドセールス分科会のリーダーを務める。

本当にあったISvsFSの課題


商談の供給数は足りているものの、質が悪く受注数が一向に伸びない。これはおそらくどの営業組織でも起こりがちな問題ではないでしょうか。具体的には、インサイドセールス(以下、IS)とフィールドセールス(以下、FS)の活動やKPIなどの指標が連動していないことで発生する問題で、結果としてKGI(売上目標など)が達成されず、その原因追求の過程で組織間の衝突が発生します。

こういった問題を経て、それぞれの組織に対して責任を押し付けるようになり、徐々に対立構造が生まれていきます。様々な組織で発生している問題を紐解いていくと、以下の4つの要因に分解することができます。

要因①:部門間の優先順位の擦り合わせができていない
組織全体でリード優先順位の定義が統一されておらず、本来優先順位を低くすべきである検討確度の低い見込み顧客や、想定LTV(想定される生涯売上)が低い見込み顧客にアプローチしてしまっている。

要因②:商談化の条件が不適当である
商談化の設定条件が甘い、もしくは設定した商談化の条件が守られず、ニーズが合っていない見込み顧客や、長期検討でまだ導入予定のない企業担当者との商談を設定してしまう。

要因➂:引き渡し要件が不明瞭、もしくは不十分である
有効リードや有効商談の認定条件が不明確であり、組織として統一されていない。結果として、次工程への引き継ぎ時に品質が担保されず、成果にバラつきがでることで前工程への不信感が高まる。

要因④:引き渡した商談を振り返っていない
FS担当者からの商談フィードバックを得られておらず、引き渡したした商談が適切だったのか確かめられていないことで改善が図れない。KPIやKGIが一貫した設計になっておらず、ISのゴールがFSの求めているものとズレていた場合に改修できていなかった。

これらの要因からISとFSの間に溝が生まれ両者の不満を生むだけではなく、目標が達成できないということに繋がっていました。ちなみに、課題に対しての対策を行う前と行った後のデータを比較すると、以下のように大きく改善することができました。



ISの人数は2/3に減少しましたが、受注率は3倍以上に改善し、受注件数も2.5倍に増加しました。もちろんリード数は増加していますが、少ないISで対応するためにターゲットや優先順位付けなどを行い対応しました。上記の改善結果を生むために取り組んだことは以下となります。

解決策①:ターゲットとするリードの定義をTierで設計しアプローチ条件を変更
解決策②:フェーズ定義を見直し、コミュニケーションプランを変更
解決策③:商談化条件(トスアップ条件)の見直し
解決策④:バディ制度を導入してKGI・KPIを共通目標にし評価まで落とす

次の章で、解決策をどのように実行していったのかを解説していきます。

課題に対する打ち手


それでは4つ打ち手をどのように実行したのか順を追って解説します。

1.ターゲットとするリードの定義をTierで設計しアプローチ条件を変更
株式会社ユーザベースが提供するFORCASを活用し市場分析から自社が狙うべきポジションを明確化していきました。ここではTierと呼ばれるターゲットの属性を階層別に分け優先度を決めるという手法を用いています。※図表参照



営業組織として狙うべきターゲット群の優先度を可視化することで、少ない戦力でいま注力すべきターゲットへのアプローチに集中することができるようになりました。さらに、SalesforceダッシュボードでTier別、レイヤ別ー、課題別など様々な軸を掛け合わせ、個人毎のデイリーパフォーマンスをモニタリングしています。

これにより、漠然としていたターゲットがさらに細かいマス目でメッシュ化して捉えられるようになるため、得意・不得意な領域の濃淡が明確になります。教育や育成もどの箇所に投資するべきかが判断つきやすくなり改善に繋がりました。




2.フェーズ定義を見直し、コミュニケーションプランを変更
続いて、見込み顧客の状態に合わせたフェーズを分類し、それに合わせたコミュニケーションプランを設計しました。




特に、ISが対応するリード群をHot・Warm・Coldに分解し、見込み顧客の状態と課題の顕在化度合いを図ることで、ナーチャリングを意識した活動を行えるようになりました。これらのフェーズを分けず、やみくもにアポイント獲得を狙ってしまうと、営業を疲弊させてしまうだけの無駄なアポに繋がるリスクが高まります。よって、フェーズ定義を前に進めるためのコミュニケーションプランを、顧客育成の観点から実施できる環境づくりを行いました。

その結果として、単純なアポイント獲得のための架電からナーチャリングを意識した活動に変化させることに成功し、パイプライン管理の理解を深めたことで、メンバー自身が今月の見込み把握や、来月に向けた仕込みの設計まで思考できるようになりました。
また、各フェーズごとの数字をトッププレイヤーと比較することでメンバー自身で苦手部分を把握し、自発的な改善施策を練るようになり、特定期間内での顧客とのタッチ回数を増やすことにも繋がり新規リードからの獲得だけではなく、保有リードからの獲得も増加しました。


3.商談化条件の見直し
売り手思考から買い手思考への抜本的改革を実施しました。それまでは外注ニーズと検討時期だけで判断をしていた条件を、見込み顧客の課題起点に組みなおすことで、今会うべき見込み顧客とのアポイント設定に拘ることができるようになりました。加えて、条件を買い手思考に変えたことで、ISのヒアリングの質も向上し、見込み顧客の本当に困っている部分がどこにあるのか、それを把握しようとする姿勢に変化したことも大きな変化です。




4.バディ制度を導入してKPI・KGIを共通目標にし評価まで落とす
営業を分業化している組織でありがちな、マーケティング組織はリード獲得数を追い、インサイドセールスはアポイント獲得数、セールスは受注数といった漠然とした目標ではなく、各組織の目標が正しく連動している状態をつくるためのバディ制度を導入しました。①メインKPI ②メインKGI ③共通KGIを設定し、各組織の達成状況が組織全体の達成状況にどう繋がっているかを可視化し評価しました。これにより部門間の連携が活発化し、組織全体の意識改革とチーム力の向上に繋げることができました。

ポイント
・とにかくアポイント数を重視 → 課題解決できるアポイントの創出に変化
・アポイント獲得のための個人戦 → チーム戦でのスクラム化

取り組みに不可欠なテクノロジーの活用


ここまで解決策の紹介をしてきましたが、これらの取り組みを行ううえでツールの活用は不可欠です。企業のターゲティングを支援してくれるFORCASや事前準備の精度向上を支援してくれるFORCAS Sales、精度をモニタリングするためのMiiTel(*)やMiiTel for Zoom(*)などの、ツールを駆使した改善活動が効果的です。

参考)当社では以下のように業界×シチュエーション別の音声データを蓄積しており、いつでも閲覧可能な状態にしています。




その他にも多くのツールを使っていますが、ISこと多くのテクノロジーを積極的に採用すべきです。それは営業組織全体のオペレーションを担う部門であり、テクノロジーの活用による業務改善効果が非常に高いためです。

(*)株式会社RevCommが提供する音声解析システム(CTI)、zoomと連携した商談解析ツール

まとめ


改めて大切なことを整理すると、買い手の状態変化に合わせた営業プロセスを描くことが非常に重要です。逆に、売り手目線に偏った営業プロセスは顧客体験を損ないます。

なぜなら、リードとはまだプロダクトに興味がない状態であり、情報交換を理由にした強引なアポ取りは不快な気持ちを抱かせ、求めていない提案を受けることは困惑と、自社を選ばない理由を余計に創り出すだけだからです。

興味がない状態をマイナスからのスタートであると自覚し、いきなりプラスの状態に持っていくよりもまずはインサイドセールスとの会話を通して、フラットな状態を目指すことが重要です。




そのために、継続的なコミュニケーションを取り続けられるための基準や、プラン作りがポイントになります。買い手の状態変化に注目して自社の営業プロセスを改革することで、営業組織全体の生産性向上に繋がるのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。もし同じようなお悩みをお持ちの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ弊社にお問い合わせください。課題解決のお手伝いをさせていただきます。お問い合わせはこちらから。

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