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顧客を魅了する営業資料の作成術 -3つの視点とカスタマイズのポイント-

源栄 公平 | インフォマート2024/6/23
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オンライン商談に限らず、営業活動は ”第一印象” が全てと言っても過言ではありません。その第一印象に影響を与えるキャッチコピーとしての営業資料の「タイトル」は重要な存在です。この記事では、営業資料を作成する上でのポイントはどこか?そして、顧客の興味を惹く「課題喚起」のテクニックを深掘りしていきます。「タイトル」は、顧客の興味を喚起するための鍵であり、「課題喚起」は、その興味を具体的な行動へと導く動機付けになると考えています。営業資料をただの情報伝達の手段として捉えるのではなく、顧客との対話を生み出すツールとして活用する方法をお伝え出来ればと思っています。

株式会社インフォマート 部長。大手通販会社に新卒入社し、個人営業職からキャリアをスタート。その後、営業企画室長、営業部長を歴任。2010年インフォマートに中途入社。Beauty Infomart 事業の新規立ち上げを経験。また、社内初のインサイドセールス部門の立ち上げ及び組織運営に従事。現在は、業界チャネルのプロダクト統括を兼務。

オンライン商談こそ営業資料にこだわるべき理由 


 「オンラインセールス」で営業資料の重要性が高まる背景

(1)非対面のコミュニケーション:
 ・対面でのボディランゲージ等の利点がないので、資料がその情報を補う必要がある。
 ・オンラインでは、表情やジェスチャーが限られるので、視覚的に魅力のある資料が相手の注意(注目)を惹く事になる。
(2)情報整理とアクセスの容易さ:
 ・オンラインでは資料を瞬時に共有し、参照する事が可能なので伝達効率に優れている。
 ・CRMツールを活用する事でカスタマイズされた資料提供が可能となり、個別対応力が向上する。
(3)ブランドイメージの構築:
 ・資料はその企業のブランドイメージを色濃く反映する。
 ・魅力的な資料は、顧客の関心を引き、エンゲージメントを高める効果を期待出来る。
(4)購買支援、稟議支援の役割:
 ・購買プロセスにおける決裁者や承認者に対し、正確に商品をアピールする事ができる。
 (稟議申請の補填資料、または、顧客社内での周知資料として活用される場合がある。)
 ・資料内容やそのデザインを企業やサービスへの信用に繋げる人が一定数存在する。
 (資料を顧客からの信頼を獲得するツールとして捉える事がリスク回避となる。)
(5)追跡と分析の容易さ:
 ・オンラインツールを有効活用し、資料の効果を測定する事で改善に繋げられる。
 ・顧客の興味のあるページやセクションを追跡し、改善点を把握する事が出来る。
 
オンライン商談において、営業資料は単なる情報伝達の手段ではなく、顧客との関係構築において重要な役割を果たします。顧客とのコミュニケーションを強化し、ブランド価値を高め、最終的にはセールスに直結する重要ツールとしてこだわるべきだと考えています。
 

営業資料を作成する上で、気を付けたいポイント①「3つの視点」


顧客は「資料を読みたいと思っているわけではない。」 という前提を理解する。
 
 (1)ストーリー「 Why → What → How 」性 
・顧客はなぜこの商品が必要なのか?何を達成できるのか?具体的に何をするべきか?
・商品のメリットや特長を具体的なエピソードや活用事例で語る。
 ※単純な事実や数字より、活用事例は記憶や印象に残る。
 (2)課題(疑問)解消
・顧客の知りたい情報を網羅する。
・業界の共通課題(事前の仮説)から訴求する。
・ROI 事例(費用対効果の算出)を見せて、具体的な導入効果を見せる。
・競合サービスとの差別化(自社の優位性)を、顧客目線で訴求する。
 (3)簡潔さ、わかり易さ
・無駄な言葉や表現は削ぎ落とす。
・言葉を具体化する。また、専門用語は可能な限り使用しない。
・前提説明を省略しない。
 
営業活動において、抽象的な説明よりも、具体的な事例やエピソードを交えることで、リアリティを高めることが可能です。特に重要なのは、「ストーリー」性を持たせることです。ストーリー性を持たせるためには、顧客属性から課題や関心事を具体的に整理し、顧客理解を深めた上で、活用事例を効果的に伝えることがポイントになります。活用事例においては、以下の6つのポイントと伝える順序を意識することが重要です。
 

営業資料の作成で気を付けたいポイント②「カスタマージャーニー」を意識

 
二つ目の資料作成時のポイントは、「カスタマージャーニー」を意識する事です。ご存知の通り、「カスタマージャーニー」とは、顧客が製品やサービスに出会い、購入や契約に至るまでのプロセスを指しています。また、このプロセス(顧客の体験・感情・行動)を可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」と言います。

(1)顧客理解の深化:
カスタマージャーニーマップは、顧客が製品やサービスに触れる全過程を可視化します。顧客のニーズや疑問点、障壁を理解し、それに対応する営業戦略を立てることができます。

(2)体験の最適化:
ジャーニーマップを用いることで、顧客がどのタッチポイントでどのような体験をしているかを把握し、顧客体験を向上させるための改善点を特定できます。営業資料にこれらの情報を盛り込むことで、より効果的な提案が可能になります。

(3)関係構築の促進:
顧客の旅路を理解することで、顧客との関係を深め、信頼を築くことができます。営業資料にジャーニーマップを取り入れることで、顧客に対してよりパーソナライズされたアプローチを示すことができ、長期的な関係構築に繋がります。
 
当社も、下記の様なカスタマージャーニーマップを意識しながら、営業資料の構成を考えています。目の前の顧客がどの検討フェーズに位置しているか? を第一に考え、「興味関心の状態(情報収集の段階)」なのか?それとも、「他社サービスとの比較検討まで進んでいる状態」なのか?等の検討フェーズを意識しながら、資料の構成を考えます。

 営業資料の作成で気をつけたいポイント③「タイトル」と「課題喚起」へのこだわり

 
(1)「タイトル」の重要性
資料概要が明確に伝わるタイトルや、業務課題について仮説を匂わす様なタイトルが理想的です。「この資料で何の情報が得られるのか」また「何を解決するサービスの提案なのか」を端的に記載する事が重要です。タイトルとサマリーで商談目的を顧客とすり合わせる事ができるので、こちらの提案に耳を傾けてくれる状態を創り上げる効果が期待できます。
 
営業資料のタイトルを考える際に心掛けるべきポイントを箇条書きでまとめておきます。
 ・明確性:簡潔で、内容が一目で理解できる。
 ・関連性:顧客のニーズや関心事に直結させる。
顧客が自分事で捉えられる関連性の高い言葉を使う。→「事前の仮説立て」
 ・説得力:信頼性の高い情報源からの情報を使う。→「情報収集ツール」活用
 ・独創性:差別化を図るため、独創的な表現を用いる。
 ・動機付け:顧客が資料を読みたくなり、行動を促すような言葉を選ぶ。

よく見かける「(提案するサービス名)のご紹介」の様な資料タイトルで、こちらの提案に耳を傾けてくれる状態を創り上げる事は難しいと思われます。

以下で述べる様な、「その企業や業界の抱える課題」をテーマに投げかけたり、「ミーティング目的」自体を資料タイトルに含めたりする様な工夫が必要だと考えます。
 
(2)「課題喚起」の重要性
誰が(経理担当、システム担当、営業 等)、どの様な状況で(人材不足、兼務多忙 等)、どの様な課題に直面しているかの認識を合わせ、この資料の提案で(当該サービスの導入により)、解決できる課題を明確に提示する事が重要です。その為に、顧客の抱えている課題、あるいは当該業界の抱えている課題を正確に把握し、その内容から仮説を立てて、営業資料に反映させます。

この流れの中で、営業職として、業界課題、業界概況を理解しておく事は、営業上大きなメリットがあります。一度理解しておくと、その業界に属する企業との商談にも役立ちますので、汎用性の高い知識(※)を効率良く身に付ける事に繋がりますので、効果的な商談の準備手段であると言えます。
 
(※)業界情報の汎用性について

少々、話しが横道に逸れますが、リード経由別に資料構成を変える事は非常に効果的です。具体的なサンプルとして、インバウンド経由とアウトバウンド経由の商談は顧客の検討フェーズが全く違うので、同じ資料構成で商談に望んでしまうとミスマッチが起きます。当社でも以下の様な形で構成を変えております。
 
※「インバウンド用」の商談で利用する提案資料
商品説明をやや多めで、加えて他社サービスとの比較や違い(当社優位性)を訴求する構成にしており、導入事例やメディア掲載などは、後半に配置している。

 
※「アウトバウンド用」の商談で利用する提案資料
商品説明は後半におき、少な目に構成しています。サービスで解決できる課題の顕在化の為の示唆質問を意識的に織り交ぜながら、近い状況(業界、規模、課題)の事例を増やす構成にしています。インバウンド用と比較すると、潜在ニーズの掘り起こしを意識して、導入事例やメディア掲載をサービス概要よりも前に、置いているのが特徴です。

  

最後に

 
営業資料は、「タイトル」と「課題喚起」に こだわるべき だと考えています。営業資料を作成する際、資料の「タイトル」と顧客の「課題喚起」は、重要な要素となります。「タイトル」は、サービスの第一印象に大きな影響を与えます。また、的を射た「課題喚起」を行なう事で顧客の興味関心を惹き付ける事もできます。顧客に対する理解を深めながら、信頼関係の構築に繋げる事ができますので、この2つの要素を組み合わせることで、効果的な営業資料が作成できると考えています。


業界情報は営業資料にインパクトを生み出す:
業界チャネルを活用する事で、業界課題を明確に抑える事が可能です。
 
当社のBtoBプラットフォーム業界チャネルをご利用いただく事で、顧客に興味関心を持っていただく営業資料を作成する為に必要な各種情報を得る事ができ、営業組織として、業界理解や企業理解の手順を「型化」する事が可能となります。
 
業界チャネルの主要機能として、大きく以下の三つに分かれています。
1 業界を体系的に把握する「業界レポート」機能
2 業界のメインプレイヤーの業績を即座に確認出来る「企業ダッシュボード」機能
3 企業のリリース情報を瞬時にキャッチできる「ニュース収集」機能
 
簡単にサービスコンセプトを説明しますと、営業部門やインサイドセールス部門の方々が、5分とか10分の非常に短い時間で、企業情報に留まらず、対象業界の➀市場成長率、②メインプレイヤー、➂外部環境、➃今後の展望 を把握する事が可能なリーズナブルなセールスツールです。ご興味ございましたら、ご連絡頂けますと幸いです。
 
それでは、まとめになります。
1 営業資料を作成する上でのポイントは、「ストーリー、課題解決、簡潔さ」
2 事前準備を徹底し、仮説を構築し、タイトル、課題喚起 の2つにこだわって資料を作  成する事が重要。 
3 業界チャネルを使う事で、事前準備を平準化し、社員全員が同レベルでの営業準備 を実  現できる。

営業資料の「タイトル」には、具体性と独自性を持たせることが大切です。また、「課題喚起」では、顧客の感情に訴えかけるストーリーテリングを用いることも効果的です。これらの内容を駆使することにより、営業資料は魅力的で説得力のあるものに変化し、結果として商談の成功率を高めることに繋がっていくと考えています。

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