【登壇者】
今井 晶也 氏(株式会社セレブリックス 執行役員 セールスエバンジェリスト)
セールスエバンジェリストとして、法人営業に関する研究、執筆、基調講演等を全国で行う。 2021年8月には“Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術”を扶桑社より出版。営業本のベストセラーとして累計出版数が5万部を超える。 2022年7月には単著二作目として“お客様が教えてくれた「されたい」営業”を出版。 現在は執行役員 CMOとして、セールスカンパニーのマーケティング、営業、新規事業、事業推進を管掌する。
茂野 明彦(株式会社インサイドセールスプラス 代表取締役)
2012年、株式会社セールスフォース・ドットコムに⼊社。 グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部⾨を⽴ち上げると同時に、アジア太平洋地域のトレーニング体制構築⽀援を実施。2016年、株式会社ビズリーチ⼊社。インサイドセールス部⾨の⽴ち上げ、ビジネスマーケティング部部⻑、営業責任者を歴任。2022年、株式会社インサイドセールスプラスを創業。著書に「インサイドセールス–訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド-(翔泳社)」
セールステックを導入するべきか
ーセールステックツールは非常に増えていますが、セールステックツールを導入しないのは時代遅れですか?
茂野明彦氏(以下、茂野氏):セールステックツールがなければ仕事にならないかというと、そんなことはないと思います。例えば、数十年前にパソコンが登場したとき、議事録を紙に手書きで記録する方とパソコンを使いデータで記録する方が混在していました。
ツールがなければ仕事が成立しないわけではありませんが、ツールは業務効率を上げるのに大いに役立ちますので活用するべきだと思います。ただし、売り手側の業務を効率化するためだけにツールを活用することは、現代の営業に合わないと思っています。
ツールは、お客様に対してより良い提案をしたり、お客様に向き合い理解を深めたりするために活用していくべきです。このような買い手側に立ったツール活用ができる企業やセールスパーソンほど、これから活躍の幅が広がっていくでしょう。
ー営業活動が上手く行かないとき、つい新しい施策やツールを導入すれば何とかなると思ってしまいがちですよね。しかしツールありきではなく、顧客視点に立ち目的を整理した上でツールを活用することが重要ですね。
茂野氏:その通りですね。例えば国内に400万社ある企業のうち、自社のターゲットは5万社だとします。5万社へアプローチすることだけを考えるとフォーム営業を自動化すれば1日もかからずに作業は完了するでしょう。
しかし現代において、この方法は効果的な営業手法であるとはいえません。ツールによって業務を自動化するだけではなく、現代の営業スタイルに合わせた効果的な使い方をする必要があります。
今井晶也氏(以下、今井氏):私も同じ考え方ですね。ツール活用の有無によって、お客様との向き合い方自体は変わらないと思っています。
例えばひと昔前にタウンページの上から下まで架電したり、闇雲に飛び込み営業をしたりすることと、ツールを使い無作為にフォーム営業をかけることでは、お客様の体験を損なう点であまり変わっていないと思います。
テクノロジーとアナログの是非ではなく、「お客様に対するコミュニケーションがオンリーワンであるか」に焦点を当てるべきだと思います。ただテクノロジーを活用することで新規のお客様と出会う選択肢は明らかに増えていると思います。
恋愛に置き換えて考えると、例えば理想の人との出会い方を考えた際に、昔ならばストリート、お見合い、合コンなどが主な選択肢だったと思います。しかし現在では、マッチングアプリを使って出会うことが当たり前になっています。
相手が自分に興味を持つかどうかはその人へのメッセージやタイミングも重要でしょう。しかし恋愛のコミュニケーションやプロセスは今も昔も変わらないのではないでしょうか。
営業でもこれと同じような状況が発生していると思います。
成果を上げられない営業組織の特徴
ー本日のテーマの1つに「うまくいく営業組織とはどのようなものか」があります。逆に、うまくいかない営業組織の原因は何でしょうか。
今井氏:成果が上がらない原因は、企業によってまったく異なると思います。しかし本質的な観点でいえば、正しいターゲットと課題の設定、そして正しい解決策を提供できていれば売れる確率は高まります。
うまくいっていない場合は、まずはボトルネックを特定する必要があります。テクノロジーを使うかどうかというのは、もう一歩先の話です。
ーどうすればボトルネックを特定できますか。
今井氏:まず営業プロセスにおける必要な数値を可視化し比較、評価できるようにすることが最も重要です。
営業という一つの大きなイベントをプロセスごとにいくつかのステップで細かく見ることが重要だと思います。例えば、フルマラソンの42.195キロを走る際に、10kmごとにモニタリングを行うのと同じようにアプローチしてみると良いでしょう。
初回訪問の挨拶という段階で、顧客とのコミュニケーションが正常に進んでいるか、顧客からどのような合意を得たいのかを明確にします。
次の段階、ファクトファインディングやヒアリングと呼ばれるプロセスでは、顧客からどのような話を引き出したいのか、その後どのような合意内容を得るべきかを明確にします。
そして具体的な提案に至る際には、成約する確率など目安となる数値を設定します。これらの数値を可視化し比較できるようにすることが大切です。これにより、営業プロセス内におけるボトルネック発見の第一歩となると思います。
茂野氏:私も、データの可視化が非常に重要だと感じていますし、それを比較していくというプロセスも必要だと思っています。
それに加えて「ひとりのお客様の事例」を大切にして欲しいと思います。デジタル化で数字が取得可能になった時代には、皆が数字だけで判断する傾向が強いと思います。
例えば、「このマーケティングチャネルから得られるリードは35%の確率で商談を獲得でき、そのうち15%が成約します。これは平均20%のマーケティングチャネルよりも優れていますよね?」といった具体的な数値だけで判断をすることが多いです。
しかし、この例だと、65%の商談は成立していないわけです。さらに、35%のお客様のなかにはさまざまな課題があるはずです。アプローチしたときの反応はAとなる予定で計画したはずが、実際の顧客の反応はBという展開になることも少なくありません。
私の経験上、データを可視化し定量化しながら見ていくことは重要です。しかし一歩踏み込んで考え、定性的な情報や判断軸を加えることで、より精度の高い本当の課題を発見することができると思います。
今井氏:ちなみに”その一人”を選ぶときにモニタリング対象にするべき人はいますか?
茂野氏:私は「無敗営業」の高橋浩一さんの営業メソッドに関する話がとても好きで、そのなかで特に「ギリギリのお客様」についての話が参考になると思います。ギリギリで受注したお客様、または惜しくも失注したお客様から学ぶことの重要性を説いています。多くの人が当然のように成功例や明らかに失敗してしまった例に目を向けがちなのですが、高橋さんは逆に、ギリギリのところで受注もしくは失注したお客様からこそ、より精緻な情報が得られるとおっしゃっています。
今井氏:圧倒的に成功してしまうと、その企業がすでに顧客のお気に入りであるとか、付き合いが深いといった、再現性の低い要素が影響している可能性がありますよね。それに対して、「ギリギリで勝った」あるいは「ギリギリで負けた」というケースは、その調整が必要だった要素についての示唆が得られる可能性が高いです。ちなみに高橋さんはこれを「接戦」と表現されていましたね。
茂野氏:例えば、私は今井さんの大ファンなので今井さんとの商談では、「人物」が営業の結果に影響を与えてしまうでしょう。今井さんから営業を受けた場合、それがどんな内容であれ、私はその提案を真剣に考えることになるわけです。
「本当に最後の最後まで決められなかったけど、結局は御社を選びました」というお客様は、おそらく細部まで比較をしていたでしょう。つまり、単にAの要素だけでなく、BやCの要素も考慮していたはずです。ですから、ギリギリの接戦で勝った、または負けたという場合に、情報の解像度を上げることは非常に重要だと思います。
ーうまくいってない営業組織にはどのような特徴がありますか。
今井氏:一つ挙げられるのは、「買おうと思っていないお客様を相手にしている」点だと思います。
そのため、「顧客視点」や「顧客の課題を解決する」「顧客主義マーケティング」などの考え方が重要視されますが、単に買おうと思っていないお客様の意見に同調するだけでは、結局は失注してしまいます。
「買わなくていいですよね」と同調するだけではなく、ある意味でお客様の前提を覆し、期待を裏切るような問いやコミュニケーションを提供しなければならないのです。しかし、まだ信用や信頼が築かれていない相手にそういった問いを投げかけること自体が難しい。それが新規営業の難しさなのです。
そのなかで、成果を上げられない組織に見られる特徴としては、“失注を受け入れる文化”がないこと、そして変化への対策が出来ていないことが挙げられます。このような組織は、営業組織として成熟していない、またはパフォーマンスを十分に発揮できていない傾向があると考えられます。
ー失注を受け入れるとはどういうことでしょうか。
今井氏:例えば「新規営業」と聞くと、商品のプッシュ販売などを想像するかもしれません。特にプッシュ営業の場合、例えば10件の商談があれば、そのうち18%程度が受注につながる、というような平均値のデータを元に戦略を練ることがあります。ただ、逆にいえば、82%の商談は失注に終わるということでもあります。
ここで問題なのは、この18%の成功事例にだけ目を向けて、それを再現しようとするだけでは困難が伴うことです。ではどうすべきかというと、売れなかった、つまり失注した82%のケースをどう減らすか、という視点でのマネジメントや改善活動が必要となってきます。このような取り組みを通じて、組織全体としての成果や成長が見込めると考えています。
「成果を上げられない営業組織」について話すとき、個々の営業パーソンのパフォーマンスを高める方法は多数存在します。しかし、組織全体のパフォーマンスを高めるとなると、平均値や中央値を高めるということ、そしてボトムアップが必要です。
ボトムアップの視点では、トップセールスの営業活動をそのままミラーリングするのではなく、間違っているところを正していく、つまり是正のマネジメントが重要となります。そのためには、なぜ変われないのか、なぜ間違った営業活動をしてしまったのか、といったことを集めることが重要です。
ただ、これらの情報を集めるためには、「失注した」という事実を報告できる環境が必要です。これがないと、失注を隠してしまう傾向があります。つまり、失注を受け入れる文化が組織に根付いていることが、改善を進めるための大前提となります。
ー茂野さんはいかがでしょうか。
茂野氏:別の角度から見ると、戦術と作戦の話だと思います。私自身の経験からも、正しい戦術を立てたときはその成果は大きいものになることがほとんどです。
組織としての戦術では、ターゲットの設定や様々な要素が関わってきます。これは一対一の商談をどう進めるかというよりも、どのお客様にどう売り込むのが正しいのか、またはどのようなマーケティングやセールスプロセスを展開するべきなのかといったことが重要になります。そのためには、ツールとデータをうまく活用することが必要です。例えば、顧客データや、法人データなどを有効活用し、顧客への正しいアプローチを開発するといったことですね。
そして、作戦としては、一対一でどう勝つか、つまり最適な商談をどう作り上げるか(有利な戦場をどう作るか)が重要になってきます。例えば、セールスイネーブルメントの領域や、適切なコンテンツ、正しいプロセス設計によっていかに失敗を減らすかといったことです。
また人件費を増やすということは簡単にはできません(兵站は無限ではない)から、どうやって生産性を上げるかが重要です。そのためには、有効なツールを使用して効率化を図ること、または一部の業務をアウトソーシングするなどの対策が必要になってきます。
戦術をしっかりと立案でき、それが組織全体に浸透していることが重要です。さらに戦術を立てただけでは十分ではなく、一人ひとりがその戦術を理解し、解像度を高める必要があります。ツールを導入するだけでなく、何を実現できどのような目的で導入するのかといったことをしっかりと理解すること、これが組織の俊敏性を生むことになります。
過去の話ですが、USのSMB市場を担当する役員に「なぜあなたのチームはこんなに成果が出るのですか?」と問いかけると、「僕が右といったら、みんなすぐに右に動いてくれる。だから変化に強く、コンスタントに成果を出せるんじゃないかと思う」というものでした。これは、彼が自分のチームに対して説明責任を果たしていて、信頼されていたからだと思います。
つまり正しい戦術を立て、それと浸透させ、兵站を自社もしくは外部リソースを使って確保し、効果的に運用する。これができていないと、成果が上がらない組織になるというわけです。
今井氏:戦術を実行できるかどうかはとても重要ですね。
茂野:今はスタートアップやベンチャーだけでなく、すべての企業で変化が激しい時代だと思います。戦術を変えるたびに現場から「またやることを変えるの?」という声が出ることもあるでしょう。私自身は、朝令暮改は大歓迎だと思っています。状況は日々変わるのですから、どんどん変えていくべきだと思います。
ただし、その前提として大切なのは説明責任を果たすことです。つまり、なぜ変えるのか、何を変えるのか、なぜ今回はうまくいくのかといったことをきちんと説明することが重要だと思います。
今井氏:戦略を立てた上で方針を伝えているとはいえ、毎回のミーティングでその戦略に基づいて今何を行っているのか、という部分を可視化し共有している組織は、実は15%にも満たないようです。だからこそ、説明不足でメンバーがついてこないということが起きてしまうようです。
半年後に振り返りのミーティングを行ったとき、「この施策はこの戦略のために行動していたのだ」といえるか、または「これを目指していたのだ」と説明できるかが大事です。それができないと、メンバーそれぞれが最適と思う方向に走ってしまい、本来の目的から外れてしまうことがあります。
だからこそ、立てた戦略を実行に移すためには、それをビジュアライズし説明責任を果たし続けることが非常に重要だということが、今回の話で改めて明確になりました。
茂野氏:本当に大切なことだと思います。いつの間にか方向性がずれていくことはやむを得ないことかもしませんが、そうならないように意識的に組織を運営していく必要があると感じます。
営業DXの進め方
ー確かに、それは多くの方が抱えている問題だと思います。「セールステックや営業DXを進めなければならない」という意識はあるものの、「どのように進めていけばよいのか」、「進めているけれど進まない」といった状況に直面しているのではないでしょうか。この問題に対して、どう思われますか。
今井氏:まずは「イシューの特定」から着手すべきだと思います。具体的には、何が問題で何を解決することで、自分たちが抱えている悩みや問題が解決するのか、ということを明確にすることが大切です。
例えば、営業担当者が営業活動以外の業務に時間を取られてしまっている場合、業務効率化が課題となるでしょう。また、お客様から「いつも連絡のタイミングが悪い」といわれることが多い場合、CRMなどを活用して顧客管理を行い、適切なタイミングでコミュニケーションを取ることが課題となります。
そして、その課題設定をどう組み立てるかが重要です。先ほどのお話で触れたように、データと個々の具体例を行き来しながら、問題解決が成果につながることを確認しなければなりません。
ただし、「私が適切なタイミングで連絡を取れたら喜びますか?」と聞いて「喜びます」と答えられたとしても、それは表面的な意見でしかありません。それよりも、「このタイミングで私がコミュニケーションを取り、またこういった提案を競争相手に対して行ったら、購入していただけますか?」といった具体的なフィードバックを得ることが大切です。
そのためにはアンケート調査だけでなく、現地に足を運び実際の声を聞き、自分たちの提案がうまくいかない理由を探ることが必要です。その結果、課題が見えてくるのではないでしょうか。
ー自分たちだけで自社の営業組織のイシューを特定するのは難しいこともありますよね。その特定にあたってのポイントや、よく陥りがちな失敗などはありますか。
今井氏:それぞれの成功体験を持ち寄って議論すると、しばしば平行線を辿ることが多く、参加者が疲弊してしまうことがあります。議論に疲れ、最も妥当な案に落ち着くことも少なくありません。
そのような結果を避けるためにも、ミーティングに第三者の視点を入れるということが必要だと思います。それは外部の人である必要はありません。ただ、前提をあまり理解していない人が、客観的に見て評価してくれると良いです。
例えば、一定規模以上の企業では経営企画がその役割を果たします。彼らは第三者的な視点で意見を述べることができます。これは、組織全体が真っ向から抱える問題に対して、より客観的な視点で向き合うことができるためだと思います。
ー社内の人間でもいいから少し離れたチームの人間を呼んで議論をするということですね。
今井氏:営業マネージャーを全員トップセールスから選択するのは、必ずしも良いとはいえないと思います。売れている人は、売れていない人の気持ちを理解できなかったり、自分が成功しているのでDXの必要性を感じていなかったりすることが多いためです。
私はDXとは、“職人芸の民主化”だと考えています。トップセールスが当然のようにこなすことでも、それを他の人が真似するのは難しいことがあります。それを技術やテクノロジーの力で、誰でもできるようにするのがDXの本質だと思っています。
その意味では、マネージャーをトップセールスのみでそろえると、違和感に気づかなかったり、問題を発見できなかったりするリスクがあるといえます。そのため第三者的な視点を持つことが重要です。
ー茂野さんはいかがですか。
茂野氏:本題に入る前に今井さんの言葉がすごく響いたので拾わせていただきたいと思います。それは「営業時代に売れるまでに苦労したマネージャーも必要だ」という考え方です。
私は売れていないセールスパーソンと対話したとき、彼らに「マネージャーになってから必要な労力を、今既に前借りする形で経験しているだけなので前向きで大丈夫ですよ」と伝えています。
マネージャーになると、他の人をサポートしたり、指導しなければなりません。その際にトップセールスの中には、売れていない営業の悩みがわからず指導に苦労する方も多いようです。
逆に、売れるまで苦労した営業は、売れるまでに試行錯誤をした経験があるため、それが指導するときの力になるのです。
本題に戻ると、営業DXはトップのコミットメント力にかかっていると思います。トップが決断しなければ、営業DXの効果を検証する期間を十分に確保することができません。
例えば、「SFAを使いたいが、稟議を通すにはどうしたら良いでしょうか」というような質問をいただいたのですが、「それはツールベンダーがプロなので、彼らに問い合わせてください」と返答しています。しかし、これは社長が「このツールを使えば何%売上が上がるのか?」という問いに対して解を持てていないことを示しています。ツールを導入して目標を達成できなかった際に、トップが導入を提案した部下を詰めることは意味がありません。
私がご支援した経験の中で、ある地方企業様がやる気に満ち溢れていました。そこで、私は「御社で勉強会を開催するので、そこに経営層がどれだけ参加できるかで、私が支援をするかを判断させてもらいたい」と提案しました。私が主催した勉強会では、役員のほとんどが参加してくださったのでご支援させていただくことになりました。その結果、初年度から大きな成果を上げることができました。
このことからも、営業DX推進にはトップがどれだけコミットするかがとても大切です。例えば、社長を展示会に連れて行くなど、トップの“コミット”を引き出す取り組みが重要です。
今井氏・茂野氏が「今」気になっているセールステックは?
ーお二人が今気になっているセールステックは何でしょうか。
茂野氏:私は買い手を重要視しているのでDSR(デジタルセールスルーム)が気になっています。デジタルセールスルームは、売り手だけではなくて、買い手にとっても本当に便利なので推奨しています。
もう一つはデータ系のツールです。企業データやインテントデータなど様々ですが、それらがよりセールスに活用されていくことによって、お客様にとって素敵な購買体験を提供することになると思います。
ー 今井さんはいかがですか。
今井氏:私はAIドリブンセールスという考え方に非常に関心を持っています。最近の研究対象でもある生成AIの活用のうち、生成AI×営業です。
ー 特に気になっているユースケースはありますか。
今井氏:営業活動の生成AIの活用例をご紹介します。現在、生成AIの普及率は11%ほどですが、人間が習慣化して成果を出せるようになるまで6ヶ月くらいかかるといわれているので、今から生成A利用して仕込んでおくと良いと思います。
生成AIは副操縦士のような形で調査、準備、相談、整理の4つの場面で活用できます。
私の場合は、ChatGPTを利用して調査を進めることが多いです。営業パーソンの商談シートや事前準備シートと呼ばれるものを特定のプラグインを利用して、指示書を読み込んだり、ウェブブラウジングして、分析や調査を進めています。
仮に私がBeMARKEに対して営業をした場合、ターゲット、収益構造、提供価値、強みや弱みなどをウェブサイトやメディア記事、youtubeなどをプラグインを利用することで自動で出力します。
それを踏まえて、PEST分析や3C分析などについての情報をAIが自動でピックアップしてくれて、商談の際に営業マンがする質問をAIが提言してくれます。
分析の精度は7〜8割程度です。メディアに出ている方であれば精度は高まりますし、出ていなければネット上にリソースがないので精度は悪くなります。
確かに、1件に対して本気で準備すれば分析AIには勝てます。しかし、1日3件以上商談が入った場合に1件1件丁寧に準備をすることができるでしょうか。3件商談して5件打ち合わせをして、その合間で準備にコミットするのはなかなか難しいと思います。だから6〜7割でもAIが準備してくれると、とても便利ですよね 。
その他には、商談準備の自動化やChatGPTを客役として営業ロールプレイングに活用しています。この時、Webpilotというプラグインを活用して、実際にメディアをブラウジングして出力をしています。
茂野氏:生成AIの活用は、マネジメントにも活用できると思います。例えばメンバーにChatGPTを客役として、ロールプレイングしてもらうと、準備の着眼点や思考プロセスが明らかになります。
また、普段今井さんが営業前の調査をどのように行っているかよく分かると思います。これは調べるのに労力を要しアウトプットが弱くなってしまうメンバーにとって非常に有益だと思います。
生成AIは非常に使い勝手が良いです。しかし、まだまだ活用できるマネージャーの数は少ないと思います。デジタルリテラシーが低い営業パーソンや営業マネージャーは危機感を持つべきです。
今井氏:私も営業DXで多くの失敗を経験しました。必ずしもデジタルツールを使い続けなければならないというわけではありません。会社の戦略や方針に合わせてベストなテクノロジーを常に選び続けることがとても大切です。
SaaSは永遠のβ版という言葉があるように、営業組織もまた永遠のβ版だと思っています。常に状況に応じて改善をしていただけたらと思います。
ーありがとうございました!