はじめに
受注が跳ねる月もあれば、そうでない月もある。
前年同月や同四半期と比較しても、結果にはばらつきが生じます。
期末・期初の影響、イベント開催の有無、営業人数の変動、新機能のリリースなど、受注に至るまでの変数は多く、要因を分析しながら再現性を持たせることに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マーケティング、インサイドセールス、セールス、CSがどのように連携し、再現性のある受注構造をつくっていくのかについて整理しました。
明確な正解を提示するというよりは、これまでの経験から得た観察と考察をまとめた内容です。ご覧いただいた方にとって、何か一つでもヒントになれば幸いです。
本記事のサマリー
- 再現性のある受注構造をつくるには、自社の提供価値と本来向き合うべき顧客像を揃え、マーケ、IS、セールス、CSが連携する必要がある。
- 連携ができていないとリードは増えているのに商談が増えない。商談数は担保できているはずなのに受注数が増えない。といった構造の歪みが発生する。
- 顧客像を定義しアプローチする企業を絞ると商談が減るのではないか?と不安になるが、アプローチの質が高まりむしろ商談数は増えた。
- 一つの運用の仕方として週に一度「行くべき企業」を決める会議をしてみるのはどうか。
受注構造の”歪み”が起きていないか
- 展示会やイベント協賛によって獲得リード数の目標を達成しているが、創出商談数の目標達成ができていない。
- インサイドセールスチームが今月の商談数いったぞー!!やったー!と毎月喜んでいるのに隣のセールスチームの目標が毎月未達。
- 顧客フォローができているはずなのに解約が止まらない。
といったことが起きているとき構造が歪み始めたサインなのではないかと思います。
マーケはリードを獲得する、ISはアポをとる、セールスは売る、CSは顧客対応をする、といったように各チームが盲目的にリード数、商談数といった指標を追い続けてもファネルの後工程のチームがなぜか達成しないのであれば、おそらく役割定義が適切でないのかもしれません。
*上述の考えを否定するものではありません。
「プロセス分業」から「勝ち方分業」へ
そこで最近は、役割を「プロセスの分業」ではなく、「勝ち方の分業」として捉えるようになりました。
マーケ: 勝てる市場を定義し創る
IS:検討が始まる状態をつくる
セールス:自社の価値提供を最大化し、お客様の成功を共に設計する
CS:勝ち続ける状態へ導く
「新規リードを獲得する」を例にとってみても闇雲に獲得すればいいものではありません。
・自社サービスの提供価値はなにか?
・その価値をもっとも深く感じていただけるお客様は誰か?
に(仮説ベースでも)具体的に答えられなければ、商談創出の段階で壁にあたってしまいます。
極端な例え話をするのであれば
自社はファミリー向けの車が強みなのに、スポーツカー好きの人たちをマーケが集めてきてしまうようなイメージです。
マーケティング・インサイドセールスの役割
マーケティングの役割も、単に市場を攻めることではなく、
世界観を提示し、その世界観を社会に浸透させることだと思っています。
たとえば以前は、顧客情報を一元管理することは今ほど一般的ではありませんでした。名刺は個人が持ち、案件はExcel、活動は紙の日報。それが当たり前の時代です。そこにセールスフォースが現れ、「顧客情報は一つにまとまっているべきだ」という新しい世界観を持ち込みました。つまりマーケティングとは、
勝てる市場やリードを見つけることではなく、勝てる常識をつくることなのかもしれません。
もう一つ例をあげます。
海の近くに家を建てるのが得意なハウスメーカーがあったとします。
このときマーケティングの役割は、
「家の購入に興味がありそうなリードを手当たり次第集めること」
ではありません。
海の近くに住むというライフスタイルの価値に心が動く人たちを見つけ、集めてくることです。
なぜなら、その会社が本当に勝てるのは、「家を売るとき」ではなく、海の近くに住みたいという価値観が芽生えた瞬間だからです。
この瞬間が生まれていない相手に、どれだけ営業やISが努力をしても、本来の強みは発揮されません。
なので、マーケティングとは、リードを集めることではなく、勝てる価値観を世の中に広げることなのだと思います。
インサイドセールスの役割も、検討が始まる状態をつくることだと考えています。
ここでいう「検討」とは、サービス比較を始めることではありません。
「自分たちは、このままでよいのだろうか」
と、お客様の頭の中に問いが生まれた瞬間のことです。
インサイドセールスが顧客との対話の中でこの問いを生み出せたとき、それを「インサイトを与えた状態」と捉えています。
この状態が生まれていない相手にどれだけ情報を届けても、どれだけ接触しても、本質的な前進は起きません。
一般的にナーチャリングと呼ばれている活動の多くは、接触の回数を増やすことに重きが置かれています。
しかし本来の顧客コミュニケーションとは、サービス情報を届けることではなく、価値基準の前提を揺らすことなのかもしれません。
インサイドセールスは、その役割を担っているのだと思います。
アプローチする企業を絞ると商談は減るのか?
結論から言うと、当社で実践した限りでは、商談数は減らず、むしろ増加しました。
当社では業種を数百種に分類し、セグメントごとの受注率を計測しています。その中でも、特に受注率の高い業種群を戦略的に「注目セグメント*」として定義しています。
過去に接点のあった企業へのアプローチを、この注目セグメントに絞って実施したところ、創出商談数は減少することなく、むしろ増加する結果となりました。さらに、創出商談に占める注目セグメントの構成比も取組前と比べ、約2倍近くまで高まり、商談の質の向上にもつながりました。
これに連動するかたちで、受注に占める注目セグメントの割合も高まっていきました。
つまり、成果を押し上げていたのは商談の総量そのものではなく、
“どの商談を増やしたか”である可能性が高いと考えています。
*注目セグメント
実際には業種以外の複数の要素も加味して定義していますが、本稿では説明のため簡略化しています。
再現性のある受注構造をつくる運用
運用方法の一例をご紹介させていただきます。
3つの指標をもとに優先度を整理、行くべき企業を決める会議を定期的におこなってみる、というのはいかがでしょうか?
・ターゲティング
受注分析や事例企業の深い振り返りによってICP*を定める
*Ideal Customer Profile :「自社にとって最も価値が出やすい理想の顧客像(企業像)」
・リレーション
自社とどの程度接点があったか(過去商談があったかなど)といったリレーションの強さ
・インテント(購買検討温度感)
お客様がどのような情報収集、活動を行っているか、関心が高まっているかを推し量る指標
といった観点で見ていきます。
例えば
週に一度、「行くべき企業」を決める会議を行い、過去の接点履歴や企業の動きを見ながら、いまアプローチすべき企業を全員で決めます。
そして、その会議で決まった企業群をもとに、 インサイドセールスチームが日々のアプローチ優先順位を作る、といった運用もよいかもしれません。
アプローチリストは、ランダムに配られるものではなく、「いま組織として行くべき企業」から生まれるようになります。
偶然の受注は、いつか波が止まります。
しかし、顧客像と勝ち方を揃えた受注は、組織の意思によって生み出せる可能性が高まる。
「商談は積み上げるものではなく、設計するもの。」
再現性のある受注構造とは、その設計思想のことなのかもしれません。
本稿が、その構造を見直すきっかけになれば幸いです。
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