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AI時代に求められるCLEARな資料の作り方

渡 雄太2024/4/11
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企業としてお客様に提供するコンテンツの質が、そのまま商談の質に直結するといっても過言ではない現代において、インサイドセールスにもコンテンツ作成、資料作成の能力が求められています。では質の高い資料とはどのような観点で作成されるのか、本記事ではそこに焦点を当て、順を追って解説していきますのでぜひご覧ください。

株式会社wib 代表取締役。東北大学経済学部卒業。双日株式会社を経て、株式会社ユニラボ(現・PRONI)取締役、株式会社キャスター執行役員などを歴任。2023年以降は自身が立ち上げた株式会社wibにて、資料作成サービス「スゴシリョ」、インサイドセールス代行「スゴアポ」などのスゴスギシリーズを展開( sugosugi.jp)。東北大学 スタートアップ事業化センター 特任准教授(客員)、経済産業大臣登録 中小企業診断士 としても活動。プライベートでは3児の父。

はじめに


近年の生成AIの存在はあらゆる業種で破壊的イノベーションを起こしつつあります。それは資料作成やデザインの領域においても例外ではなく、次々にあらゆるサービスがAI化しています。この変化によって今まで人間が担っていた仕事やポジションは、AIによって奪われてしまうのでは?と感じる方もいるかもしれません。ですが、実際にはそんなことはないと考えています。

資料作成の分野において、生成AIは指示された内容をデザインに落とし込む領域まで発達しました。ただ、伝えたいことがより伝わりやすい資料構成にしたり、目的に応じたストーリーを考えたりするなど、まだまだ人間でなければ考えられない領域もあります。AI時代だからこそ伝えたいことを伝える「構成力」が非常に重要になってくるのです。

AI時代に求められる「構成力」とは?


前述のとおり生成AIの存在によって、構成案と補足文章があればAIが自動でデザインをしてくれるようになりました。世の中にはGamma / Canva / SlideAI / Tomeなど、生成AIを活用したデザインツールがすでに多く存在しています。
 
●Gamma
議事録や構成案の文章を入れ込むだけで1分程度で資料を作成。
イメージも自動でいれてくれる。
 
●Slide AI
GoogleスライドやPowerPointの拡張機能。
文章からスライドを作成してくれる。
 

生成AIのデザインは人間の「構成力」に依存する


生成AIの登場によって働き手に求められる能力が大きく変わりました。以前は「ライティング力」や「デザイン力」など見た目やレイアウトに関する表現力が求められていましたが、現在では、資料作成における企画〜ディレクションにおいて「どんな構成やストーリーにするか」という「構成力」が最も働き手に求められる能力となりました。
 
●デザイン重視
見た目やレイアウトを重視
デザイナー含む個人によって価値の変動が大きく、再現性が出しづらい
 
●構成重視
読み手のアクションを最善に見据え、資料の構成やストーリーを重視
結果に直結する構成を考えることができる
 
では現代に求められる「資料構成力」を鍛えるためにはどのようなプロセスを歩めばいいのでしょうか?それには構成を考える“型”を身につけることが一番の近道となります。
フレームワークを反復練習し、アイデアをストーリーへ落とし込めるようになると表現の幅が大きく広がります。
 
「守破離(しゅはり)」とは、学ぶ姿勢や順序、成長する過程や流れを表した言葉ですが、これを資料作成に当てはめると下記のようになります。


守:型を守る 
フレームワークを学び忠実に再現することによって型を身につける
 
破:型を破る
フレームワークの一部を少し工夫することによって表現の幅を増やす
 
離:型を離れる
独自のフレームワークを作りオリジナリティの高い再現性を作り出す
 
「資料構成力」を鍛えるためにはまず「守:型(フレームワーク)を守る」ことで、伝わるために必要な基本的な考え方・表現方法を学び、その後型から離れ越えていくことで独自の表現力を磨いていくことができるのです。
 

「構成力」を高めるCLEARの法則


スゴシリョは年間100本以上の資料制作実績があります。様々な種類の資料を作成していくなかで、「構成力」を高めるための共通項を見出し、再現性の高いフレームワークとして作成しました。それが「CLEARの法則」です。CLEARの法則は「伝わる資料」の"構成力"を高めるための大切な要素で構成されています。


C:Context -読者の背景を捕らえよ-


資料作成においてターゲットを捉える際に、ペルソナ像だけでは情報は足りません。読み手はなぜ読んでくれるのか、何を求めているのか、今どんな状況の人が読んでくれるのか、細かく読者の背景情報を捉えることが大切です。

ターゲットは普通すぎず、狭すぎず
伝わる資料にするためには、読み手の「背景(コンテキスト)」に合わせた資料作成を行うことが重要です。読み手がどんな状況でどんな課題を持ち、なにを解決したいかを具体化することで、資料の構成に納得性を持たせることが可能となります。
 
一方で、下記のような場合は読み手に伝わる資料になっていない可能性が高いので注意が必要です。
 
●ターゲットがブレている
伝えたいことを詰め込みたいが故に、ターゲット像・ペルソナ像が複数存在してしまうことがあります。結果的に誰にどんなメッセージを届けたいのかがブレてしまい、一貫性がない資料ができあがってしまいます。
 
●ターゲットが普通すぎる
想定したターゲット像・ペルソナ像の内容が広く一般的になってしまうことがよくあります。一般用語や一時的な情報を羅列してしまい、読了感や納得感が薄い資料構成になってしまいます。
 
●専門的すぎる
専門性の高い資料を目指すあまり専門的すぎる内容になってしまうことがあります。特定の役職役割の人にしか理解できない資料になり拡販性の低い資料になってしまいます。
 

L:Logic -モレなく、ダブりなく-


資料ページ数が増えてくると、今何を伝えているのか、メッセージ性に矛盾が生じてしまうものです。常に一定のメッセージをもれなくダブりなく論理的に伝えることが資料作成においては大切です。

構成段階でMECEかつロジカルな設計を意識
資料構成は分かりやすさと納得度の高さが鍵となります。そのため課題に対して解決策をロジカルに説明することで、資料の納得度を高めることができるようになります。ロジックツリーやMECEなどを意識した構成を構想段階で設計しておくことで、資料作成が手戻りなく伝わりやすい文章となります。
 
Logicにおいても、下記のような場合は読み手に伝わる資料になっていない可能性が高いので注意が必要です。
 
●ロジックが浅すぎる
メッセージをシンプルにすることを意識するあまり、メッセージ内容が薄くなってしまうことがよくあります。メッセージに根拠づけや論理構造を整理し、読み手に納得感や読了感を与えることを意識することが重要です。
 
●ロジックが主観的すぎる
伝えたい内容が作り手や特定の人や企業にしか伝わらないような内容になってしまうことがあります。誰がみても納得度を高められるよう読み手の状況を踏まえてロジカルに構成案を作り込む必要があります。
 
●MECEが破綻している
資料のページ数の増加に伴い伝えたい内容に抜けや漏れが発生してしまうことがよくあります。常に全体と各ページで伝えたいことに矛盾が発生していないかを確認する作業が必要となります。
 

E:Evidence -机上の空論になるな-


どれだけ自信のある内容であっても、論拠に乏しければ机上の空論となってしまいますが、常に伝えたいことの裏側には調査情報や論理性を支える根拠を持つことによってメッセージの納得性と信頼性を高めることが可能となります。具体的には調査情報など、数字や事例を用いることで客観的な情報を読み手に伝えることができます。レポート型の資料などでは独自調査を実施することで自社の意見を伝えることもできます。
 
Evidenceでは下記のような場合は読み手に伝わる資料になっていない可能性が高いので注意が必要です。
 
●エビデンスが少なすぎる
ロジカルにメッセージを詰め込んだとしても、エビデンスとなる情報が少なすぎることがよくあります。事例やチェックシートなどその資料でしか得られない情報を盛り込むことで、資料の読了感が高まります。
 
●主観的なデータが多すぎる
データを入れ込むことを意識しすぎ、データの捉え方が人によって変わるものを入れてしまうことがあります。客観的なデータを活用するのであれば、なるべく誰が見ても捉え方が普遍的なデータを選ぶようにしましょう。
 
●調査の主旨が不明
調査項目をしっかりと準備していないことで、調査内容が薄くなってしまうことがあります。調査対象者が少ない、調査項目が曖昧、調査項目がそもそもMECEじゃないなどが散見されます。

A:Action -行動したくてたまらない-


読み手にとって良いコンテンツとはなんでしょうか?それは、読んだ後にすぐに行動をしたくなるような仕掛けがあるものです。読んで学びになるだけでなく、日常の生活や仕事に取り入れたくなる要素をいかに増やすかが重要です。

読み手のマインドを変える意志を構成に込める
すぐに実行に移してもらえることを意識した資料構成にすることで、レピュテーションが高まります。行動を促すためのマニュアルや、チェックシート、他資料の紹介など様々な仕掛けを心がけましょう。
 
Actionでは下記のような点に注意しましょう。
 
●伝えっぱなし
ホワイトペーパーやブログ記事などでは、読み手に利益のある情報があるだけに留まっている資料が多いです。読み手が読み終えた後、話を聞いてみたい、資料内容を実行に移してみたい、と思える構成を考えましょう。
 
●アクションまでが遠い
資料内容と読み手の状況が乖離しすぎていて、どう実行したら良いかが手触り感がないことがあります。読み手が読みながら、自分の作業や次のアクションがイメージできるように仕掛けを作ることが大切です。
 
●導線が間違っている
営業色を弱めることを意識しすぎ、商談機会を損失する導線になってしまうことがよくあります。読み手にどんなアクションをしてもらいたいかを意識した資料構成にすることが大切です。

R:Review -一貫性を愛せ-


1ページ1ページ丁寧に資料を作成していくと、時にはメッセージに矛盾が生じてしまうものです。1ページ1メッセージの法則を守りながら、コンテンツ全体を通して伝えたいことがなにか、を意識し続けることで一貫性のある資料ができます。

デザインとメッセージはバランスが命
基本的にどんな資料でも1ページに伝えたいメッセージは1つにしたほうが良いです。
全体を通して伝えたいメッセージも1つに絞り込みを行うことでメッセージ性に一貫性が生まれます。資料を閲覧した人の納得感が最後まで続くようなストーリー設計を心がけましょう。
 
Reviewでは下記のような点に注意しましょう。
 
●メッセージを詰め込みすぎている
熱量が高い企業や個人であればあるほど、1ページに込めたいメッセージも厚くなることが多いです。複数メッセージが存在すると、伝わりきらない・疲労感を与えるため、削ぎ落として伝えることが重要です。
 
●メッセージが薄すぎる
逆にビジュアルやデザイン性にこだわりすぎるあまり、伝えたいメッセージが薄すぎる資料も多いです。このページは本当に必要か?このページがないとどんな影響があるか?を常に考え、構成を行うことが重要です。
 

おわりに


ここまで読んでいただきありがとうございました。普段から気をつけていることばかりかもしれませんが、AIがデザインを代行してくれる世の中では人間が持つストーリー力や構成力が非常に求められてきます。今回は資料作成を例に多く取り上げましたが、今回のCLEARの観点は、資料のみならず議事録、商談、LPページやWEBページなど、幅広く応用できるものとなっています。
 
また、当社ではスゴすぎる資料作成を行う「スゴシリョ」をご提供しています。自社の資料をアップグレードしたい、これからホワイトペーパーに力をいれたいがリソースが足りない、など資料作成のお悩みがありましたらいつでもお気軽にご相談ください。
 
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