ISとFSの歪みはなぜ起こるのか
ISとFSの歪みとは、組織間で発生するコミュニケーション問題などの組織関係が悪化している状態を指します。そしてそれは多くの場合「目標達成における視点の違い」から起こる現象だと捉えています。特に、所属組織が違う場合は起こりやすいのではないかと思いますが、弊社ではISもFSもセールス部の中にありました。つまり、同一組織内ですら起こる根深い問題です。
視点の違いは、即ち目標設定の違いと捉えています。
・商談獲得数が目標のIS
・受注が目標のFS
現在でこそ弊社のISは自分が獲得した商談がその後どのフェーズまで進んでいるのか、も目標にしていますが、当時は商談数さえとれていれば質は問われないという目標設定でした。
商談数が目標であったため、当たり前ですが商談からの受注率が極端に低かったのです。受注率が低いと商談数を増やさなければいけない、しかし増えた商談は受注率がもっと低くなる、という悪循環でした。FSの心理からすれば「ISからはまったく良い商談がこない。それどころか商談が増えたことで工数ばかりが増え、業務が逼迫している。」となっていきますので、数値だけではなく、関係性まで悪化していきます。
ISの目標自体を商談数ではなく、フェーズ3(企業によって異なりますが、課題の合意や担当者との合意など、商談が少し進んだ状態)の数などに変更できてしまえば話は早いのですが、諸々の理由で当時は変更が難しかったため、ISが獲得する商談の質を高める必要がありました。
解決できた3つの施策
結果的に、解決までには3つのSTEPの施策が必要でした。
-STEP1
登る山とその登り方を定義したこと
-STEP2
受注が発生したら受注担当だけではなく商談獲得担当もセットで褒める
-STEP3
ISとFSのチームを作る
下記、解説します。
-STEP1 登る山とその登り方を定義したこと
とにかく商談が増えればよい、商談を獲得した者が偉い、という風潮を意図して作っていたのですが、これが逆効果になっていました。自分が獲得した商談から受注が生まれることをイメージした商談を作る、までをセットにする必要がありました。
そのため、商談獲得時に見込み顧客としなければいけない会話、聞いておかなければならない項目、そもそもISとしてどのようなレベルを目指すべきで、それはどのように身につけていくのかを定義しました。
そのために当時作成したツールの1つが「レベル別チェックシート」です。
当時のサンプルデータです。
レベル5まであり、レベルが上がれば上がるほど、各項目の難易度が上がる設計になっています。なお、レベル5に近づいた人から、優良リードの割り振りを行うルールに変えたので(もともとは早いもの順だった)、ISのメンバーは早期に高レベルを目指そうと自己研鑽をする文化も生まれました。
-STEP2 受注が発生したら受注担当だけではなく商談獲得担当もセットで称賛する
ISメンバーのレベルが少しずつ向上してくると共に、受注率も少しずつ回復していきました。弊社では受注が発生するとフロア中に共有をしていた(コロナ前懐かしい)のですが、あくまで受注の主役はFSという側面が強く、ISがそのタイミングで表に出ることは少ない状態でした。
それを、受注発表時に商談獲得はISの◯◯、受注担当はFSの◯◯とセットでシェアするようにしISメンバーの名前も公表するようにしISの存在感を高めていきました。それは、より受注に近い商談を獲得したい、と思ってもらえるようにという願いを込めた行動でしたが、結果的に新たな問題を引き起こしてしまいます。
それは、商談の割り振りが特定の受注率の高いFSに集中してしまう、という問題です。
受注が目的になり、それが称賛や評価になるわけですから、当然ISは自然と受注率の高いFSに商談を担当してほしいと考えます。その結果、営業リソースが偏重し、FSエースの追客が間に合わない状況となり、受注率がまた下がるというなんともいえない問題が発生してしまいました。
-STEP3 ISとFSのチームを作る
受注まで見届ける文化に変わったISが、受注率の高いFSに商談を集中させてしまう問題、なんともシンプルな方法で解決します。それは、ISとFSのチームを作ってしまいチーム間のみで商談供給する、という方法です。当時はIS3人、FS6人、という構成だったので、IS1人:FS2人で1チーム、という具合にチームを編成しました。
どんなに商談の定義をしても、結局はFSの得意な商談スタイルによって進めやすい/進めにくい商談というのは出てきてしまいます。供給先を固定することにより、FSの得意スタイルに合わせた商談ストーリーをIS側で頭出しできるようになり結果としてエースの受注率に迫るFSメンバーが増えました。
また、チームとして進めていく上で最も重要視したのは「チーム名をつけること」でした。人は自分たちの特徴を認識すると、その長所を活かす方法を考え、そして名前を体現しようと行動も変わっていきます。その特徴がチーム名という形で表現され、チームごとに特徴のある施策が実行され、さらに成果につながっていきます。また、団結力も上がっていくことでこれまでになかった良い議論がチーム内に生まれるようになりました。
また、チームによって運営の仕方が違いましたが、毎日夕方にMTGをして「今日の商談はどうだった」「明日の商談はこんな感じだからこういうことを準備して」など、以前では考えられないくらいの情報量の行き来とスピードが備わりました。
ISはIS同士で情報共有を行い、商談化のコツやお客様がいま興味関心のあるものはなにか、うまくいった事例の使い方などを毎日シェアしていました。ISが別々のチームになったことによって、それまでもあった成功事例の共有がさらに加速したのです。
最後に
こうして、ISとFSの歪み問題自体は組織全体で乗り越えることができましたが、ここからの学びは「歪みは変化であって悪ではない。だから犯人探しをする必要もないし、解決してもいずれまた訪れる。成長に変化はつきものなので向き合い続けることが重要」というものです。
どうしても組織間の問題は「原因は◯◯」や「◯◯さんが...」という話になってしまいがちですが、この結果を招いているのは組織全体です。ですからピンポイントに何かを改善するのではなく、組織全体として何を目指すのか、そのために最適な組織設定はどうすれば良いのか、そして実行する際は全員で取り組むという言葉にすれば至極当然のことなのだと思います。
実際に弊社でもこの問題を解決したすぐあとにまた別の問題が発生しました。それも後日皆さんにご紹介できればと思いますので、ぜひまたご覧いただけたら嬉しいです。お読みいただきまして、ありがとうございました。