スローガンは「第一想起」
私たちコニカミノルタジャパン株式会社のマーケティングサービス事業における、インサイドセールスチームのスローガンは「お客様に第一想起をしてもらうこと」です。第一想起とは、本当にサポートが必要になったタイミングで、最初にコニカミノルタジャパンのことを頭に浮かべていただくこと。
昨今の購買プロセスは、お客様自身で検討を進められる範囲が広がり、サービスを提供する側からは見えづらくなっています。サービスを提供する側でコントロールすることが難しいため、いざ検討フェーズになった瞬間にお声がけをいただく候補の中に居ることが重要であると考えています。
弊社はたくさんの製品・サービスを扱っていますが、マーケティングサービス事業は高価格帯の無形商材のため、カスタマイズ性が高く中長期的な信頼関係の構築も求められるのが特徴です。いわゆるマーケティング、インサイドセールス、セールスの分業体制を取り入れようと他社の取り組みも参考にしてきましたが、だんだんとお客様の望むものと自社がやろうとしていることのズレが生じてきました。それを解決するために行ってきたことを今回は私の想いと共にご紹介します。
インサイドセールスにおける顧客体験向上とは
私が最も追求していることは、ズバリ「顧客体験向上」です。インサイドセールスの浸透に伴い、お客様が受けとる電話やメールなどが増えている中で、コミュニケーションを通じて、自社に対していかに気持ちの良い印象をいだいてもらえるかはとても重要です。そこで今回は、弊社で実践している取り組みを3つご紹介します。
敢えて電話をしないという選択肢
毎日のようにウェビナーが開催され、ホワイトペーパーなどのコンテンツもあふれている今、なにかアクションを取るたびに何度も電話がかかってくる…というのはお客様にとってストレスになります。必要なのは適切なフォローを心がけて実践することだと考え、弊社ではフォームやアンケートの中にいくつかの選択肢を用意しています。
また、弊社ではセミナーのテーマを「エデュケーション・トレンド」「ノウハウ・サービス」に分類しています。
「ノウハウ・サービス」では、自社が提供する製品・サービスに少なからずご興味がある方や、関係部門の方に母数が限られるので、温度感が高く、商談機会獲得率も比例して高くなります。課題の仮説立てやスクリプトの構成も考えやすく、トークも一貫性を持たせることができます。商談やサービス紹介の打診でも違和感や唐突感がないため積極的なアプローチが可能です。
次に、話題性と多くの方への認知を目的とした「エデュケーション、トレンド」でのコミュニケーションについて解説していきます。このテーマはターゲットが広く、たくさんのリードが獲得できる一方で、インサイドセールス目線では「勉強になった」「面白かった」という感想は得られても、課題のヒアリングや支援の余地を探るには難易度が高く非効率なフォローになりがちです。
こうした施策の場合はアンケートに「個別の連絡は不要」という項目を用意し、選択した方には電話しないというルールを作りました。数字を追う上ですべてのリードをフォローしたくなる気持ちや、それによって数字が未達になってしまう心苦しさはありますが、顧客体験向上を目的にする場合、効率性と、望まれるコミュニケーションの提供を行う方が良いと判断しました。
また、それ以外の選択肢を選んでくださったお客様のみにフォローコールをすることで、自信を持って連絡できますし、好意的なリアクションを返していただけることも多く、お役に立てている実感が得やすかったこともポイントです。興味や検討度合いの浅いお客様への過度なアプローチを避け、メールとコンテンツを通じた軽いコミュニケーションを提供することで、いつかくる「その時」に向けたストレスのない関係性づくりを心がけていることが、少しずつ成果に結びついてきた実感があります。
一度にたくさんではなく、少しずつ複数回
カスタマイズ性の高いサービスの訴求には、事前に決めたスクリプト通りというわけにはいかず、お客様の真の課題を探り、マッチしそうな情報や提案を見つけていく必要があります。そのため10分程度のお電話だけでは必要な情報を聞き切ることは難しいのです。
また、前の項でもご説明した通り、すべてのお客様が検討の温度感の高いお客様ではありません。少しずつ信頼関係を構築し、お客様に変化のあったタイミングで検討のテーブルに乗せていただくためにも、一度の電話で商談獲得、もしくは見込みなしとして判断するのは難しいと考えています。
様々な取り組みを試した結果、お客様の状況や課題感を漠然としたものから具体的なものに落とし込むため、複数回に分けてコミュニケーションを取ることが有効でした。1回目の接点はあくまでも御礼を伝えることを目的にコミュニケーションを図るようにしました。そうすることがお客様からの信頼を獲得することにつながり、2回目以降のアプローチのための最低限の関係性を築くことができます。
2回目以降のコールでは前回の会話を振り返りながら、より深いヒアリングを実施していくことが有効です。そのためには「前回は◯◯にご興味があるとお伺いしていましたが…」や「前回お伺いした◯◯についてはその後いかがですか?」など、SFAに蓄積したお客様の情報を活用することが重要です。
ここで重要になってくるのは、再度アプローチする機会を作ることですが、コンテンツごとにお客様の興味関心度合いをこちら側で想定しておくと、フォローするべきタイミングが判断できます。例えば、テンプレートなどの実務に近いものであれば、検討が具体化している可能性高い、もしくは悩みが明確になっている可能性高い、という仮説です。
実際に会話をさせていただく際は、あくまでも「役に立つこと」に集中し、そのために必要なことを伺うというスタンスは崩さないようにしています。するとお客様から「以前もお話しした件ですよね?それについては…」や「こまめにご連絡をいただいていたのでコンペにお呼びしようと思っていました」という嬉しいお言葉を頂戴する機会が増えました。商談機会獲得は、狙いつつも結果的にいただけるものである、と実感しています。
商談以外の接点の場を提案する
インサイドセールスとして従事して間もないころ、お客様に打診できる選択肢はほぼ「商談機会」だけでした。『興味はあるけどそこまでじゃない』とやんわりお断りをされたこともしばしば。
サービス紹介を目的とした打ち合わせは「買うかどうかわからないので申し訳ない」と思われている方もいらっしゃいますし、打診する身としても唐突感は否めません。そこで、商談ではない形で「価値を感じてもらいつつ接点を持つ機会をもらう方法」はないか?を考え、お客様にコンサルタントとの「相談会」や「壁打ち」を提案できるようにしました。
相談会とはお客様の中にある「なんとなく困っていること」を言語化し、危機感やメリットを実感してもらうことが目的です。実際のトークでは「セミナーの延長線で、ざっくばらんに意見交換させていただけませんか?」などと提案ができます。ただし、これには営業やコンサルタントの協力が不可欠です。商談する上で理想の顧客像と、インサイドセールスからトスアップできる顧客像のGAPを理解してもらい、必要性を示すことが求められます。
どうしても、「商談が必要か、そうではないか」という分け方をしてしまいがちですが、お客様の状況や心理はそんなに簡単ではありません。まずはその解像度を営業やコンサルタントと共有するところから始めました。どんなタイミングで検討するのか、商談を断りやすい理由は何か、お客様が本当に求めている支援はどんなものなのかなど、実際のお客様へのヒアリングや営業からの情報収集によって導き出したのが「相談会」や「壁打ち」でした。
ここでご紹介したものはひとつのパターンであり、他にも多くの施策があると思います。文字通りお客様ひとりひとり求めるものが違うので、さまざまな選択肢を持ち、それらを適切にご案内することが顧客体験向上に必要だと思っています。
さいごに ーネガティブからポジティブへの思考の変換ー
入社して間もない頃の私は、インサイドセールスに対して「テレアポ」のイメージが強く、少なからずネガティブな印象を持っていました。今でも、理想と現実の間で苦しむ日もあります。しかし、自社での活動を通して、インサイドセールスが果たすべきことは、お客様が望んでいることの解像度を上げ、抱えている真の痛みを取り除くために、「抽象と具体を行き来し、自社にできることを考え提案すること」であると気が付きました。
正解か不正解かはわかりませんが、自分自身でそれを言語化できてからはポジティブな思考に切り替えることができました。お客様から煙たがられることをするのが嫌なのであれば、望まれる/喜ばれることができるようになればいい!というシンプルな発想です。
インサイドセールスとして「顧客体験を」を追及し、日々の業務に打ち込むようになることで得られた成果は、自分自身のインサイドセールスとしての仕事への向き合い方かもしれません。
成果に向き合うために短期的な目標を追いかけることも時には重要ですが、中長期的な目線で見た時に提供すべき顧客体験が提供できているか?を自問自答しそこからブレないことが、最終的な成果につながっていくと信じています。
最後までお読みいただきありがとうございました。少しでもみなさんのお仕事の参考になればうれしいです。