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BDRの成果を最大化する"スクリプトのプロセス分解"とは

野田 勇次郎 | エンSX2024/6/23
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BDRの成果を出すプロセスとして、様々な切り口(業界単位、Tier単位、NG分類単位、スクリプト単位等)がありますが、意外とスクリプト単位でのプロセス分解はほとんどの方が実践されていません。本記事では、BDRを徹底的に数字に置き換えて、科学していくプロセスについて公開いたします。

野田 勇次郎 | エンSX事業責任者。2016年エン・ジャパンに新卒入社。法人営業からキャリアをスタートし、チームリーダー、マネージャーを経験。その後、SaaS領域やWebサイトUI・UXなどの新規事業に営業責任者として携わり、自社の営業部隊だけでなく、パートナーチャネルを活用した事業立ち上げを成功させる。2022年からはエンSXの立ち上げに参画し、事業責任者を務める。趣味はキックボクシング、サウナ。

最も効きの良いBDRのプロセス分解

 

私の管掌するエンSXでは、エン・ジャパンの主幹事業(エン転職)において、60億程度の売上から5年で約4倍の240億まで拡大したという急成長の歴史があります。しかも、この売上拡大を実現させたときの一番のポイントが、BDR戦略・組織設計でした。

 

この時に体系化したノウハウにおいて、「プロセス分解」を深く行なうことがアウトバウンドの成果を引き上げたと考えています。


アウトバウンドの方程式

 既に多くの方が、既知の内容だと思いますが、上記はアウトバウンドの成果(商談獲得)を出すうえでのよくある方程式です。この方程式に注目する際、主にコンタクト率を改善するにはどうすれば良いか、、コンタクトアポ率を向上させるにはどんな取り組みが可能か、に着目し分析している方も多いのではないでしょうか。


コール数

└インサイドセールスの能力には左右されず、リソースとオペレーションによって改善可能。実施後、すぐに効果を得られやすい。

 

コンタクト率

└ここで示すコンタクト率とは、キーマンへの接続までを指す。通話時間は20-30秒程度。いかにキーマンに繋がれるかがポイントであり、やるべき基礎(例:キーマン情報の収集、戻り時間の確認、改め電話等)を徹底しているだけですぐに成果は出る可能性が高い。架電者ごとに大きな差は出にくい。

 

コンタクトアポ率

└架電者によって成果が大きく分かれる。通話時間は短くて3分から10分程度。キーパーソンと話せてから短時間で信頼の獲得、ヒアリングの実施、商談獲得と注視するポイントも多岐にわたる。



BDR分析のよくある例


アウトバウンドを自社で実践する際に、改善に向けた切り口は様々あると思いますが、よくあるものを簡単に紹介します。

 

1     セグメント:エリア軸

主要都市(東京など)は繋がりにくいが、凖主要都市(福岡など)はキーパーソンに繋がりやすい。

 

2     セグメント:企業規模軸

SMBほどコンタクト率が高く、大手になればなるほど難易度が上がる。

 

3     セグメント:業界軸

業界の解像度が高ければ、自社の商材の販促先として適切か判断しやすい。業界別の傾向分析など。

 

4     セグメント:シナリオ軸

セールステックツールの活用などで簡単に分析可能。採用情報(〇〇の採用をしている)、システム利用(〇〇を導入している)、DX強化をしている(有価証券報告書でのシナリオ)などによる傾向分析。

 

5     スクリプト:NG理由軸

アポNG理由を分類し、それぞれの対策を準備する。そのうえでスクリプトを強化し、アポ率向上を目指す。

 

上記①~⑤は割とよくある軸だなと個人的には思います。アウトバウンドの改善において、すぐにターゲットのセグメントに着目してしまうケースや、アポ率をあげるためNG理由に着目するというベンダーの方も比較的多いのではないでしょうか。



エンSXが推奨するスクリプト単位の分析


まずはこちらをご覧ください。

上記は、当社でのアウトバウンドの成果の一例です。実際に300架電実施したデータを分解しています。

 

左から右へ架電プロセスを示していまして、受付通電→用件説明→キーパーソン接続→利点訴求→日程打診→アポ許諾となっています。架電300件をすべて定量データに落とし込み、どこでどれくらい離脱しているか=なにを解決することが成果に寄与するのかを分析しています。


見ていただくとお分かりになるかと思いますが、気になる箇所は2点です。

①利点訴求から日程打診への移行率:28%

②キーマンNGから切り返しまでの移行率:25%

 

私はこの数値がとても低いように感じ、実際に調べていくとこれまでの実績とも実際に乖離がありました。そこで要因をさらに深堀していくと、以下のことがわかりました。

 

①の要因:利点訴求の内容が多すぎて日程打診までいけずに切電されていた。

②の要因:キーパーソンからNG回答があった後は、切り返すことを躊躇していた。


上記の内容から、具体的に以下を実施しました。

①の打ち手:利点を絞り、日程打診までを一気に話せるスクリプトに変更。

②の打ち手:切り返しを徹底するオペレーション。毎日のロープレ実施。


録音をひたすらチェックしたところ、①では何より日程打診前に会話を挟まれて打診に至れていないことに着目。利点の言い回しをシンプルに短くし、読点・息継ぎを少なく日程打診するスクリプトに変更しました(スクリプトを作ったら、必ず耳で確認します)。

 

結果的にNGが返ってきたとしても、日程に対するNGなのかニーズに対するNGなのか、そこからまた切り返しの会話を続けられますので、またチャンスが生まれてきます。

 

日程打診は一種の「テストクロージング」であると考えています。つまり、前述した通り、「なにが原因で商談の機会をいただけないのか」が明確になることで、次のステップが明確になり、それが(時期は関係なく)商談機会の獲得につながります。


②では、切り返しができない理由をISメンバー全員にヒアリング。すると大半が「高圧的な雰囲気を感じてしまう」「相手の迷惑になるのではと引いてしまう」という心理的なハードルが要因になっているようでした。

 


発見した課題を改善するために必要な”受け止め”


そこで、まずは切り返しの前に重要な「受け止め」の言葉をロープレ形式で実践。先述のとおり、商談機会をいただけないのには何かしらの原因があります。NG理由に合わせて即座に受け止め→切り返しを行なうトレーニングを実施し、まずはお客様の言葉を受け止める部分を集中して改善しました。以下にいくつかの具体的な例を記載しますので、ぜひ自社でもご活用ください。


忙しい:「大変失礼いたしました。また、お忙しい中ご対応ありがとうございます。ではご迷惑にならないよう、お電話が可能なタイミングでご連絡したいのですが、AorBの日程ではいかがでしょうか?」」

 

不要(他社・自社で十分):ご回答ありがとうございます。実はいま◯◯社をご利用中のお客様 or 自社で〜というお客様に最適なご提案があり、ご連絡させていただいているんです」※他社利用等への優位性、メリットを事前に準備しておく。」

 

不要(興味がない):「ご回答いただきありがとうございます。よく皆様からそのようなお言葉を頂戴するのですが、一点だけ現状についてお伺いさせてください。他社様ですと〜」※他社の事例などを元に課題や共通点がないか探っていく。


全員が100%受け止め(NG回答を一度受け止めてその真因を探るコミュニケーション)をできるようになったら、切り返しのバリエーションをロープレで実践。弊社ではこれを毎日行ないました。


また、ロープレだけではなく、①の日程打診、②での受け止め、切り返しについての実施度をあげるため、実架電の録音も全員分をランダムに数件ずつピックアップし、毎日確認。日程打診できているか、受け止めの言葉があるか、切り返しトークができているかをそれぞれ点数にし、デイリーで各メンバーのポイントを集計していきます。そうすることで各個人がどのポイントで躓いているかが把握できるので、ロープレ+αで個別のFB、トレーニングを実施し、スキルの底上げにつなげていきました。


上記の内容を実施して一ヶ月。以下のように数値が改善されました。

 

①利点訴求から日程打診への移行率:28%→66%

②キーマンNGから切り返しまでの移行率:25%→60%

 

そして、上記数値を改善したことにより、最終的な成果が実施前の2倍以上なりました。

-Before:架電数300件→アポ数3件(コールアポ率1%

-After  :架電数300件→アポ数7件(コールアポ率2.3%

 

これらの成果は、よくある分析例として挙げていた切り口だけでは発見できなかった点です。スクリプトのプロセス単位での分析は、リスト属性に依存しないというのも特徴的であり、効果の即効性も非常に高く、弊社では徹底的にこの分解を実施しています。

 


最後に

 

いかがでしたでしょうか。アウトバウンド営業は一見すると、とても泥臭く、成果がでるまでとにかく量で解決するというイメージが選考していますが、決してそんなことはありません。もちろんリストも重要ですが、しっかりとプロセスを分解し数字に置き換えていくことで、課題を簡単に発見することでき、それを改善につなげることが可能です。


量は重要な要素ですが、同時に課題を的確に捉えて改善するという意識や取り組みをすることで、「成果のための量」から「高速で改善をするための量」へと進化させることができます。現在、営業代行などに外注をしていて、「コンタクトアポ率が低い」という振り返りがある場合、ぜひ「スクリプトに沿ったプロセス分析をしたらどうなりますか?」と聞いてみてください。もしかすると、劇的な変化があるかもしれません。

 

エンSXでは、本記事でご紹介したようなエン・ジャパンで培ったセールス・マーケのノウハウをもとにしたインサイドセールス代行、ならびにセールスの育成を支援しています。エンSXへのご相談・お問い合わせはこちらよりお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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