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マーケ連動型インサイドセールス -成功のための 6 つのステップ-

土屋 健司 | エッセンス2024/8/15
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インサイドセールスはマーケティング部門と連携することで、リードジェネレーションの効果を最大化し、売上向上に大きく貢献することが可能ですが、連携に課題を抱えている組織を多く見てきました。本記事では、私のこれまでの経験からBtoB 領域でインサイドセールスを成功させるための 6 つのステップを事例を用いて解説していきます。

エッセンス株式会社 パートナーコンサルタント | 新卒で中央出版グループに入社し B to C向けの訪問販売や電話営業など新規開拓を中心に様々な営業職を経験。2014年に株式会社linK supporTersを設立し、2024年3月まで10期経営。2024年4月にエッセンス株式会社入社し現在に至る。

成功のための6つのステップ


成功のために必要なステップを 6段階にまとめてみました。まずは以下にその6つを列挙し、その後詳細に説明していきますのでまずは全体感を掴んでいただき、もし不要な部分があれば読みたい部分まで飛ばして読んでもらえればと思います。

ステップ 1: ターゲット顧客の明確化
ステップ 2: マーケティング戦略とインサイドセールス部門の運営
ステップ 3: 実行可能性と再現可能性のある現場目線での設計
ステップ 4: セールスプロセスの最適化
ステップ 5: トレーニングとモチベーションの事前設計
ステップ 6: KPIの設定とマーケティング連携

ステップ 1: ターゲット顧客の明確化


成功するインサイドセールスの第一歩は、ターゲット顧客を明確にすることです。タ ーゲット顧客を定義するための要素を掘り下げ、自社の提供価値(バリュープロポジ ション)との整合性を図ります。

● 業界
製造業、IT 業界、医療業界など、自社の製品やサービスが特に効果を発揮する業界を選定します。多くの業界に導入が可能な製品やサービスの場合は、優先順位を付けていきましょう。

● 企業規模
小規模企業から大企業まで、どの規模の企業をターゲットにするか。ニーズや予算に応じたアプローチが必要です。

● 担当者の役職
決裁権を持つ経営層や、導入・運用を担当する中間管理職がターゲットになりやすいですが、エンジニアや経理総務などは実担当者が上申するケースも一般的になってきています。まずはお客様の購買プロセスを明確にしましょう。

● 抱える課題
業務効率の向上、コスト削減、売上拡大など、顧客が抱える具体的な課題を洗い出します。業界全体の好不調、法律の改正などの時事情報を加味して調べることをおすすめします。

● 自社の提供価値(バリュープロポジション)
自社の製品やサービスが顧客の課題をどのように解決できるかを明確にします。また、多くの場合で役員・経営層、部長やマネージャー、そして実務担当者と得られる便益が違いますので、提供価値を細分化するようにしてください。

ステップ 2: マーケティング戦略とインサイドセールス部門の運営


マーケティング戦略の策定
● 目標の設定:
売上拡大、市場シェアの増加、顧客獲得数の増加など具体的な目標を設定します。

● 競合分析
競合他社の製品やサービス、戦略を分析し、自社の差別化ポイントを明確にします。

● ターゲットのニーズと要求の理解
ターゲット市場や顧客セグメントのニーズを深く理解し、それに基づいて戦略を調整します。

● 差別化戦略の策定
自社の製品やサービスの差別化ポイントを明確化し、そのポイントを活かす戦略を策定します。

● マーケティングミックスの構築
製品の価格設定、プロモーション戦略、流通戦略などを構築します。

● BtoB マーケティングの主な施策
ウェブ広告、SNS 運用、メールマーケティング、コンテンツマーケティング、ウェビナー開催など。


インサイドセールス部門の運営事例
以下は、ある企業のインサイドセールスにおける運営方針大枠の事例です。個人ではなくチームで目標数字を追うこと、またその行動を具体的に管理したことにより、3 人の未経験少数組織でも月間100 アポ達成できた事例です。

● チームコンピテンシー
Goal Driven: 目標設定と計画立案を通じて成果を追求
Challenge Driven: ゴールに向けて仮説検証を繰り返し挑戦
Team Driven: チーム全体で目標達成を目指す

● マネジメントの 2 大テーマ
明確なチーム方針と役割設定: 基本方針の伝達と役割明確化
タイムマネジメントの徹底: スケジュール管理、集中架電時間と休憩時間の設定

● KPI 指標
優先 KPI: 目標チームアポ数、ナーチャリングリード数、ナーチ ャリング引き上げ数
第 2 レイヤーKPI: 個人アポ数、メール送信件数、コネクト数、 新規リード情報獲得数

ステップ 3: 実行可能性と再現可能性のある現場目線での設計


行動内容やアクションプランは現場目線での設計を重視し、実行可能性と再現可能性を確保します。特にオペレーションは理想で作成しても実行されなければ意味がありません。最終的な着地点と、いま行うべきアクションには乖離がありますので、現実的に実行可能なプランを作成してください。

具体的なセールスプロセスの設計
● ステージ 1: リサーチとアプローチ
顧客セグメンテーションとターゲット確認
コンタクト方法のルール設定(電話、メールなど)

● ステージ 2: ニーズの特定と質問
BANT フレームワークに基づく質問の設計
顧客の課題やニーズを特定するアプローチ

● ステージ 3: 提案とアポイントメントの獲得
提案のカスタマイズと価値提供
アポイントメントのスケジュール設定と確認

利用するツールの選定・ルール設定
● CRM(Customer Relationship Management)システム
顧客情報の管理とセールスプロセスの追跡
フォローアップやリマインダーの設定

● コミュニケーションプラットフォーム
チーム間のコミュニケーションと情報共有

ステップ 4: セールスプロセスの最適化


セールスプロセスの最適化は、効率的な営業活動を実現し、顧客のニーズに応えるた めの重要なステップです。以下に具体的な設計ポイントを記載しますので参考にしてみてください。

● リードのスコアリングシステムの導入
 リードの質を評価し、優先順位をつけます。

● 見込み顧客のステージ判断: BANTフレームワークの活用
Budget(予算)
顧客の予算が自社製品やサービスに 合致しているかを確認します。

Authority(決裁権)
顧客が意思決定を行う権限を持っているかを確認します。

Need(必要性)
顧客が自社の製品やサービスを必要としているかを確認します。

Timeline(導入 / 検討時期)
顧客が購入を検討しているタイムラインを確認します。

BANT以外にも様々フレームワークが存在し、もしかすると自社のビジネスに最適なものが見つかるかもしれません(例えばSaaSに予算などあるのか、等)。しかし、まずは王道のフレームワークから始めることをおすすめします。導入していたとしても徹底できていない組織も多く、BANTを活用しきることで、見込み顧客の購入意欲や適性を評価し、効率的にアプローチを実行することが可能となります。

● フィードバックループの構築
チーム間でのフィードバックを共有し、プロセスの改善に役立てます。内容は商談の件数や品質、アプローチ内容から商談の結果まで多岐にわたります。どうしても日々の数字に追われてしまいがちなインサイドセールスは、このフィードバックをいつ、誰が、どのように実行するのかを事前に策定しておくことが重要です。

● スケジュール管理
定期的なミーティングやチェックフローを設定し、1日の活動計画と進捗を管理します。週末になって、月末になって活動計画とのズレを認識しても取り返すことはできません。可能であれば1日の中で数回チェックできる体制設計が望ましいと考えます。

ステップ 5: トレーニングとモチベーションの事前設計


チームのトレーニングとモチベーションの仕組みを事前に設計することで、メンバーの能力向上とモチベーション維持を図ります。ここでいうモチベーションの仕組みとは「立ち上がりの失敗や成果がでないという状況、もしくは成長実感がないことで意欲を削がれてしまうことを防止する」という意味です。

● 新人トレーニングの設計
製品の機能と価格が分かれば良し、という企業を稀に見かけますが、最低限以下の内容はインプットすることをおすすめします。自社の製品はもちろんですが、業界や競合の知識が必要ですし、徹底的なロールプレイを実行しなければせっかく獲得したリードが無駄になるだけではなく、自社の評判を落とすことにもなります。

業界のトレンドやこれまでの歴史、競合分析まで網羅した業界知識の共有
トークスクリプトの作成とロールプレイを中心としたセールススキル研修
CRMシステムやメール自動化ツールの使い方を教え、習得=実行できるまでサポートする or マニュアル化

● トークのレベルチェックシートの運用
以下のような観点でシートを作成し、定点チェックすることで「立ち上がりの時間短縮」「能力の均一化」そして「成長実感がないことへの提示」が可能となります。作成時のポイントは誰が確認しても成否が別れないこと、です。

トークの質
顧客の現状を正確に把握できているか?(現状のツールや組織、検討の背景や担当の役割など)
顧客の課題を明確に引き出せているか? (市場や業界の現状、事業との乖離、社内課題など多角的な観点)

質問の質
顧客の興味を引き出せているか?(質問の意図が伝わっているか、ほしい回答から逆算されているか)
問題の深刻さを顧客に認識させられているか?(示唆質問。具体的、関連性、時間軸に沿っているか)

提案の質
顧客のニーズに合った提案ができているか?(課題と目指すべき姿が合意できているか)
提案が具体的かつ実現可能か?(製品理解、事例の活用、開発知識に問題はないか)


ステップ 6: KPIの設定とマーケティング連携


インサイドセールスのKPI設定は一度やっておしまい、というものではなく常に見直していくものだと考えています。営業の売上予算を達成するためには柔軟にその中身を検討するべきで、マーケティング部門と連携しながら模索し続けるものです。

インサイドセールスKPIの例
インサイドセールスのKPIとして設定されるものは確定的な行動KPIと、確立的な成果KPIにわけることができます。どちらが最適というものではなく、事業の状況に応じて柔軟に設定していくもので、例えば営業のスケジュールに余裕があるのであれば案件化数を追うべきではなく、アポ獲得数を設定すべきです。

・行動KPI
架電数
メール送信数
コネクト数
アポ打診数

・成果KPI
アポ獲得数
案件化数(案件金額)
受注数(受注金額)

マーケティングとの連携
インサイドセールス部はマーケティ ング戦略の策定において重要な役割を果たします。例えば、新しいキャンペーンの企画や既存キャンペーンの効果測定に参加し、フィードバックを提供します。しかし、それがうまく機能しないことがありますので、失敗するポイントを例示します。

・落とし穴の具体例
情報の取得不足
「この資料をみてどう思ったか」「今回のセミナーに対しての感想は」「資料は読みやすかったか」などをヒアリングするインサイドセールスは少数だと思います。それは日々の”商談獲得”という業務に直接的、短期的には寄与しないと考えているからです。

情報の共有不足
インサイドセールスは重要ではないと思っている情報を、マーケティング部門に引き継がないケース。上記の感想もしかり、お客様が言った「◯◯を改善してほしい」「◯◯に不備があった」という情報も「マーケも大変だから仕方ない」と判断して伝えないことが散見されます。

優先順位の不一致
マーケティング部門は「チャレンジ案件なので商談獲得数よりも感想をヒアリングしたい」と思っていたとしてもそれが伝わっていなければ情報は共有されません。また、認知獲得の施策と思って始めたが、予想よりも商談獲得が進んでしまって、ヒアリングや告知啓蒙活動が少なくなってしまったということも発生します。

上記はほんの一例ですが、「連携しよう」といって拒絶する組織は少ないと思います。しかし、その意気込みと実行の間には乖離があるということをぜひご認識いただきたいです。

 おわりに


インサイドセールスは、BtoB 企業が新規顧客を効率的に獲得し、売上を向上させるための重要な手法です。 本記事で紹介した 6 つのステップを実践することで、インサイドセールスの効果を最大限に引き出し、組織の成長を促進できた企業は複数存在します。今後も市場の変化に対応し続けるための成功の鍵は、データに基づいた戦略的なアプ ローチとチームの連携、そして高速PDCA にあると考えています。

今回はあまりテクノロジーの活用には触れていませんが、データに基づいた組織を作るためにはその運用がキーになってきます。次回もし機会があればもう少し詳細なツール活用についてもご紹介したいと思っていますので、ぜひ記事へのいいねや拡散、コメントをいただけますと幸いです。また。この記事が皆様の一助となればと思います。

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