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受注率の高い商談を生む、スコアリングを活用したナーチャリング手法

前田 健太 | RECERO2024/6/24
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本書では前回の記事「リスト枯渇に悩まないためのアウトバウンドナーチャリング」内の”STEP② ターゲット企業のスコアリング”について、実例を用いて具体的に解説して参ります。アウトバウンドナーチャリングは理解できたが、実際に実務でどのよう行えば良いのかと悩んでいる方の参考になれば幸いです。

前田 健太 RECERO株式会社所属。人材派遣会社での営業、クラウド型CTIを提供する会社でのインサイドセールス組織の立ち上げや営業、カスタマーサポートなど幅広い業務経験を経てRECERO株式会社に入社。インサイドセールス代行サービス「セルメイト」のマーケティング/インサイドセールス/プロジェクトマネジメントまでを担当。

アウトバウンドにおいて重要なこと


アウトバウンドではこちらからアプローチをしていくため、顧客は「面倒だ」「興味がない」と思っているとことからスタートする、という認識を持っておくことが重要です。そして、その状況を打破し商談へと繋げる為には、相手のメリットになる情報を“give”していきながら関係を構築していく必要があります。

アウトバウンドナーチャリングとは?


次に、「アウトバウドナーチャリング」について少しおさらいをしていきましょう。「アウトバウンドナーチャリング」とは、弊社で提唱している造語であり、アウトバウンドでの顧客開拓において、一度のアプローチで商談獲得ができたのか?できなかったのか?の”点”で勝負するのではなく、複数回アプローチをすることを前提として、”線”でアプローチをして顧客育成をしていくことを言います。

アウトバウンドにおいては、「今が検討時期」という顧客にほとんど出会えないのが実情です。そのため、”線”でのコミュニケーションを行わなければ、すぐにアプローチリストがなくなってしまい、商談獲得率や受注率を高めることが難しくなるでしょう。”点”ではなく”線”でコミュニケーションを行う、これが重要なのです。

アウトバウンドナーチャリングのメリット


次に、アウトバウンドナーチャリングのメリットを3つ解説します。

①常にアプローチ先がなくならない
アウトバウンドにおいて、ターゲットリストは有限です。特に業界特化型のサービスの場合、リスト数は限られてしまうと思います。その際に、”点”でのアプローチを行っていれば、すぐにリストが枯渇してしまいます。
アウトバウンドナーチャリングを行うことで、顧客を段階的にアップデートし、再リスト化することが可能です。その結果、アプローチリストの枯渇を防ぐことができます。


②BDR全体のパフォーマンスの向上
顧客の興味、関心の度合いに沿ってスコアリングを行い、そのスコアごとに追客シナリオを設計しアプローチを行っていきます(この部分は後ほど具体的に解説致します)。そのため、1回目のアプローチ時に「興味がない」という反応だった顧客も複数回ナーチャリングをすることで、目安として2〜3ヶ月後に商談に繋げることができます。その結果、BDR全体の商談率を向上させることができます。

③受注率の高い商談を獲得できる
スコアリングを行うことで、温度感の高い顧客に優先的にアプローチすることができます。「競合他者と比較検討中」「予算が確保できている」「導入時期が明確」等、スコアが上位の顧客に漏れなくアプローチすることによって、受注率の高い商談を生み出すことができます。

アウトバウンドにおけるリードスコアリングの重要性


アウトバウンドナーチャリングを成功させるために、顧客の情報やステータスを適切に管理することが重要となります。これにより顧客のフェーズに沿った最適なアプローチが可能になり、「温度感の高い商談の創出」「長期的に商談数の最大化」を実現することができるのです。スコアリングを行う際は、下記のように項目を設定しそれらの把握状況をもとに決定します。


主にはBANT情報をもとにスコアリングしますが、「ニーズ/課題」についてはより細かく現状をヒアリングし、スコアに反映させます。例えば弊社のような営業代行の場合だと、例として、
 
・目標商談数との乖離
・インサイドセールス部門の人数
・SDR/BDRの実施状況
 
など、ニーズ/課題に関わる部分で3つの要素をスコアリングの項目にしています。
 

【実例】BDR経由の受注率15%達成した、スコアリングを活用したナーチャリング手法

 
ここからはアウトバウンドナーチャリングの中で、どのようにスコアリングを活用したナーチャリングを行い、商談化まで繋げるのか具体的な実例を用いてご説明します。商材特性やターゲットによって、スコアリング項目や追客シナリオは異なります。今回は従業員1000名以上の企業をターゲットとしたバックオフィス系SaaSでの例を元に解説していきます。
 
最初に、アウトバウンドナーチャリングにおけるスコアリングを活用したナーチャリング手法で得られた成果をお伝えします。アウトバウンドを始める前は、新規開拓手法はリファラル(=紹介)のみで、ターゲットである大手企業の新規商談が創出できておらず、事業成長が伸び悩んでいたことが課題でした。そこで、新規リード獲得施策として、アウトバウンドを開始した結果、1年間で大手企業との商談率を安定的に1%以上を獲得、かつBDR経由の受注率15%を実現できました。


ではここから本題に入ります。アウトドナーチャリング手法において、スコアリングを活用したナーチャリング〜商談化を成功させるための手順と具体的な手法を記載します。弊社では以下の3つのステップを踏んで行っています。
 

スコアリングを活用した具体的な手法


-       STEP①商材特性を把握し、スコアリング/ヒアリング項目を決定
-       STEP②スコアに合わせた追客シナリオの作成
-       STEP③フィールドセールスのフィードバックをもとに①②のブラッシュアップ

STEP①商材特性を把握し、スコアリング/ヒアリング項目の決定
アウトバウンドナーチャリングを行うにあたって最も重要となることは、リードを管理するための設計を最初にしっかりと行うことです。設計を怠ってしまい、ひとまず闇雲にアプローチしてしまうと、リストが枯渇してしまい失敗に終わってしまうため注意が必要です。
 
今回の場合、スコアリング/ヒアリング項目は以下のように設計しました。
 
【スコア:D】
まずは、初回接触からキーパーソンの個人情報(担当名/メールアドレス)が把握できたリードをスコアDと評価します。ホワイトリスト1回目のアプローチはいかにここが増やせるかが重要になってきます。

【スコア:C】
現状の運用状況が把握でき、その状況が自社サービスで解決できそうな案件をスコアCと評価します。その際に、競合を導入済みの場合でもしっかりと把握/管理していくことが重要です。後々にリプレイスが狙えそうな場合に、アプローチリストとして活用することができるためです。


【スコア:A/B】
運用状況が明確かつ、抱えている課題が自社サービスで解決できそうだという合意が双方でできている場合、スコアをAorBと評価します。今回の場合、このスコアがAorBまで引き上がった顧客に対して商談打診を行い、フィールドセールスへトスアップしていました。スコアAとBの違いは、検討時期が明確か否かです。

STEP②スコアに合わせた追客シナリオの作成 
次に、①のスコアに合わせた追客シナリオの作成について解説をします。大まかなアプローチ内容はSTEP①で確定しましたので、これをスクリプトや実際の行動に落とし込みます。
 
【スコアDへのアプローチ】
スコアDの企業は、【キーパーソン情報の把握】ができているが、運用状況や課題が把握できていないリードです。そのため、まずは現状と課題のヒアリングを行うシナリオになります。今回の例ではバックオフィス系SaaSであり需要が潜在的な為、課題を顕在化させるトークを行いました。具体的には既存ユーザによくあった課題から3つ投げかけ、いずれかの課題でYesを取るという流れでスコアDへのアプローチを行いました。

<具体的なトーク例>
「先日はお忙しい中お電話にてありがとうございました。最近特に〇〇様のような業務をされている中で、
 『〇〇が出来ない』『■■を▼▼するのが大変』といったお話をよく伺うのですが、〇〇様は如何ですか?」
 
上記のように実際に刺さりそうな課題を具体的に提示し、課題の合意を取りに行きます。具体的に投げかけても「対応出来てる」や「課題はない」といった回答の場合は以下につなげていきます。
 
「では■■はどのように対応されているのでしょうか?」や「〇〇を××する時どのくらい時間がかかってますか?」など、より顧客の状況をクリアにする質問をすることで顧客への解像度を上げていきましょう。その中で他社と比較して非効率な部分や、お客様が気がついていない課題がみつかればそこを更に掘り下げていきます。
 
※興味がない、などヒアリングに応えてくれない場合※
「お忙しいところ失礼いたしました。現在弊社が、〇〇に関するお役立ち資料を配布しておりましてもしよろしければ資料だけでもご覧頂けませんか?」と資料送付を提案しましょう。メールアドレスなどのリード情報を入手することで、今後の情報提供やウェビナーの案内などコンテンツを用いたナーチャリングを行うことが可能になります。

これもNGな場合は優先度を下げて、日をあけてアプローチする、別の担当者に架電してみる、なにかお客様の市場や企業自体に変化あった際にご連絡するなどをお勧めします。
 

【スコアCへのアプローチ】
スコアCへのアプローチの際は自社サービスを導入することで何がどう変わるのか?を伝えることが重要となります。前回のアプローチから少し日が空いている場合は、冒頭で改めて課題を整理すると共に、ペインをより意識していただくためのトークを行いました。

課題が特定出来ている際でも効果的な機能は顧客によって異なるので、課題に関連する機能を提示し、自社サービスでそのように変わるのか、導入後の便利になった未来を想像していただくトークが必要です。
 
具体的なトーク例
「前回お話させて頂いた際、『〇〇を簡素化したい』とお伺いしておりましたが、その対応や対策は何か進まれましたか?もしまだであれば、弊社のサービスをご利用頂くことで××する時間が〇%下がったという事例もあございます。」
 
上記のように、自社サービスで課題が解決することに加え、どの程度の効果があるのか数字で示すとより具体的、効果的に導入後のイメージを持ってもらいやすくなります。時間が足りない、課題の合意が不足するなど、商談打診が次回以降の架電に持ち越される場合、次回の架電日時を明確にして合意するようにしましょう。
 
※スコアCでの滞留が多い場合※
今回の例では実施しませんでしたが、スコアCでの滞留が多い場合はウェビナー等を実施することがナーチャリングに有効です。ウェビナーにて具体的な事例を紹介し温度感を上げることで課題解決の合意がしやすくなります。
 

【スコアBへのアプローチ】
最後にスコアBへのアプローチです。スコアBについては課題が解決出来ることまで合意が出来ているので、商談を行う理由を訴求するシナリオになります。ここの訴求の設計がインサイドセールスとしての仕組みの肝になります。今回の事例の場合、バックオフィス系ということもありリプレイス提案になるシチュエーションが殆どでした。その為、課題合意したポイントの解決事例提供をフックに商談打診を多く行いました。
 
事例提供というテーマでの打診になる為、商談設定が出来た際にはスコア項目以外のヒアリングを行い、より具体的かつ顧客に沿った提案をフィールドセールスが出来るようにし受注率の向上を目指す必要があります。
 
具体的なトーク例
「先日お電話の際はありがとうございました。弊社内で確認したのですが、弊社のユーザー企業には御社と近しい業種で似たようなお悩みをお持ちの企業様も多く、◯◯様の課題解決が可能だと確信しております。もしよろしければ実際の導入効果を事例を交えてご紹介させて頂きますので、今の作業効率が実際どの程度削減出来そうか、簡単にシミュレーションなどさせていただけませんか?」
 
今回はリプレイス提案の為、上記のように具体的にどう変化するのかをまずは知ってほしいという形で商談の理由付けを行いました。可能であれば繁忙期などの時期的な要素も加えることで、より”今”商談をする理由付けになります。


STEP③フィールドセールスのフィードバックをもとに①②のブラッシュアップ
最後に大切なことは定期的にフィールドセールスからの商談のフィードバックを貰い、STEP①②のブラッシュアップを行うことです。初期に設計を行うSTEP①②は仮説ベースであるため、設計が適切かを把握するために商談から受注の状況を把握していきましょう。

今回の事例の場合、スコアリングA/Bでは商談数が少なく、スコアリングCをトスアップ案件にした時に意外に2次商談に進みやすいと分かれば、スコアリングCの段階で商談化を行っても良いです。逆に、営業リソースの問題で受注率を高めるために、スコアリングA(予算・検討時期が明確)のみに時間を割きたい場合は、スコアリングBはインサイドセールスでナーチャリング対象にしていくなど調整をしていきます。また、商談を行う中で、受注に至りやすい共通した運用状況や他社サービス利用状況があれば、ヒアリング項目に加えることも重要です。
 

最後に


今回はアウトバウンドによるスコア設定から、ナーチャリング、そして商談化について具体的に記載をしていきました。アウトバウンドナーチャリングを成功に導く為には、今回解説をしたスコアリングとシナリオ設計が重要です。この点を具体的に戦略として設計を行うことで、営業スキルに依存せず属人的にならないインサイドセールスが実施できます。皆様がこれからBDRの立ち上げを行う際や、大手企業との商談獲得施策を強化する際などにご活用いただけたらと思います。

我々セルメイトではBDR施策の戦略策定から実行までをトータルで支援しています。インサイドセールス、特にBDRのノウハウがなく自社での立ち上げが難しい場合、体制が整備されている外部のリソースを用いて立ち上げを行うこともお勧めです。ご興味があればぜひこちらよりお気軽にお問い合わせください。
 
 

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