まずはじめに
今回ご紹介するCXOレターの場合、送付準備までにはかなり手間をかけるため、月30〜50通がスタンダードな通数となります。一通、一通手間をかけているのでそこまで大量には送ることはできません。そもそも、エンタープライズ開拓は大量に送付して一定の転換率を目的にするものではないと考えています。
手紙は奥が深く、しっかりと手間をかけることで転換率は大きく変わります。エンタープライズBDRを志す、もしくはすでに活動されていて苦戦している、そんな皆さんの役に立てればと思いますので、参考にいただけますと幸いです。
成果について
レター送付をしっかりやりきれる場合、リストからの転換率はおおよそ、6〜30%です(商材やターゲットによってばらつきがあります)。アウトバウンドの世界では1%が平均転換率ですが、レターはやり方によって、驚異の獲得率になります。それではどんなポイントなのか?各工程ごとにご紹介していきます。
ターゲティング
1.送る宛先は常に最新情報をリサーチ
こちらは前回でも紹介しましたが、エンタープライズ企業は人事異動が年に2〜3回は必ずあります。そのため、最新情報を把握し、鮮度の高い情報でターゲティングを行なわなければなりません。また、サービスを販促していきたい場合は、経営層と言っても、執行役員、部長を軸にアタックしていくことを推奨しています。
試しに、まずは、私の所属するエン・ジャパン(株)のケースで見てみましょう。以下は、プレスリリースより以下の情報より参照したデータです。
2024/05/17 取締役候補者及び監査等委員である取締役候補者の選任に関するお知らせ
「事業責任者と商談したい」と考えるのであれば、岩﨑、沼山をまずはリサーチします。リンク先をご覧いただければ確認いただけますが、管掌範囲がしっかり記載されています。一方で、河合の管掌範囲は記載されていません。
この手のケースはとても多いのですが、「取締役」「常務執行役員」という役職者に対して「管掌範囲かどうかは曖昧だけれど、会えるならラッキー」という状況や考えでの曖昧なアプローチはやめておいた方がいいです。提案自体が的外れになりますし、その内容で企業の経営陣から商談の機会を獲得することはできません。だからこそ勇気をもって送付対象からは除外してください。
継続してリサーチしたところ、当社で作成している採用広報のnote記事にたどり着き、ここで新しいキーパーソンを発見することができました。人材活躍支援事業の営業責任者である伏屋です。
人材活躍支援事業部の営業部長ということで、もし皆さんの提案商材が「営業部門に提案すべきもの」だった場合、このような管掌範囲が明確なキーパーソンを見つけることが、アプローチの第一歩です。ここを疎かにしてしまうと、提案内容はもちろん、「なぜ会いたいのか」「貴社にとって最高の提案をしたい」という部分がどうしても甘くなります。
ですから、兎にも角にもまずは明確なキーパーソンを見つけることを徹底してください。この時点で転換率に大きな差が出ます。
2.コンタクト(通電)を意識してターゲティングを
レターを送付してもコンタクト(通電)しづらい業界があります。どれだけ送っても届かない/率が悪い業界です。これまでの経験から、IT業界は避けた方が良いと考えます。レターを送付した後、コールをかけた際にほぼ繋がらないためです。受付代行、フルリモートなど、正面突破の際に比較的難易度が高い業界です。ここはCxOレターのアプローチを避け、別のチャネルからの開拓が効果的です。
文面作成〜送付
1.送付主の名義について
これは皆さんも実践されていると思いますが、レターを送る際に、送り先のキーパーソンにふさわしい役職の名前を借りて送付をするようにしましょう。最低でも以下の4つの役職者には、社内で名義を借りれるように協力してもらいましょう。
- 代表取締役、取締役、執行役員、事業責任者
日本人は、相手の役職を気にすることが多く、大企業だと特にそれが強い傾向があります。そのため、送りたい先が執行役員 マーケティング部長であれば、こちらも役員以上の名義で送るのが筋です。ここで平社員の名義で送るのであれば、商談の獲得に至らず、転換率は向上しないと思ってください。
また、注意してもらいたいのは送る名義は「同席してくれる人」の名前を使うことです。同席しない形でも、問題ないケースもありますが、相手からすると「なぜその当人がこないのか」と、失礼になる可能性が一定あります。しっかりと社内に目的や意図を説明したうえで、協力を仰いでください。
私は、CxOレターは上位役職者ほど積極的に活用すべきだと思っています。上位役職者こそ、自分の肩書を使って、営業メンバーができない営業をすべきです。椅子に座っているだけで現場に出ない上位役職者は、正直バリューを発揮しきれていないとしか思えません。だからこそ、ここの理解を会社として持てているかという点もとても大切だと思っています。
2.便箋、封筒、切手に手間とお金をかける
特に、料金後納郵便、窓あき封筒、宛名シール、会社名の印刷済み封筒など、この辺りの手紙はほぼ意味を成しません。
和紙×限定切手を組み合わせることです。お金をかけたくないのは理解できますが、受け手の立場に立って考えてみましょう。手間のかかっていない手紙は”一括送付の営業レター”と判断され、場合によっては開封すらされずに捨てられてしまうこともあります。
「きちんと相手に届いてほしい」
そう思うのであれば、お金と手間は書けるべきです。もしその手紙を作成するのに2時間かかったとして、簡易な方法で送付をしますか?皆さんの手元に届いた手紙がしっかりとした素材であった場合、開いてみようとは思いませんか?手紙の作成、準備段階でどのくらい時間と情熱をかけたのかが、この工程に現れると思います。
3.手書きで書く(本当に手書きで書く)
印字や、ボールペンでの記載はNGです。これは弊社の統計ですが、手書き風の印字やボールペンで実際に書いたものと、万年筆もしくは筆で書いたものでは成果に差が生まれました。
エンタープライズ攻略は安易に生産性(例えば手間をかけない手紙をたくさん送れば一定成果を増やすことができる手段)に傾いてはいけないと考えています。数百社、もしくは数十社という少ないターゲット企業を簡単に失うことはできませんでし、失礼なアプローチの影響で、本当に必要になった場合に検討が除外されるなどあってはいけません。
4.文面はオーダーメイドで作成(推奨2000〜3000文字)
ここがかなり大変かつ苦労と手間がかかります。しかし、ここにしっかりと注力するかしないかで大きく成果が変わります。よく言われる【Why you now】をレターの中に完璧な形で盛り込むイメージです。
その中での重要なポイントとしては2つです。
- Why you nowをしっかり作成する
- 事例紹介を必ず差し込む
この2つはかなり重要で、実際に私が実際自社で使った冒頭文面を一部公開します。※ちなみに弊社は、ABMを中心とした営業代行支援をしております。
<Why you now>
<事例紹介>
これは実際にお送りした手紙のほんの一部です。上記以外だと、冒頭の挨拶、サービス紹介、〆のクロージングなども文面として盛り込んでいき、全体としては、2000-3000文字程度のボリュームで文面を作成していきます。正直ここまでするのは、一定の手間はかかりますが、これができると成果が大きく変わります。
特に以下がポイントになってきますが、この部分に時間をかけるイメージです。肌感覚ですが、慣れれば1社につき10-20分ほどで作成できるようになります。
▼顧客情報のリサーチ
- 以下の参考情報を元に、そのアカウント(人)の部署・ミッション・課題を推察する
- 中期経営計画、採用情報ページ、人事異動news、セミナーページ、プレスリリース情報など。
▼企業にFITする事例・目を引く定量数字は必ず用意する
- 事例、数字がない曖昧な文章は誰も見ません。
また、最近だと、リサーチに特化した生成AI【perplexity】が非常に使い勝手が良いです。ここで「xx部署について教えてください」「中期経営計画について教えてください。」など、自社に最適なプロンプトを入れることでリサーチすることも可能です。
送付後の後追い
1.到達後から5日後を目処にアタックする
前回の記事でもご紹介しましたが、レターは送付後からの後追いタイミングを弊社では「鮮度」と呼んでおり、転換率に大いに影響します。
※前回の記事CxOレターを成功させるために必要な3つのポイント
およそ、レターは送付から到着までに3-5日はかかるため、後追いするタイミングは5日後が最適です。そして、そこからのレターの「鮮度」の期間は、5営業日程度と認識しましょう。
というのもレターは多くの企業が受け取りますし、役職のある方であれば当然毎日受け取ります。その中で5営業日もたてば、皆さんが送付したレターは埋もれてしまいます。また、仮に多くのアカウント(人)にレターを送ると考えている場合、「鮮度」の観点から送り方も注意が必要です。
例えば、1,000通を1,000人のアカウントに送りたいと考えている場合、約2-3か月かけてでも以下のように送付します。週に50通ずつ送付をすると考えると、到達後5営業日以内でリストのカバーすることも容易に可能です。
ここまで細かくレターの「鮮度」を意識することで成果を最大化することが可能です。
1回目発送(1週目):50通送付
2回目発送(2週目):50通送付
3回目発送(3週目):50通送付
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10回目発送(20週目):50通送付
2.アタック方法は5コール、3メール
よくたくさんの会社様から「どのくらい後追いすればいい?」と相談をもらうこともあり、いろんな検証をしましたが、標準化するのであれば、5コール、3メールを推奨します。
当たり前ですが、大手企業は一度のアクションでは繋がりません。関係のある秘書の方にアタックすることもあれば、部署担当者を紹介してもらい、その方と話すということもあると思います。またメールを見ない人はいません。開封されないにしても100%誰もが見ているはずです。そのため、メールでのアタックは最低でも複数回は必要です。
まずは「最低限は5コール、3メール」を徹底してみてください。ここをしっかりやりきるだけでも成果に差がでますが、大量に送付している場合はそこをやり切ることができず、機会を逃している可能性があります。
また、理想として推奨したいと思うのは、マルチチャネルアプローチです。
皆さんも、商品を購買する受け手の立場になった時に想像いただけるかと思いますが、たくさんの商品を購買するときに1つの情報だけで購買をしたり、興味を持ったりしないと思います。おそらく以下のような身近な多数ある情報ツールからたくさんの情報を発見し、徐々に印象や関心を高めていき、興味関心は醸成されていくものだと思っています。
- Xで情報を発見する
- Instagramで情報を発見する
- 広告で情報を発見する
- 知人からの口コミから情報を発見する
- タクシー広告で情報を発見する
- 外部メディアなどから情報を発見する
- 直接営業を受けて、情報を仕入れる
とあるBtoBの営業を受けた際も、「話を聞いてみよう!」と思ったサービスは、複数チャネルからアプローチをされていたなと感じます。たくさんの経路でアプローチすることで徐々に認知していきます。そのため、できれば架電、メールだけではなく、できるのであれば「インテント広告」「Facebook」「X」「LinkedIn」など複数アタックができるのであれば尚望ましいです。
※フォームへの営業メールはほぼ意味がないと思うので、推奨しません。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。内容についていかがでしたでしょうか?CxOレターの全容を、前回よりも一歩踏み込んだ内容を共有させていただきました。
ご覧いただきました通り、成果を出すためにはとても手間がかかりますが、ハイパフォーマーのセールスの皆さんは当たり前のようにやっている内容です。手間がかかるからこそ、不安になることも多いですが、間違いないので自信をもってトライしてみてください。
また、手間がかかるからこそ、自社でやり切れない会社さんも多いかと思います。そんなときはぜひ一度こちらから弊社にご相談ください。まずは皆さんといっしょに最適な方法を考えるところからはじめてみたいと思います。
今回のような記事を公開することで、苦戦されている皆さんの一助になれば幸いです。お読みいただきまして、ありがとうございました。今後も皆様のお役に立てる記事を寄稿していきます。エンSXのサービスはこちらです。