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偶然に任せるのはもったいない。正しい失注フォローの仕方、教えます。

原 秀一 | セールスリクエスト2024/1/10
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本記事では、ナーチャリング施策の一環として商談済み企業(検討が進まず滞留してしまっている商談、失注と判断した商談)の受注を設計した事例を共有します。

原 秀一 株式会社セールスリクエスト 代表取締役。大手人材企業にて求人広告営業に従事。その後、弁護士ドットコム株式会社にてフィールドセールス・インサイドセールス・営業推進に従事、スタートアップ企業を経て2019年にセールスリクエストを創業。

取り組みの発端は支援先企業でオペレーションの不備を見つけたことです。当時、「滞留・失注商談は営業担当(以下、FS)がフォローしているからインサイドセールス(以下、IS)からフォロー不要」というルールで運用されていましたが、実際に確認してみると「フォローどころかTo-doも付けられていない商談がある」ということがわかりました。


そこで「まずはしっかりフォローする体制を整えよう」ということでスタートしたのですが、闇雲にフォローするよりもSFAを活用しているのであれば、最初から体系化した運用した良いと思い、いくつかのルールを決めて設計したところ、滞留・失注商談の10%程度から再検討の機会をいただけるようになりました。今回はそのプロセスを順を追って皆様へご紹介していきます。


Step1:フォローする対象を決め、その定義を明確にする


今回は主に滞留・失注の2の商談を対象として設定しました。それぞれの定義は以下の通りです。


滞留商談

滞留商談とは最終コンタクト(メールやコールも含む)後、60日以上未活動の商談と定義しました。


ポイント

・滞留商談の定義は現状を細かくヒアリングしてから定義することを推奨

・商談期間が比較的短い製品、サービスは、60日と言わず自社の平均リードタイムを超過した商談を滞留として定義する形でも良い


失注商談

失注商談とは以下の理由で受注に至らなかった商談と定義しました。

  1. :優先度が下がりペンディング(検討を中止)した
  2. :他社の導入を決定した
  3. :担当者と音信不通になった


ポイント

・SFA上の商談管理項目にプルダウンで失注理由を残すことを推奨

・価格懸念の失注商談は受注率が著しく低いため対象外とした


Step2:フォロールール策定を行う


対象の商談をフォローするルールを決めて運用の定着化を目指していきます。ここは滞留商談、失注商談ともに同じ運用としましたのでまとめて解説します。


①対象の商談を誰が対応するのか決める

商談の対象だけ決めてフォローはFSに一任するケースを多々見受けますが、FSは既存のフォローや進行中商談対応に手一杯で対応出来ないことが多く、結局はフォローできないという状況に陥りがちです。ですから今回は全てISでフォローする事にしました。


②失注した際、FSがSFAに記録する情報のルールを決める

再度商談化するためにも、受注するためにも失注時の情報は欠かせません。そこで、失注時に以下3つの情報を必ずSFAに入力する事にしました。

・次回のアプローチ日(予算策定の時期や体制変更のありそうな期初、お客様の閑散期など)

・アプローチする担当者(複数と商談していることもあるので誰宛てかを決める)

・何をフックに連絡するのか(お客様の興味関心や検討のきっかけなどを加味する)


※SFAへの入力イメージ


③ワークフローを設定する

簡単はワークフロー(期日にメールを配信する、To-doを発行するなどのSFAの機能)を組んで抜け漏れを防止するようにしました。


④タスクの抜け漏れを誰が全体管理するのかを決める

ISマネージャーがダッシュボード(SFAの機能)を使ってダブルチェックをしていくことにしました。


Step3:フォロープログラムの設計


策定したルールに沿ってSFA上で簡単な項目やダッシュボードの作成、ワークフローを設計していきます。(例としてSalesforceでの設計方法を公開しますが、基本的にはどのSFAでも思想は同じなので実践してみてください。)


※全体像のイメージ


失注商談

①商談オブジェクトに項目を作成する

 1.「次回アプローチ日」を入力する項目をデータ型「日付」で作成




 2.「アプローチする担当者」「何をフックに連絡するのか」を入力する項目をデータ型「テキストエリア」で作成



②レポート/ダッシュボードを作成する

 1.商談オブジェクトのレポートでアウトラインの行に「次回アプローチ日」を設定。検索条件で「次回アプローチ日」項目の相対日付を「今月」に設定

 2.ダッシュボードに総計値グラフで表示




③To-doの抜け漏れを確認できるレポート&ダッシュボードを作成する

 1.活動オブジェクトから「ToDoと行動」を選択してレポートを作成

 アウトラインの行に設定。検索条件は件名を「滞留商談掘り起こし」日付を「今月」で設定。




 2.ダッシュボードの総計値グラフで表示




滞留商談

①最終活動後、60日経過したらIS担当者にToDoが自動発行されるワークフローを設定する

 1.設定からワークフロールールを選択

  ・ルールは新規作成で商談オブジェクトを選択

  ・ルールは「60 > DAY(LastActivityDate)」を適用



 2.ワークフローアクションでToDoの作成

  ・割り当て先をISのロールに指定

  ・期日のルール適用日をプラス0日で指定




②ToDoの抜け漏れを確認できるレポート&ダッシュボードを作成する

失注商談と同様に設定してください。


結果


結果として、以下のような商談機会の創出につながりました。

・滞留、失注商談からの再商談化率が10pt向上

・滞留商談が動き出す場合、受注までの期間が新規商談よりも短い傾向

・滞留失注商談の60%が未着手であったがISフォローで0に


つまり新たなコストをほとんど掛けずに商談を創出し、かつ商談期間も短いことで、生産性の高い受注チャネルを構築できたことになります。


最後に


運用がしっかりと動き始めると、失注からの再商談化も含めてひとつの受注フローとなるため、ホイールのような形で投資が無駄になりづらい体制が構築されます。また、お客様にとっても「今ではない」という状況に対して無理にFSからプッシュされることも少なくなり、かつ定期的な連絡があることで再検討時の手間を減らすことができます。


よくあるのがFSは即案件化する商談が欲しい、温度感の低い商談(失注商談の掘り起こしなども含む)はISで温めて欲しいという構図になりますが、経験則からメール及び電話のみで温める難易度は非常に高いです。


結局のところ、お客様の変化に合わせて最適な商談機会を設定することが、最も効果のあるアクションなのではないかと思っています。今回行なった失滞留・失注商談のフォロープログラムの設計は、業績貢献に繋がる可能性が大きく、かつコストもほとんど必要としないので、SFAを活用する企業はぜひ取り組んでいただきたい内容です。


また、この記事で紹介した支援が必要な方はぜひこちらからご連絡ください。

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