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インサイドセールス組織のための”プロンプトを打たない”AI活用方法

澤口 友彰 | Mer2024/4/1
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本記事では、最近のビジネストレンドとして注目を集めている営業組織におけるAI(人工知能)の活用方法について、具体的に解説してまいります。特に今回は、"プロンプトを打たない"という一風変わったAIの活用方法について、その具体的な手法や効果について深堀してご紹介します。この記事を通じて、営業組織がAIをどのように活用し、その結果どのような効果を期待できるのか、具体的なイメージを持っていただければ幸いです。

株式会社Mer 代表取締役。経費削減や業務効率化支援を行うベンチャー企業に入社後、新規事業立ち上げや既存事業の拡大を経て同社執行役員に就任。その後関連会社のビジネスサイド立ち上げに従事し、2020年に「営業活動の“土台“を創る会社」として、株式会社Merを設立。Pipedrive販売店として2年連続APAC一位を獲得。

はじめに


昨年ごろからChatGPTをはじめとした生成系AIが世間を騒がせていますが、業務で活用するにはまだまだどういう風に使ったらいいかわからない。うまく使えないといった方も多いのではないでしょうか?ChatGPTのポテンシャルを活かすためには適切なプロンプト(質問・指示)を入力することがポイントとなりますが、これがなかなか難しい。

そこで今回は、”プロンプトを打たない”で、ChatGPTをはじめとするAIの力を借りながらインサイドセールス組織の生産性を上げる具体的な方法をご紹介します。

どんなことが出来るのかご紹介する前に、今回は前提として、iPaaSと呼ばれる領域のツールを活用するので、少しだけiPaaSについてご紹介します。

iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、クラウド上で提供される統合プラットフォームのことを指します。異なるソフトウェアアプリケーションやデータを一元的に統合・管理できるサービスです。これにより、異なるシステム間のデータのやり取りや連携を容易に実現できます。簡単に言うと、ノーコードでクラウドサービス同士を繋いで業務を自動化するプラットフォームのことです。


弊社でもiPaaSは最も無くてはならないツールとして全社的に活躍してくれており、導入している様々なツールを横断して、常時約250種類の自動化が業務を支えてくれています。


このiPaaSというツールを活用することで、”プロンプトを打たない”で、AIを活用することが可能になります。イメージとしては、特定のアクションが実行される⇛データをAIに引き渡し、アプトプットを得る⇛結果を返すといったことが自動的に実行されます。”プロンプトを打たない”と言いましたが、設定時にはプロンプトが必要となります。しかし、一度設定してしまえば、実際の業務ではプロンプトを打つ必要はありません。

以下の具体例では、MakeというiPaaSを活用していきます。Makeは無料から利用できるので、ぜひ活用してみてください。

インサイドセールス組織におけるAI活用事例


①名刺データを読み取ってCRMにデータ格納


名刺管理ツールを導入している会社には必要ないかもしれませんが、そうでない会社ではCRMに名刺情報を手入力されている会社もあるかと思います。今回は、slackの特定のチャネルに名刺の写真をアップすると、OCRが読み取り、ChatGPTがデータの仕分けをして、CRMへデータを格納するといった自動化をご紹介します。

実行される内容
①slackの特定のチャネルにファイルがアップされたら発動
②アップされたファイルをダウンロード
③Chat GPTで名刺データを読み取り、仕分け
⑤ファイルをGoogleドライブに保存
⑥CRMにデータ格納
⑦CRMに名刺情報確認タスクを生成
⑧slackに結果を通知

詳しい解説動画はこちら


入力しているプロンプト
あなたは、名刺の情報を入力する業務のアシスタントです。
名刺の画像データを渡すので、情報を分類して、最終出力フォーマットに従って出力して下さい。
#用意してほしい変数
*{name}
*{company_name}
*{department}
*{post}
*{mail_address}
*{phone_number}
*{adress}
*{url}
#テキストデータから抽出・分類してほしい情報と格納先の変数(この情報は決して出力しないで下さい)。結果がない項目は、"なし"と出力してください。
*名前(アルファベットの名前と漢字の名前がある場合、漢字の名前を優先。漢字は勝手に変更しないでください。) =>{name}
*会社名 =>{company_name}
*部署名 => {department}
*役職 => {post}
*メールアドレス => {mail_address}
*電話番号 => {phone_number}
*住所 => {adress}
*URL => {url}
#最終出力フォーマット(下記の変数に値を代入し、そのまま出力して下さい。他の情報は一切出力しないで下さい。)
${
 "name" : "{name}",
 "company_name" : "{company_name}",
 "department" : "{department}",
 "post" : "{post}",
 "mail_address" : "{mail_address}",
 "phone_number" : "{phone_number}",
 "adress" : "{adress}",
 "url" : "{url}"
}

②非構造化データを構造化データに(例:部署名から部門種別を判定)


役職名や部門名など、会社によって呼び方が違うデータのまま(非構造化データ)だと、レポーティングやマーケティング時に困りますよね?
例えば、営業部門に絞ってメール配信したいとしたときに、格納されている部署名では様々な名称があっって絞り込みがしづらかったりします。

  • 営業部
  • 販売部
  • アカウントマネジメント部 など

こういった非構造化データを手動で構造化されたデータに校正するのは一苦労です。こういった作業はChatGPTに任せてしまいましょう。

実行される内容
①CRMから部署名はあるけど、部門種別が入力されていないデータを取得
②ChatGPTで部署名から部門種別を判定
③判定された部門種別をCRM上の該当データでアップデート

詳しい解説動画はこちら


入力しているプロンプト
#部門種別の分類
あなたは、データ整理のプロです。
部門名を部門種別に分類したい。
「分類リストと補足」を見た上で、以下の「回答内容」を「アウトプット例」のように分類してください。
アウトプットする場合、余計なキーワードはいれずに分類リストのリスト名のみ回答してください。また結果分類リストの中からいずれかひとつのみとしてください。
##分類リストと補足
・経営・経営企画部門
・マーケティング部門
・営業部門
・営業推進部門
・新規事業関連部門
・DX推進部門
・開発・技術・研究部門
・総務・人事部門
・法務部門
・経理・財務部門
・投資部門(CVC・M&A)
・広報・PR・IR部門
・情報システム部門
・カスタマーサポート / サクセス部門
上記分類リストに該当がなかった場合や「回答内容」が不明瞭な場合は、
・その他部門
に分類
##アウトプット例
広報・PR・IR部門

③企業情報のリサーチ業務アシストと過去商談時のログを要約


インサイドセールスがアプローチをする前には、お相手の様々な情報を調査しているかと思います。そういった調査工数もAIの力を借りて効率化することが可能です。
①CRM上で特定のステージに取引情報が入ったら発動
②取引情報に紐づいている企業情報のHP URLを取得し、読み取った情報をCRMの該当取引情報に記載
③過去の取引情報に紐づいているメモを読みとって要約し、CRMの該当取引情報に記載

詳しい解説動画はこちら


入力しているプロンプト
・HP URLの読み取り
リサーチ対象企業のホームページURL : {{CRM上の会社URL}}を読み込んで、"会社概要""ミッション・ビジョン・バリュー""ホームページ記載の経営者挨拶の概要""最新ニュースと日付""この企業を取り巻く市場環境の変化""営業活動における想定される課題""リサーチ対象企業の想定される営業先ターゲット""採用情報"について日本語で教えてください。
またそれぞれの項目で、ホームページURLから明確なソースが見つからない場合は、"ソース不明"としてください。回答は必ず日本語で行ってください。

・過去取引情報に紐づいているメモの要約
# 前提条件:
- タイトル: 過去商談時のメモ情報一覧の効率的な要約方法
- 依頼者: 短時間で過去商談時のメモ情報を要約したい人
- 制作者: 過去商談時のメモ情報一覧から構造を理解し、要点を抽出できる人
- 目的: 過去商談時のメモの要点を簡潔に伝える
- リソース: 商談議事録やメモ、要約技術、言語処理の知識
- 評価基準: 要約が過去商談時のメモ情報の要点を簡潔に伝えることかつ日本語であること
# 実行手順:
1. 過去商談時のメモ情報の主要なテーマや情報を特定する。
2. 関連する詳細や背景情報を整理・選択する。
3. 要約文を工夫して作成する。
4. 要約の内容がオリジナルと一致しているか確認する。
5. 要約がわかりやすいか確認する。
# 参考情報:過去商談時のメモ情報="{{取得したメモ情報}}"
# この内容を実行してください:
{過去商談時のメモ情報}を基に、以下のフォーマットに従い要約資料を作成してください。不足している項目は空白のままにしてください。
参考フォーマット=
"主要ポイント1:
主要ポイント2:
主要ポイント3:"
補足:
- データが不足している場合は、無理に作成しないでください。
- オリジナルの情報を捏造・改変してはいけません。

④AI上司爆誕!?目標達成までのフィードバック


目標達成までのフィードバックもChat GPTに行ってもらうことが可能です。正直こちらについてはまだまだ改良しないとなという感じではあるんですが、ご参考までに。
①進行中の取引情報一覧を取得
②取得したデータをスプレットシートに記載し、データ集計
③集計したデータをChat GPTに渡して、フィードバックを作成
④フィードバックをslackに投稿

詳しい解説動画はこちら


アウトプット例
現状の進捗
目標 : 〇〇アポ
現状 : 〇〇アポ
進捗率 : 55%
日数進捗率 : 48%
消化営業日 : 10日
残営業日 : 11日

フィードバックGPTによる分析
#戦略の提案
##当面の優先タスク
1. 残り営業日を考慮に入れ、進行中の案件の中から、今月中にクローズ可能と思われる案件を優先的に進行させる。
2. 各ステージで平均滞在時間を参考にしながら、余裕があれば来月の案件の進行も考える。
3. 案件のラベリングに注目し、HOTなど成約率の高いラベリングを持つ案件を重点的に進める。

##データ分析と戦略策定
1. データから見て、インバウンドが成約率が高いため、できるだけインバウンドリードを増やす戦略を考える。
2. アウトバウンドのリード数は多いが、成約率が低いため、アウトバウンドの質を向上させるための戦略を考える。
3. また、パイプラインの進行状況を見て、各ステージをスムーズに進めるための推進策を検討する。

##実行計画
1. 今後のインバウンドリード獲得のために、マーケティング施策を強化する。
2. アウトバウンドの質を上げるために、対象リードの選定基準を見直したり、アプローチ方法を改善する。
3. パイプラインのステージごとに進行状況を見て、滞在時間が長いステージの対策を考える。

##モニタリングと成果の測定
1. 週ごと・月ごとに目標との差をチェックし、適宜戦略やアクションプランを修正する。
2. データを定期的に分析し、効果的だった施策や改善点を明らかにする。
以上の戦略とアクションは、テーム全体の目標達成へとつながる具体的なステップを提供します。

最後に


いかがでしたでしょうか。AIの力を借りることで、インサイドセールス組織の生産性を上げるための具体的な方法をご紹介しました。これらは一例にすぎません。AIの進化は日進月歩で、今後さらに多くの業務が自動化され、より効率的な業務運営が可能になると考えられます。ぜひ、AIやiPaaSを活用してみてください。

Merでは、”営業活動の土台を創る”というミッションを掲げ、以下の3つの事業を展開しています。


特にご紹介したようなSaaSサービスの連携・自動化をノーコードで実現するノウハウには非常に強みを持っており、これからより生産性を向上させたい、業務効率化に投資していくタイミングだという企業様であれば、価値提供が出来るかと思います。ぜひお気軽にご相談くださいませ。

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